男A①
人を殺してしまった。
女を殺した。
女を犯してから、ナイフで刺して殺した。
女を犯しながら、ナイフで刺して殺した。
いっぱい血が出た。いろんなところから血が出た。
女は家にひとりでいた。
女は俺のことを覚えていなかった。
森田は、俺 の こ と を 覚 え て い な か っ た !!
俺は、お前のことを一度でも忘れたことはなかった。
森田は、中学生の時に俺をいじめていた糞女だ。
数十年ぶりに再会した森田は、歳の割に綺麗でスタイルも良くて……
俺をいじめていた時も、あいつはクラスの中でも垢抜けた美少女だった。
俺をいじめながら、綺麗な顔を歪めて笑う森田の顔を思い出して――俺は、玄関で森田の細い身体を馬乗りに押し倒した。
あの頃は、俺はチビで非力で森田と取り巻きのブスなクソ女共に押さえこまれて、ズボンを脱がされたり、蹴られたり、殴られたりしても、抵抗できなかったが…
今の俺は、あの頃の俺とは違う。
森田が声を上げそうになったので、俺は森田の綺麗な顔に拳を振り下ろした。
森田は低い悲鳴を上げながら、俺を怯えたような瞳で見つめていた。
森田の片方の頬が真赤に晴れ上がり口の端から血を流していた。
犯すことは初めから考えていたから、顔は傷つけないようにしようと思っていたが、森田の怯えきった顔が俺にはひどく心地よくて、もう一発だけ森田の顔に拳を振り下ろした。
「や、やめてぇ…っ。顔は、やめてぇ…!」
森田は、自分の美しい顔が傷つくことを恐れて俺に懇願した。
俺もせっかく犯すなら、見場の良い方が良いから、それ以上暴力を振るうのはやめて、森田が着ていたブラウスのボタンを外すのも面倒なので無理矢理、両手で引き裂いた。
破いた衣服で、森田の両手を縛り上げて、森田のスカートを捲りあげて、森田の履いていた下品なピンク色のレースのパンティを剥ぎ取って……
俺は、森田の身体を何度も犯した。
森田は、俺に犯されながらずっとすすり泣いていた。
大声を出したら殺すとナイフで脅していたから、森田は大きな声を出さずに泣いていた。
「うぅ…っ。やめてぇ…ゆるしてぇ…!」
森田は、ずっと泣いていた。
何度も俺に「やめて、許して」と懇願した。
「お前は、俺をいじめていた時、俺が今のお前みたいに泣いて許しを乞うても、やめてくれなかっただろう!?」
俺は、森田を犯しながら大声で怒鳴った。
「いっ、いじめ…?知らない…!わたし、あなたをいじめてない…!わたし、あ ん た な ん て 知 ら な い…!!」
森田は、俺に犯されながら叫ぶように言った。
森田は、俺のことを覚えていなかった!!!!
俺は、頭にきて森田を犯しながら、森田の引き締まったお腹にナイフを突き刺した。
ナイフで刺された森田は、すごい声を上げそうになったから、俺は森田の口にパンティーと破いた衣類の端切れを押し込んだ。
それから、森田を犯しながら俺は、何度も何度も何度も、森田の身体にナイフを突き刺した。
何度も何度も何度も何度も何度も突き刺したから、森田の細い身体からびっくりするくらい真っ赤な血がいっぱい出た。
まさしく玄関が血の海になった。
森田の見開かれた黒いふたつの瞳は、ずっと俺を見ていた。
森田は俺を見つめたまま、動かなくなった。
たぶん、死んだんだと思う。
いっぱい血が出たから。
死んでも森田は、俺の方をずっと見つめていた…。
俺は、なんだか気味が悪くて森田の死んだ黒い瞳をナイフで刺して潰した。
終わった…。
これで、俺の復讐は終わった…。
今日まで、ずっと苦しんできた。
森田にいじめられた時の記憶が何度もフラッシュバックして、俺を苦しめてきた…。
あぁ…!
なんて、解放的でさわやかな気分だろう…!!
これで、もう俺はこの糞女に怯えて苦しまずに生きられるんだ!!
俺は、土足のまま浴室に向かった。
森田の血にまみれた身体を洗うためだ。
浴室へ向かう途中、キッチンでふと足を止めた。
森田は、キッチンのテーブルの上で料理をしていたようだ。
時間的に夕飯の準備だろうか。
テーブルの上には、銀色のバットの中に俵型のハンバーグ(焼く前)が二つ入っていた。
付け合わせに使うのか皮を剥いたニンジンとジャガイモがまな板の上にある。
流しには、ハンバーグを成型するのに使ったと思われるボウルとヘラが入っている。
二人分のハンバーグ……
森田は、結婚していたのか……?
俺は、お前のせいで女が怖くなって、女と面と向かってまともに会話もできなくなってしまったのに…!!
俺は、また怒りがこみ上げてきて、バッドの中にある綺麗な俵型のハンバーグを手に取ると、玄関の血の海の中に横たわっている森田のとことへ戻った。
そして、生のふたつのハンバーグをさっきまで俺が犯していた森田の穴に詰め込んでやった。
ジャガイモとニンジンも持って来て、目玉が潰れた穴にジャガイモを入れて、鼻の穴にニンジンを押し込んでやった。
あんなに綺麗だった森田の顔は、雪だるまみたいになって、俺はちょっと笑ってしまった。
糞女の挽肉詰め雪だるまの完成だ。
俺は、浴室のシャワーで血を洗い流すと、濡れた衣服のままで裏口から飛び出した。
どうせ外は雨だ。
濡れたままで構わない。
外は、バケツをひっくり返したようなどしゃ降りだった。
俺は、雨の中をひたすら走った。
警察に捕まるのは、まっぴらごめんだ。
俺は、やっと自由になったのだ!
俺は、やっとあの糞女の呪縛から解放されたんだ!
ムショになんか入ってたまるか!
これまでの俺の人生は、あの糞女のせいで台無しにされたんだ……
これから、俺の素晴らしい幸せな新しい人生が始まるんだ!!
俺は、どしゃ降りの雨の中をひたすら走った。
雨の中を走り続けていると、俺の前にずぶ濡れのセーラー服姿のひとりの女の子が小走りで神社の方へ走って行くのが見えた。
俺は、なんとなく女の子の後を追った。
女の子がこんな雨の中を傘もささずにいるのが不思議だったし、あの糞女を始末したことで、俺の長年の女へのトラウマが払拭されたかどうかあの女の子に会って確かめてみようと思ったからだ。