第118話 和やか
「それで、いつ殺し合いマス?」
「そうですねぇ。早速、明日とかどうでしょう? 天気もいいでしょうし、雨に濡れたくはないので」
陽ノ國屋に戻り、お味噌汁をすすって物騒なことを話す。けど雰囲気は悪くない。むしろ朗らかな感じだ。
「海と山、どっちがいいですか?」
「Well…あ。ワタシ、草原がいいデスっ。天気のいい日、きっとポカポカしマス。暖かい場所、大好きデス」
「ほー、いいですね。ならうちの支部が演習で使ってる草原にしましょうか。あそこなら広いですし、周りに迷惑は掛けません」
きゃいきゃい、わいわい。あーでもない、こーでもない。
色々と話を進めていると、様子を見ていた女将さんがにこやかな笑みを浮かべた。
「なんです、女将さん?」
「ふふ。いえ……これから殺し合いをするちゅうのに、まるでピクニック先を決めてるような和やかさや思いまして」
え? ……確かに?
コメットと顔を見合せ……どちらともなく、笑いが込み上げてきた。ふはっ、その通りすぎる。
「お二人は、いったいどういったご関係で?」
ふむ? そんなの、言わなくてもわかるだろう。
「「友達ですっ」」
◆◆◆
今日も同じ布団に潜り込み、満腹と安心感で心地いい眠気に揺られていた。
でも眠れそうにない。意識が興奮している。いや、コメットに興奮しているってわけじゃなくて、さっき決闘についていろいろ話したから。
「ティナ、眠れまセンカ?」
「そういうライスこそ」
「えへへ。……ワタシ、ずっと戦うのが嫌デシタ」
急に語り出したコメットの方を向くと、安らかな笑顔で天井を見上げていた。
「他のみんながゲームしたり、遊んだり、オシャレしているのに、なんでワタシばかり危険な目に合って戦わないといけないんだろうって……でも、その理由がわかりマシタ」
「平和の為とかではなく?」
「NO. きっとワタシは……アナタに出会う為に、ここまで戦ってきたんデス」
それは……なんというか。
「物騒な運命ですね」
「HAHA!! いいじゃないですか、物騒デモ。こうして出会えたんデスカラ」
「……そうかもしれませんね」
コメットの言う通りかもしれない。
俺は日本人。彼女はアメリカ人。魔法少女という枷と、コメットが上司から命令をされなければこうして出会うこともなかった。友達どころか知り合うこともできない。そう考えたら、これも縁ってやつなんだろう。
「ティナを傷つけることはしたくありまセン。でも、それ以上に……すごく、楽しみデス」
「……実は私も」
「Oh, そうなのデスカ?」
「はは……はい。なんだかワクワクしちゃって」
普通なら、友達と本気で戦うなんて避けたいことだろう。ましてや俺たちが行うのは、ガチの殺し合いだ。友達とそんなことをするなんて、正気ではない。
それでも……やっぱり、この高揚感は抑えられない。まさか俺って、戦闘狂?
自分の知らない一面に顔を引きつらせていると、コメットが布団から腕を出し、天井に指先を向けた。
光る指先から何かが天井に向かって放たれる。それがぶつかった瞬間、全面に星の瞬きが広がり、部屋全体を星が覆い尽くした。天の川があり、金星や火星があり、流れ星まで見える。
「わぁ……綺麗ですね……」
「YES. ワタシ、これを見て眠るの、好きなんです。まるで宇宙に浮かんでいるような感じがして」
小さい部屋に広がる満天の星空か……素敵な力じゃないか。
「ティナ。明日は、よろしくお願いしマス」
「ええ。全力で行きますよ」
二人で大宇宙の広がる天井を見上げ、再び手を握る。
さっきまで昂っていた感情が落ち着き、睡魔に意識を持っていかれた――。
「その前に一発ヤりまセン?」
「台無しだよ」
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