第109話 ハニートラップ
「まったく……変なことしないでください」
「HAHAHA…sorry, ティナ」
あれから変なところをまさぐられる前に、なんとか引き剥がして尊厳を守れた。主に脳天チョップという荒業で。
少しコメットと距離を空け、温泉に浸かる。まさかここに来て身の危険を感じるとは思わなかった。
ビリュウさんといい、ミケにゃんといい、ゆ〜ゆ〜さんといい、コメットといい……俺の周りには変な女しかいないのか。唯一の良心であるリリーカさんも、最近は挙動がおかしいし。
「やれやれ。私のどこがそんなにいいんだか」
「……顔面とsexy bodyデスカネ」
「否定はしないけど」
確かにモモチに願ったことだよ? でも改めて人に言わると、なんかやだ。
「HAHAHA!! 冗談デス、冗談!」
嘘だ。あの顔、マジだった。
コメットがぐぐーっと伸びをして空を見上げると、ゆっくり語り始めた。
「ワタシが最初にティナを見つけた時、びっくりしまシタ。こんなにcuteでsexyな女の子が、拳ひとつで戦う……すっごくcoolデシタ」
「それ、ネットで見たんですか?」
「YES. 友達に教えてもらいマシタ。Japanに、すごいmagic girlがいるって」
それは……嬉しいやら気恥しいやら。まさか海外の魔法少女オタクにまで認知されてるとは思わなかった。
「magic girlの活動以外にもmodelの仕事もしていて、迫害された異世界人を身を呈して守ったり、すごく尊敬シマス」
「そんなに褒めても、何も出ませんよ」
モデルなんてキキョウさんにやらされてるだけだ。リーファたちのことだって、記憶の夢を見てなかったらあんなに必死になって……。
「……なんで、異世界人のことを知ってるんですか?」
リーファとキルリさんのことは、魔法少女協会日本支部の特級秘匿事項だ。MTuberが流していた配信もすべて削除してるし、アーカイブ視聴もできなくしている。2人のことは人型の魔物として、世間には討伐済みと公表している。
それをコメットは、明確に『守った』と言った。
つまり、リーファとキルリさんが生きていると知っている。
「Ah, well...い、言ったじゃないデスカ。ワタシ、ティナの大ファンダッテ。あの時の配信も見ていマシタ。最後、よく見ると助けてるように見えて……」
気付くなって言う方が無理があるくらい目が泳いでるぞ。
……正直な子なんだな。とてもじゃないが、悪い奴には見えない。
何の為に俺に近付いたのか、そろそろ仕掛けてみるか。
「ライスって、本当に私のファンなんですね。ここまで私のことを知ろうとしてくれる人、初めて見ました」
「もっ、もちろんデス! ファンとして、ティナのこと全部知りたいデス!」
「だから私のおっぱいを揉んできたんですか?」
「オパッ……!? ああああああれは暴走と言いマスカっ、興奮しちゃったと言いマスカ……!」
あらま。顔を真っ赤にしちゃって、うぶい反応をするんだな。
空けていた距離を少しずつ縮め、肩と肩が触れるくらい近づく。
ギュギュギュンッ……!! 顔どころか、耳や首、デコルテまで真っ赤にして俯いた。可愛すぎん?
「でも私、ライスのこと何も知りません。……なんだか、寂しいです」
「なんでも聞いてくだサイ! ワタシ、ティナからの質問はなんでも答えマス!!」
ちょっろ。
お顔真っ赤。お目目ぐるぐる。これ、本当になんでも答えてくれるんじゃ?
「スリーサイズは?」
「上から78、55、82デス!」
「好きな食べ物は?」
「ドーナッツデス! さっきお団子も好きになりマシタ!」
「初めての経験は?」
「アリマセン! I'm a virgin!!」
マジでなんでも答えてくれるじゃん。
「年齢は?」
「16歳デス!」
「得意魔法は?」
「たくさんデス!」
「上司は怖い?」
「おっかないデス……任務失敗すると、ご飯抜きデス」
任務の失敗でご飯抜きって、随分甘やかされてると思うのは俺だけ? てか、やっぱり組織に所属してたのか。
どれ、もう少し吹っ掛けてみるか。
コメットの腕に抱きつき、胸で腕を挟む。当然、童貞のようにキョドキョドのキョドちゃんになったコメットは、頭から湯気を上げた。
「コメットって……アメリカの魔法少女協会に所属してるんですか?」
「そっ……そっ、それ……そ……ぁ……」
ガクッ。あ、気絶した。
「ライス? おーい?」
……ダメだ、完全に気を失ってる。くそ、まさかこんなに挙動不審になるなんて思わなかった。
仕方ない、部屋に運ぼう。いつまでもここにいると、風邪引いちまう。
ごめん、コメット。なるべく見ないようにするけど……見ちゃったら、不可抗力ってことで許してね。
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