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第7話 数日間微妙な空気になった後の話

これからお話は動き出します


どうかおたのしみに

恐怖のアトラクションを乗り越えて数日。


バカンッ!


「おー、アンタにしてはちょっと良くなったんじゃない?」


ジロリ、と俺は小紅を睨みつける。


「むっ、なによ。別にいいじゃない。」


生きてるんだから。


そうのたまう小紅。


バカンッ!!


薪を叩き割る俺。


「んもーーーー、いいじゃん。そろそろ許してくれてもさーーーーーー」


何を言うかこの鬼は。


うっかり死ぬとこだ。


正直なところ崖の下に投げ込まれるとは思ってなかった。


本当に1ミリも思ってなかった!!


いやもしかしたらとは思ったけど!!


バカンッ!!!!!!!!


「何そんなに怒ってるのさー。私気にしてないよ?私の腕の中でマコトが漏らしt」


「わーわーわーわーわーわー!!!!!」


それを思い出させないでくれ!!!!


せっかく薪割りに集中してたのに!!!!


「ふふーん、やっと反応してくれた」


ニヤニヤと鋭い犬歯をむき出しにして笑う小紅。


まんまと嵌められたらしいことに気づいて押し黙る。


「…お前、マジで死ぬかと思ったんだぞ」


ボソリと呟く。


地面にレジャーシートを敷いて寝転がる小紅は、それを聞いてふっと笑う。


「それはないよ」


なぜそう言えるのか。


薪を置いて、斧を軽く振り上げる。


「だって私がそうさせないから」


ガツンッ!


…外した。


斧から手を離した俺は、腰に手をやる。


「それは、まぁ、うん、」


説得力がない…。


今まで起きてきた死にそうな目は全て小紅がめちゃくちゃしたからであって、それが無ければ俺はここまで精神をすり減らしてはいなかったろう。


「だって大事な下僕だからね」


ほらやっぱり。


やっぱりコイツは根本的にどこかがズレている。


「あのさぁ」


「ごめんね」


口を紡ぐ。


いまなんと?


ごめんね??


幻聴か???


目を白黒させていると、小紅はにへらと笑った。


「私、人間の事知らなくて」


そう、小紅は人間をしらない。


自分より強い、吾郎爺という父親しか知らないからだ。


「みんなね、私が来ると逃げちゃうの」


想像に容易い。人智を超えた力に、目に見える大きな角。


こんな田舎なら尚更だったろう。


モゾモゾと、小紅はシートの上に座り直す。


「初めて対等に接してくれる人間なんか初めてでさ。やりすぎたかなー?なんて」


だから、ごめんね。


そう言って軽く頭を下げる。


赤みかかった黒髪が揺れる。


彼女なりに、反省したということだろうか。


「だからまた私と遊んでくれない?」


1人はやっぱりさみしいからさ。


軽く言っているようなその言葉が、果てしなく重い。





「その代わりと言ったらなんだけど、私がアンタのこと守ってあげる!私強いからさ!だから」





「あーーーもういいよわかったわかった!」


聞いていられなくなって遮る。


その先は言葉にしないで欲しい。


「わかったからさ、薪割り、代わってくれよ」


そう言うと小紅は


「わかった!」


そう言ってニコッと笑った。


「やっぱり私が手本見せないとダメなんだから!手のかかる下僕ね!!」


前言撤回っていまからでも間に合うかな?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

最初の記憶は血の味がした


獣を割いて、喰らう


吾郎爺が何度も止めた


何度も抜け出して狩った


雉、鹿、猪、熊、化け物


あまり思い出したくはない。


でもその記憶は私の奥底で眠ってる


吾郎爺はずっとそばにいた


なぜ私がそうしていたのかよくわからない


心の奥ではいつも泣いていた


吾郎爺がいても


私は常に孤独だった


私は


家族が欲しかった


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「取ってこぉいっ!!!!!!!!」


滑空する雉向けて射出される。


あーはいはい、って感じで雉をキャッチ。


暴れる鳥を押さえ込んで、先回りしていた小紅が俺をキャッチ。


「……そろそろやめねぇ?この方法」


「やだよ。あんた下僕の癖に生意気」


最近の狩りはデカイ動物は小紅が、鳥なんかの小動物は俺が投げ飛ばされて捕獲するのがパターン化している。


俺が来る前までは投石で仕留めていたらしい。


小紅はこの方法を何がそんなに気に入ったのか、わっふわっふしている。


可愛いのだが、それ以上に呆れが勝る。


この家に来て更に数週間が経った。


季節は夏真っ盛りといったところ。


なんだかんだ俺はまだ生きている。


『だってわたしがそうさせないから』


その言葉を律儀に守ってる…と思っても良いのだろうか。


バリバリと嬉々として羽をむしりまくる小紅を見て複雑な感情になる。


あ、頭もいだ。


「たべる?」


食わねぇよ。


「もったいなーい」


バリバリと咀嚼。いや食うなよ。生だぞ。頭だぞ。


そういうところじゃないか?なんてことは言わない。言ったところでイタズラに寿命を縮めるだけだと既に理解しているからだ。


「血抜きはしっかりしないとくさくなっちゃうからね」


やっぱり変だよなぁ…それもこれも、ここで他人を知らずに生きてきた弊害…か。


でもなぁ、やっぱりなぁ…。


「…何アンタ。なんか考えてる?」


顔に出ていたらしい。


そりゃ確かに考えてはいるが…。


吾郎爺がなんて言うか…。


「教えなさい下僕!!!!」


襟首を片手で掴みゆっさゆっさされるが、まだ伝えるには早いと判断。


「いーいーなーさーいーよー!」


ガックンガックンと揺れが大きくなって…待って折れる。折れる。


やめてくださいしんでしまいますっ

━━━━━━━続く━━━━━━━━

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