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クイーン・オブ・魔法少女 〜いや俺、男なんですが!?〜  作者: 赤金武蔵
第4章 異国の魔法少女

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122/126

第122話 不法入国

   ◆◆◆



「あ、ツグミ、お帰りなさい、ますっ」

『おかえりなさす』



 みんなの所に戻ると、真っ先に気付いたリーファとキルリさんが俺に駆け寄って来た。

 キキョウさんとビリュウさんは、俺には目もくれず何やら地面に幾何学模様を描いていた。



「ただいま。……あの二人は、何してんの?」

「おっきいお絵描き、です。リーファとママも混ざりたいけど、ダメって言われた、ます」



 しゅんとしてしまったリーファ。おぉ、可哀想に。

 でも……確かに、普通のお絵描きではない。規則に基づいて書いているように見える。

 俺には魔法の知識はない。この模様の意味を理解できなかった。



「これはteleportation……日本語だと瞬間移動のmagic circleデス」

「瞬間移動?」



 手元で魔力を練っているコメットが教えてくれた。

 しゅんかんいどー……えっ、瞬間移動!? そんなもの実在……してるな。ここに来るための装置も、似たようなものだったし。まさか作れるなんて思ってなかった。



「瞬間移動のmagic circleはとても複雑で難しいデス。ワタシも理論は知っているけど、作れまセン」

「でもキキョウさんは作ってますよ?」

「13歳でここまで緻密に作れるなんて、化け物デス」



 マジかよ。キキョウさん、ただのド変態ロリじゃなかったのか。

 リーファとキルリさんがスケッチブックにお絵描きしているのを見守りつつ、魔法陣が完成するのを待つ。

 その間も、コメットはずっと魔力を練り続けていた。



「ライスは何をしているんですか?」

「完成後、magic circleに流す魔力を溜めていマス。瞬間移動には膨大な魔力と、転移先のimageが重要デス」



 なるほど……? 俺には計り知れない、難しいプロセスが必要になるんだな。



「でも加担したら、上司からこっぴどく怒られてしまうと思いますよ」

「……大丈夫デス。だって……ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと理不尽に耐えて来たんデス。ワタシだって、ティナと戦いたくなかったのに……これくらい、可愛いrebellious(反抗) phase()みたいなものデス」



 鼻息荒く憤慨しているコメット。今までずっと、かなりの無茶ぶりを言われてきたんだろうなぁ……想像に難くない。

 思わず苦笑いを浮かべていると、ビリュウさんとキキョウさんがこっちにやって来た。



「お待たせ、ツグミ。準備できたわよ」

「ふぃ~。ちかれたぁ~」

「ありがとうございます、ビリュウさん。キキョウさんも」



 見ると、草原に大きな魔法陣が描かれていた。すごいな。体育館くらいの広さもある。

 ……逆に考えると、この二人を以てしても、こんなに大きく描かないと瞬間移動の魔法陣を作れないのか。



「いい、ツグミ、コメットさん。この魔法陣の中心に立つ。それからコメットさんが練った魔力を流す。そうすれば、一瞬で想像した場所に移動することができるわ」

「便利ですね……なんで普段から使わないんですか?」



 大きいけど、これがあればわざわざ魔物のいる場所まで移動する必要はないのに。

 けど、ビリュウさんが首を横に振った。



「簡単な話じゃないの。まず準備にかなり時間が掛かる上に、一回使ってしまうと魔法陣の効力が切れてしまう。私とキョウ様だから短時間で描けたけど、他の魔法少女が描くと半日も掛かっちゃうの。その上、使わなくても数時間で消えてしまうわ」



 なるほど。確かにそれはコスパが悪い。

 ……じゃあ転移装置を作った魔法少女は、どんな化け物だったんだよ。



「ティナ、早速行くデス」



 コメットに促されて魔法陣の中心に立ち、離れないよう手を繋ぐ。

 これからアメリカ、か……まさか人生初の海外が、こんな不法入国になるとはなぁ。



「ツグミ、気をつけるのよ」

「行ってらっしゃい、ます」

『いてらしゃす』

「アタシ、本場のドーナッツが食べたい」



 ありがとう、みん……おいキキョウさん。それまさかお土産を要求してるんじゃないだろうか。俺、これから喧嘩しに行くんだけど。

 と文句を言おうとした、その時。コメットが手の平に維持していた魔力を、魔法陣に落とす。

 波紋のように模様が浮き上がり、一瞬の浮遊感を覚え……次の瞬間、世界が暗転した。

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