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クイーン・オブ・魔法少女 〜いや俺、男なんですが!?〜  作者: 赤金武蔵
第4章 異国の魔法少女

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第114話 図星

 戻って来たコメットとは会話もそこそこに、出された夕飯を食べたり温泉に入ったりして、床に就く。

 気まずさというか……なんとなく、話し掛けづらい。人には人の意見があるから、とやかく言うことじゃないとわかっているけど……。

 目が冴えてしまい、薄暗い中コメットに目を向ける。と……丁度いいタイミングで、コメットも俺の方を見ていた。



「眠れませんか?」

「ティナの方コソ」

「あはは……いろいろ考えてしまって」

「……ワタシもデス」



 互いに顔を見合わせて、つい笑ってしまった。

 そりゃあそうだ。あんな話をして、何も考えない奴は余程の無神経だろう。



「ティナ、そっち行っていいデスカ?」

「……いいですよ。おいで」



 布団を捲って、コメットを布団に誘う。

 だがしかし、薄暗い中でもわかるくらい急激に、ギュギュギュンッと顔を真っ赤にしたコメットが、ぎこちない動きで潜り込んできた。

 完全に入って来たコメットを包み込むよう、布団を掛け直す。お互いに横になって、じっと目を見つめる。



「……不思議デス。誰かと一緒に寝るのッテ」

「昨日も一緒だったじゃないですか」

「そうですケド、違いマス。……ワタシ、人生で誰かと一緒に寝た記憶がないんデス」



 え……?

 思わぬ言葉に、つい目を見開く。



「小さい頃とか、誰かと寝たりとか……?」

「……記憶にはありまセン」



 コメットの言葉が弱弱しくなる。

 いったいどんな人生を送って来たのか、俺にはわからない。けど……辛かったろうな。

 昨日と同じく、コメットの体に手を回して抱き締める。リーファの件があってから、こういう弱みを見せる強い女の子に弱いなぁ、俺。



「ティナ……暖かいデス」

「そりゃあ、生きてますから」

「違いマス。……心が、ポカポカするデス」



 スル……スル……。浴衣から艶やかな脚を伸ばし、俺の脚に絡みついてくる。



「ティナ、アナタは凄い人デス」

「私なんて凄くないですよ」

「謙遜しないでくだサイ。誰かの為に一生懸命になれる人が、凄くないはずないデス」



 そこまでベタ褒めされると……照れるな。それに脚の絡み方がいやらしいし、浴衣の隙間から指が伸びてきて……んえっ!?



「ちょちょちょっ、ライス!?」

「ティナ……ティナ……」



 ちょっ、ホント待っ……力強ぇ! こいつ、パワー系魔法少女の俺とタメ張るレベルかよ……!!



「ティナ。優しくて強くて、素敵デス。とってもfabulousデス」

「だからって女同士で……!」

「NO. 今の時代、同性でも問題ありまセン」



 その通りすぎてぐうの音も出ねぇ……!



「何故デスカ? ティナ、いっぱい女の子とイチャイチャしてるんじゃないんデスカ?」

「どこ情報ですかそれ」

「上官が調べマシタ。リリーカ、ビリュウ、ミケにゃん、ゆ〜ゆ〜、異世界の母娘。みんな、ティナとイチャイチャしてマス。ワタシもしたいデス」



 だからってこんな襲うような奴はいなっ……いやビリュウさんはしてるか。って、じゃなくて!!

 大事な部分をまさぐられる前に、なんとか食い止める。くそっ、どんなパワーして……!

 薄暗い中、不意にコメットの表情が見えた。どこか急いでるような……。



「ライス、どうかしたんですか?」



 コメットが目を僅かに見開く。その一瞬を逃さず、コメットの食指から逃げマウントを取る。この位置なら、パワーで負けることはない。



「あんっ♡ ティナ、大胆デス……♡」

「そうじゃありません。……あなた、なんか焦ってませんか?」



 俺の言葉に、今度は完全に動きを止めた。図星みたいだ。



「何をそんなに焦ってるんですか? 私と体の関係を持つことは、何か意味があるんですか?」

「そっ……そんなこと、ない……デス」



 目がバタフライ並に泳いでるぞ。



「あなたが所属している組織と、何か関係があるんですか?」

「ぅ……ぁ……その……」



 言いたいけど言えない、というのがありありと伝わってくる。

 組織に所属している以上、組織のルールや命令は絶対だ。魔法少女協会日本支部だって、緩いけどいくつかルールはある。

 多分この子も、上から命令を受けているに違いない。



「ライス、私の目を見て」



 コメットの頬に手を添えて、俺の方を向かせる。

 瞳が揺れ、奥に不安が見える。もしかして……。



「私の正体を探れと命令されてます?」

「!!」



 ──ゴオッ!!!!



「ぐっ……!?」



 コメットから迸るオーラと衝撃波ッ、強すぎる……!

 緊急的にコメットから離れると、窓ガラスを突き破って中庭に飛び出し、そのまま上空へ飛んで行った。



「コメット!!」



 俺も中庭に出るが、もう姿はない。いや、彗星の如く飛ぶコメットを、見つめるしかできなかった。



「おやおや。随分とお盛んどすねぇ」

「っ、女将さん……」



 いつの間にか部屋にいた女将さんが、微笑ましそうに俺を見つめる。



「行ってあげなさい。こちらのことは気にしないで」

「……すみません、後で弁償します!」



 浴衣から魔法少女の衣装へフォルムチェンジし、コメットを追う。

 くそっ、速い……! 仕方ない、こっちも本気だ……!!

 脚に力を溜め、空中に魔法陣を展開。

 魔法陣を足場にし──超パワーで、踏み抜く。

 まとっているオーラを鋭利に尖らせ、空気抵抗を極限まで抑えると……一瞬で、コメットに追いついた。



「ライス、待て!!」

「ティナ……!?」



 まさか追いつかれると思っていなかったのか、コメットが振り向いて目を見開く。

 が、それでバランスを崩したのか、コメットの体がきりもみして落下していった。



「くっ……!」



 空間を蹴り、軌道を変える。

 今にも激突しそうなコメットへ手を伸ばし……掴んだ。

 彼女の体を抱き寄せ、腕の中に包み込む。

 それと同時に、背中に伝わる衝撃と爆音。何かを薙ぎ倒す感覚を覚え、ようやく勢いが止まった。あぁ……死ぬかと思った。



「いったた……ライス、大丈夫ですか?」

「YES…ッ! は、離してくだサイ……!」



 腕の中にいたコメットが、俺を突き放して距離を取る。

 その綺麗な瞳には……星明かりに照らされた、涙が浮かんでいた。

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