第61話 ガイドの案内、不穏な建物
俺たちをワナにはめた主であり、死神の部下であるやつを案内役とした俺たちは、森を突破し、コーロントの道を進んでいた。
案内役であるガイドの案内でたどり着いたのはいかにも怪しげな雰囲気を放つ建物。
一本道を塞ぐように建っていた。
「おい。俺はできるだけ安全な道を通るように言ったはずだが? これが安全だって言いたいのか?」
俺の言葉に先頭を歩くツタまみれのガイドは下を向いた。
かすかに笑い声が聞こえてくる。
「ははは! はーはっはっはっは! バカが! この僕ちんが素直に安全な道を教えると?」
「なに?」
「どれだけ脅されようとも僕ちんは僕ちん。ちみたちには兄貴の実験台になってもらう」
「実験台?」
「そうさ。もうここに来た時点で負けは決まったようなものだ。残念だったな!」
「ほーう?」
俺は指の関節を鳴らし一歩一歩踏み締めるようにガイドに近づいた。
すると、ガイドはペタンと座り込み目に涙を浮かべ出した。
「ごめんなさい! 対策してほしくて言っただけなんです。冗談ですって! ここを通るのが一番安全なはずですから! なにがあるかなんとなくわかりますし!」
「そんな言葉信じると思うか?」
「本当なんです信じてください。黙って放り出すのは本当にやめてください!」
見た目は子どもなだけあり、仲間たちからの視線が痛い。
本当なのだとしたらガラライの時といい、冗談はもう少しわかりやすいものを言ってほしい。
俺は仕方なく変態ガイドを拾い上げ建物に入ることにした。
ガイドを信じているのではない。ラーブのスキルを信じているのだ。
「……?」
全員が入り、扉を閉めた時、どこからか聞き慣れない音が聞こえた気がした。
俺は振り返りノブを動かすがびくともしない。
「扉が開かない? おい、どういうことだ」
「えーと……ふ、ふっふっふ」
また変な笑い方をするガイド。
本当にどこかへ捨ててしまおうか。
「ここは入るとギミックを突破するまで出られないんすよ」
正直にそれだけ言うと、今回のガイドは脅しのようなことは言ってこなかった。
本当になにがしたいのかわからん。
だが。
「戻っても仕方ないが扉くらい壊せばいいんじゃないか?」
「それはやめておいた方がいいですわ。余計に面倒なトラップが作動するかもしれませんし」
「そうなのか?」
「え、ええ。まあ、多分?」
自信なさげに、そして、少し俺に聞かれたのが意外な様子で動揺しながらガイドは答えた。
信じてやれば素直なのかもしれない。
まあ、魔王城の管理者たる大魔王ヨーリンの言うことだし、ここは扉を壊さず先に進むか。
「それで、道は」
「見ての通り廊下が一本すよ」
他の道もなさそうだし、再びガイドを前に出して俺たちは建物の中を歩き出した。
「あ、そういえば、この先は僕ちんにとっていいものがあったなー。確か」
「ほんと?」
「あ、おい! ベヒちゃん!」
嬉しそうな声を漏らして走り出したベヒ。
「いや、そもそもベヒちゃんってキャラだったか?」
「え?」
俺とベヒの反応に対しすっとんきょうな声を出すガイド。
ラーブの力があっても面倒を起こすガイドをにらみつけ、俺はどうしたものかと考えた。
「グアアアア!」
「ひっ」
ベヒの走っていった先から、なにかの声が聞こえると同時、ベヒの悲鳴が聞こえてきた。
どたんと響く音。尻餅をついたらしい。
「くそっ!」
俺は急いで走り出し、勢いよくなにかを殴り飛ばした。
なんとも不快な感触。吹っ飛んだものはなんだったんだ。
「人型のモンスターのようでしたけど、なんでしたか? トドメを刺せていないようなので、ワタクシも把握できていないのですが」
「あれでトドメを刺せてないのか? しっかり全力で叩いたんだが」
そこまで大きくなかったし、そこまで硬くもなかった。
魔王軍にいた四天王のような敵でも倒せていておかしくないのだが。
「おそらくアンデッドだろう。貴様の力でどうにもならないとなると、生きていないか死なないかどちらかではないか?」
「ふむ」
確かにゴーレムにしろ邪神にしろ生物なのかよくわからない相手だった。
今回はアンデッド。となると、また面倒なことになってくる。
それにこの腐臭一体だけじゃない。
先ほどのアンデッドを殴ったのが引き金になったのか、どんどんと足音が近づいてくる。
「一体ならなんとかなったが、また大量の相手か。手なんかよりよっぽど面倒臭いんじゃないか?」
俺の予想通り、建物の床がもこもこと膨らむと、突き破るようにしてアンデッドの群れが這い出してきた。
「ああ。あああ、あああ!」
混乱したように目を回しながらベヒが声を漏らす。
そうだった。それに、ここにはベヒがいるんだ。
俺一人でどうこうという話でもない。
全く、どうしてこいつらは勝手に飛び出すんだ。
「子どもだからじゃないか?」
「中身は子供でもないだろ。と言うか、もうそんなこと言ってる場合じゃなさそうだな」
近くにいるのがベヒなら、そして、手ほどゆらゆらと宙を浮いているだけでもないなら、吹き飛ばして距離を取ることもできない。
殴り飛ばすことはできるが、次々と増えているのを見ると、どんどんと意味がなくなっていきそうだ。
そもそもあまり遠くへ飛ばしすぎるとタマミたちに被害が出るかもしれない。
ん? いや。
「タマミのスキルにこいつらをなんとかできるのはなかったか?」
「あるだろうが、量が量だ。焼け石に水だろう」
「くそっ。穴の時より厄介な状況かもな」
俺は額の汗を拭いつつも、不足のない相手に口角を上げた。
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