第103話 Best friend
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「第1回! コメットと親友になろう大作戦会議!!」
わー、と楽しそうに拍手をするリーファとキルリさん。リリーカさんとビリュウさんは、腕を組んで神妙な顔をしていた。
本当は部屋に帰ってから話そうと思ったんだけど、リーファとキルリさんが離れないので仕方なくここでやっている。
「この会議はその名前の通り、どうしたらコメットと親友になれるか話し合います。意見ある方は挙手!」
しーーーーーーーーーーーーん……。
「なんで誰も手を挙げないんですか」
「「無茶振りが過ぎる」」
そっすね。俺もそう思います。
リリーカさんがそっとため息をつき、自嘲気味に笑う。
「考えてもみろ。私の素の姿は圧倒的根暗コミュ障ひ弱なんだぞ。親友どころか友達さえ作れるか怪しいんだ」
そんなこと堂々と言うなよ、悲しくなるから。
「私も似たようなものよ。というか、魔法少女になってから一般人とは極力距離を置いているの。正体を知られたくないし」
と、ビリュウさんが肩を竦めた。
そう言えばこの人も、自分から誰かと関わりに行っているイメージがないな。
「因みに、リーファとキルリさんは……」
「しんゆー……? って何、ます?」
『??』
「ごめん。聞かなかったことにして」
2人は想像を絶するほど長い間、貴族たちの手で幽閉されていたんだ。これを聞くのも酷だろう。
リーファとキルリさんを抱き締めて頭を撫でる。なんか罪悪感がすごい。
「だが、それを言うなら1番わかっているのはツグミだろう」
「え、俺ですか?」
「四ツ谷優里くん。クラスでいつも一緒にいるじゃないか。彼とは親友なのだろう?」
あ、確かにリリーカさんの言う通りだ。俺、親友いたな。
けどアイツとは長く一緒にいるから、どうやって親友になったかと聞かれると……わからない。
やっぱり、長い時間かけてじっくり関係を築くしかないのかねぇ。
背もたれに体を預けて腕を組むと、ビリュウさんが俺の頭に手を置いた。
「あまり悩まなくてもいいんじゃないかしら。こういうのはじっくり、のんびりやるものよ」
「……やっぱそう思う?」
「根拠はないわ」
ねーのかよ。
あっという間に休日になり、予め決めていた待ち合わせ場所である東京駅前にやってきた。
当然いつもの魔法少女の服装ではなく、能力で私服っぽく変えている。
下はショートパンツ。上はタイト気味なタンクトップで、その上から丈の短いオーバーサイズのジャケットを羽織り、サングラスを掛けて変装した。
いつものヒラヒラの格好とは似ても似つかないから、バレないだろう。多分。
でも思った通り、今のところ誰にも話しかけられていない。……チラチラ見られてる気もするけど。
約束の時間まで、あと20分か。ちょっと早く着きすぎたかな……あ?
「あれ……コメットさん?」
遠くの方でキョロキョロしている、ライトブルーの髪色の美少女。間違いない、コメットだ。
前のような軍服ではない。上は白のノースリーブで、へそが出るくらい短い。下はオーバーサイズのズボン。頭にはキャップを被っている。
じっと見つめていると、俺の視線に気付いたのか満面の笑みでこっちに駆け寄ってきた。
「ふひぃ、ようやく見つけマシタ……! お待たせしマシタ、ツグミっ」
「い、いえ、待ってないです……って、その名前で呼ばないでください……!」
どこで誰が聞いてるかわからないんだ。ここにツグミがいるってバレたら、面倒なことになる。
「A…sorry. じゃあなんて呼べばいいデスカ?」
「あだ名っぽいのがいいですね。イングリッシュネームでしたっけ?」
「Oh,English name!! なら、ティナとかどうでショウ!」
ティナ……ティナか、いいな。なんか可愛い。どういう思考でティナって付けたのかはわからないけど。
「ティナか、可愛いね。ありがとうございます」
「Yeah!! では、ティナもワタシのEnglish nameを考えてください!」
「え? 私でいいんですか?」
「Of course!」
そんな当然言われてもな。イングリッシュネームとかどう考えたらいいのやら。
「なんとなくでいいデスヨ。直感デス!」
「直感か……」
コメット……メット……コットン……おコメ……お米……あ。
「ライスとかどう?」
「Rice?」
「うん。コメットのコメから、お米を連想したんだけど……」
うーん、さすがに食品をあだ名にするのは失礼すぎるか? もっと別のものを……。
と考えていると……コメットは目を爛々と輝かせ、俺の手を握ってきた。
「Amazing!! That English name is so cute!! ワタシ、気に入りマシタ!!」
「そ、そう……? ライスがいいなら、そう呼ばせてもらおうかな」
「YES!! お互いがお互いの呼び名を決める……もうワタシたち、Best friendデスネ!」
え、そうなの? アメリカ人の距離感えげつないくらい近くない?
俺としては有難い話だけど……いかにも俺に都合が良すぎる気がする。裏があるとしか思えない。
今は、流れに身を任せるのが得策か──。
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