第67話 なんでもする?
「なるほど。だからこんなに部屋が荒れているのね」
「ぃ、いきなり轟音が響いて、さすがに驚きました……」
「あはは……申し訳ない」
あれから、音を聞いて龍安と凛々夏が駆け付けてくれた。今は、荒れている部屋を綺麗に片付けてくれている。
かく言う俺は、寝ているリーファに抱き着かれて動けないでいた。現状、置物状態である。家主なのに役立たずですみません。
「いいわよ、あなたは動かなくて。むしろ、旦那様に尽くせて嬉しいわ」
「ゎ、ゎたしはお掃除とか、す、好きですから」
誰が旦那だ、誰が。
二人は一切嫌な顔をせず、テキパキと壊れたものやごみを袋に入れていく。もしこれが俺一人だったら、途方に暮れて何も出来なかっただろうな。
これは、何かお礼をしないと。幸いにも魔法少女としての活動と、モデルとしての収入によって、この数週間で俺の口座には見たこともない額の金が振り込まれている。母さんにはちゃんと自己管理しろって釘を刺されているけど、こういう金の使い方なら許してくれるだろう。
「……ありがとう。二人がいてくれて助かったよ。今度何かお礼するから」
「え? 今何でもするって?」
「言ってない言ってない」
そんなこと、一言たりとも言ってない。龍安の耳、どうなってんだ。
龍安はくねくねと体をくねらせ、朱色に染まった頬を手で包んだ。
「そ、そうね。何でもと言うなら、私的にはやっぱり子供が欲しいかしら……♡ 私も魔法少女として稼いだ額は相当なものだし、ツグミも蓄えはあるわよね。二人の貯金で子育ては十分に賄えるはずよ。それでもまだ足りなかったら、頼りたくはないけど、私の実家に頼りましょう。魔法少女関係には口を出さなくなっても、まだまだ大きな家だもの。頭を下げれば、子育ての支援や協力は惜しみなくしてくれるはずよ。ふふふふ。なら私たちの役目は、子供をたくさん作ることね。一姫二太郎というくらいだし、最初は女の子がいいわね。きっと私たちの子供だから、可愛い子が生まれるはずよ。あ、男の子でもきっと可愛くて将来的にはイケメンに育つわ。あと問題は人数ね。ツグミはどれくらい子供が欲しい? 私的には、あなたとのイチャイチャラブラブ『ピーーー』(朝昼晩)は日課にしたいから、沢山子供ができると大変だけど……私はあなたが求めるなら、避妊は一切せず全力で生みまくるわ。サッカーにする? 野球にする? それとも、ラ・グ・ビー?♡」
そんなご飯にする? お風呂にする? それとも私? みたいなノリで作りたい子供の人数を聞いてこないで。
あと凜々夏。こいつのこの感じはいつものことなんだから、そんな一々恥ずかしがらないでくれ。俺まで恥ずかしくなる。
「単純に、飯を奢るくらいはする」
「…………………………………………そう……」
そこまで露骨に落ち込むことなくない!?
「り、凜々夏は何か食べたいものとかあるか? 肉とか魚とか、なんでもいいぞ」
「ぇ、ぇぇっと……そ、そんな、わわわわ私なんかに気を使わなくても……!」
「気にしないでくれ。俺が奢りたいんだ」
「……な、なら、考えておきます……ね」
小さく、でも嬉しそうに微笑む凜々夏。こんなにも対照的なのかっていうぐらい、正反対のリアクションだ。特に龍安は、お家騒動の件があってからタガが外れてる気がする。これ、なんとかならんものか。
二人を見て苦笑いを浮かべていると、俺に抱き着いていたリーファがもぞもぞと動き、ゆっくり目を開けた。
「んゅ……?」
「あ、リーファ。大丈夫か?」
「……ッ!」
ガバッ! 急に勢いよく起き上がったリーファは、俺の顔をジッと見つめてきた。頬をつつき、髪の毛を引っ張り、おっぱいを鷲掴みにし……って、そこを鷲掴むのはやめてくれ!?
なんか嫌って感じがしておっぱいを守るように体を捻るが、まだ何かを確認するようにあちこち触ってくる。お腹とか、お尻とか、太ももとか。
「な、なんだよ?」
「……ちゃんと、女の子、ます? 男じゃない、です?」
「あ……ああ。見ての通り、女だよ」
なんとなく、さっきのこともあって嘘をついてしまった。
リーファは一通り確認して安堵したのか、深く息を吐いてしだれ掛かってきた。
「夢見てた、です。よかった、ます……」
「リーファ。もしかして……男にトラウマがあるのか……?」
嫌な考えが脳裏をよぎる。が、リーファは首を傾げた。
「覚えてない、ます。でも、とっても嫌、です。……男、嫌い、ます」
「……そっか」
リーファを抱き締めながら、そっと背中を擦って凜々夏と龍安を見る。
二人とも手を止めて、心配そうな顔でリーファを見つめていた。
そうか。記憶がなくても男が嫌いなのか。余程、向こうで大変な目に合って来たんだろうな。
…………。え、もしかして俺、リーファと一緒にいる時は基本魔法少女の姿じゃないといけないの?
……マジか。
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