表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/120

第5話 出現

 リリーカさんは軽く咳払いをすると、ふんわりと笑顔を見せ……いや、作った。ここまで作り笑いが下手な人、初めて見たぞ。



「ありがとうございます、継武さん。緊張している私のために、冗談を言ってくれたんですよね」

「いや、本当のことで……」

「きっと、愚鈍な私には想像できないくらい、辛く厳しい理由があったのでしょう」

「いや、ただ単に美少女になりたくて……」

「無理に聞き出そうとしてしまい、申し訳ありませんでした」



 どうしよう。話を聞いてくれない。

 ……まあ、いいや。俺が美少女に変身できることには変わりないし。



「あの、それで……差し支えなければ、変身後のお姿を見せてもらってもいいでしょうか……?」

「え? あぁ、はい。いいですよ」



 変身する感覚は、もう掴んでいる。

 フェアリーリングを嵌めている右手を自身の胸に当て、意識を集中する。

 リングを通して感じる、体を巡る力の奔流をコントロールし……掴む。

 次の瞬間俺の体が発光すると、見る見るうちに体が変化していき……俺の体が、女のものになった。



「じゃじゃーんっ。どう? 可愛いですか?」

「……ほ、本当に、女の子……?」

「だから言ってるじゃないですか。俺が願ったのは、可愛い可愛い美少女なんですって」



 鏡で容姿の確認。プロポーションの確認。よし、今日も可愛いぞ、俺。

 リリーカさんはまだ信じられないのか、惚けた顔で俺の方に手を伸ばすと、頬を指先でつついてきた。



「わぁ……肌、キメ細かい。唇もぷるぷるですね」

「ふふん。自慢のお肌ですよ」



 ぷに、ぷに。さわ、さわ。つん、つん。

 ……あの、触るのはいいんですけど、さすがに触りすぎ……恥ずかしいんですけど。



「もしかして下も?」



 ──ガバッ。



「……おぅ……?」



 え、何この人普通にスカート捲ってきてるの?

 別に俺は気にしてないけど、傍から見たらただのド変態でしかない。リリーカさん、意外と大胆?



「おぉ、付いてない。本当に女の子なんですね」

「満足しました?」

「………………ぁ」



 ようやく自分のしていることに気付いたのか、リリーカさんは顔を真っ赤にすると──突然魔法少女に変身し、光からナイフを作り出した。

 そしてそのまま、自分の腹に向かって突き刺し……って!?



「待て待て待て待てぇい!! 何してるんですかアンタ!?」

「止めないでくれ、継武くん。もう私は生きてはいけない。せめて死なせてくれ。いや……死なせてくだしゃぃ……」



 真城凜々夏ではなく、魔法少女・リリーカなのに顔を真っ赤にしている。

 これはこれで可愛いけど、病院で流血沙汰だけはやめてマジで。てか、この程度で死のうとしないでほしい。



「お、俺は気にしてないですから、本当に。別に見られたからって恥ずかしがるようなことでもないですし」

「恥ずかしがるのが普通だッ。き、君は今、女の子なんだぞ……!」



 そう言われても、心まで女になったわけではない。心は当然、男のままだ。

 今のだって、そこまで気にするようなことじゃない。ただの布を見られただけだし。まあ、布の下まで見られたら、恥ずかしすぎて布団に籠っちゃうけど。

 まだ恥ずかしいのか、リリーカさんは顔を伏せて縮こまってしまっている。

 魔物を倒している時のリリーカさんは凛々しいのに、こんな恥ずかしそうに……可愛すぎないか。

 可愛くしょんぼりしてしまっているリリーカさんを励ましつつ愛でる。


 その時だった。






『緊急――神奈川県東部に魔物の出現を感知』






「ッ!?」



 い、今の声……モモチ? え、魔物が出現って、今……!?

 リリーカさんはすぐ立ち上がると、窓を開けて光の翼を大きく広げた。



「すまない、継武くん。行かなくては」

「ま、待ってください。今のアラームって、もしかしてこの付近に……!?」

「ああ。距離にして50キロメートル先だろう。空間の歪みを感じる」



 魔法少女としてベテランのリリーカさんは場所まで正確に特定しているのか、窓の向こうを指さした。

 あっちの方に、例の異世界の魔物が……。



「気配の大きさからして、恐らく獣型。この付近にいる魔法少女では手が余るだろう。私が行かなくては」

「そ、それって、強いってことですか?」

「ああ、ホーンウルフと呼ばれる狼だ」



 ホーンウルフ……ニュースで見たことがある。

 平均体長3メートル。脚は6本。目が8個。角が2つの魔物で、超獰猛な肉食の魔物だ。



「話している暇はない。謝罪と償いは、後でもう一度させてもらう」



 では、とリリーカさんは窓から飛び出すと、光の翼を広げて飛んで行ってしまった。

 急いで窓に近付いたが、もう見えない。今の一瞬で、魔物の所に行ってしまったらしい。

 いつもは映像で、魔物の出現や魔法少女の戦いぶりを見ていた。

 画面越しだからか、あれは自分とは関係ない世界だからと、呑気に見ていたのだが……いざスライムに襲われてみて、わかる。あれはとんでもない化け物だということが。

 リリーカさんの強さはよく知っているけど、もし……万が一のことがあったら……。



『行かないのかい?』

「っ……モモチ」



 いつの間にか餅のぬいぐるみに憑依していたモモチが、ジャンプして俺の頭の上に飛び乗った。



『君は魔法少女だ。もう、戦えるだけの力はあるよ』

「で、でも、リリーカさんが向かったなら……」

『確かに今回の魔物は、リリーカだけでも十分対処できる。アクシデントがない限り、負けることはないだろう』



 そ、そうだ、その通りだ。

 ユーチューブでまとめられている魔法少女の中でも、リリーカさんの強さはトップクラス。日本どころか、世界中を見てもリリーカさん並みに強い魔法少女は、極僅かしかいない。

 そんな人が向かったんだ。だから大丈夫。大丈夫……。



『だけど、君の心はなんて言っている? 本当に、彼女に任せるだけでいいって言っているのかい?』



 ――――。



「痛いところを突くな、お前」

『僕は管理者だからね。君の心はお見通しさ』



 人の心を覗いてるのか? 悪趣味だな、異世界の神様ってのは。

 目を閉じ、大きく深呼吸をする。

 ……正直、女の子が勇気をもって戦いに出たってのに、言い訳ばかりしてここで見て見ぬ振りをする男ってのは……ダセェよな。



「モモチ、案内頼む」

『しょうがない。今回は新人魔法少女に、特別サービスだよ』



 さあ、魔法少女・継武。初陣だ。

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ