第21話 八芒星の一体
ベルトレット、こいつを守ってやる義理はないが、そんなことより魔王の部下である八芒星の一体を倒す方が先だ。
目の前にいるのは青い肌にツノの生えたやつ。
実際に見てみても家族を殺したやつとは別のやつだった。
「ここらにいたやつはどいつもこいつも遊びごたえがなかったんだ。もう疲れちゃってるみたいでさ」
薄ら笑いを浮かべながら八芒星の一体は俺に話しかけてきた。
「……」
さて、どうしたものか。おそらく死神より弱い。殴れば一撃で倒せるだろうが、もう一体の居場所を聞き出してからにするか。
「セブディ! ラウルに失礼! 敬語を使え!」
急にベヒが大声を出した。
俺は思わず目を丸くした。
どうやらセブディというらしい目の前のやつも、俺と同じようにベヒの方を見ている。
「お前誰だ? 俺様が敬意を示すのは魔王様だけだ。お前らなんかに丁寧な態度を取る必要はない。それともガキ。お前から始末されたいか?」
脅されたことが怖かったのか、ベヒはラーブの後ろに隠れてしまった。
「おい。俺の仲間に手を出すな」
「そんなお願い聞いてやると思ったか?」
汚い笑いを浮かべるとセブディはベヒの方を向いた。
「くっ、ははははは! 大切なものはもっと見えないように隠しておくもんだよ。もしくはお前の後ろにいるやつみたいに近くに置いとくんだな!」
俺に向けて忠告しながらセブディは慌ただしく足を動かし始めた。
「……」
「全然近づけない? なんだ? 一歩も動いてない? 肩に何か」
ちょうどその時、セブディと目が合った。
セブディはそこでやっと気づいたようだ。俺が肩を掴んでいたから一歩もその場から動けなかったことに。
「おま」
驚き、拳を振り上げたセブディ。
俺はただセブディの左頬に拳をぶつけた。
セブディはガレキを吹き飛ばしながら盛大に吹っ飛んだ。
だが、丈夫らしい、手を抜いたとはいえほとんど形が変わっていない。
「や、待て。やめろ。今のなんだ。どんなスキルを使えばなんの詠唱もなしに俺様を吹き飛ばせる」
「気になるか?」
「話してくれるのか」
真剣な表情でなんとか笑いを隠しているセブディ。相当嬉しいらしい。
「ああ。教えてやるよ。俺は親切だからな。俺はお前を殴っただけだ」
「へへっ。バカめ。相手に自分の手の内を教えるバカが……は? 殴っただけ?」
俺は丁寧に教えてやったはずだが、セブディはわざわざ聞き返してきた。
どうやら、丈夫なのは見た目だけだったようだ。
「そうだ。理解できないか? 殴るっていうのは」
「待て待て待て。そうじゃない。殴るってのが何か聞いてるんじゃない。俺様がただ女に殴られただけで吹っ飛ばされたって?」
「そうだ。七番手」
「なな」
何か気にさわったのか、セブディの雰囲気が変わった。
殴られた頬を押さえて立ち上がれない様子だったのが、急に下を向きながら何事もなかったかのように立ち上がった。
「俺様は七番手じゃない。俺様は八芒星の一番だ。エイトーンには負けない。負けてない。魔王様はそれを認めてくださる」
どうやら八番手はエイトーンと言うらしい。
「そいつはどこにいる?」
「もう俺に勝ったつもりか? そうか、そうやって人間の分際で俺様を馬鹿にするんだな? 不快だ」
「うるさい。お前の事情は知ったことじゃない」
「こっちこそだ!」
睨みを効かせてくるセブディ。
俺も構えようとするが、足に何かしらの違和感。
「ベルトレット!? 邪魔をするな、大人しくしてろ」
なぜ俺の足を引っ張る。俺を殺したが、ベルトレットだって勇者だ。魔王を倒すための行動を邪魔するとは思えない。
ここでベルトレットを切り伏せるのは簡単だが、そうしたとして魔王を倒す意識が弱まるかもしれないのは俺としては望まない。
勇者は対魔王の顔だ。ここでベルトレットが死ねば、国として次の動きまで時間が空いてしまう。
「離せ。離すんだ」
「俺がぁ倒す敵ダァ。アルカァ。横取りするなぁ」
「そんな状態じゃないだろ」
「魔王様は俺様に味方してくれている。人間。残念だったな。コンビネーションがなってないとそうなるんだよ! 俺を七番手と侮った罰だ」
セブディが地面を蹴ると思いっきり俺に向かって突っ込んできた。
遅い。死神より遅い。
「貴様もついてないよな。よもや勇者に邪魔されるとはな」
神が馬鹿にするように言ってくる。
「うるさい。余裕ぶっこいてると俺ごと死ぬぞ」
「貴様が死ぬと?」
態度はぶっきらぼうだが、俺のことを信頼してるのか。
いや、俺の思い違いか。
「魔王様ぁ! 今私が魔王様の首を狙う人間を殺します」
「動けないくらいで負けるかよ」
「え」
俺はセブディの突進をその場でかわし、その勢いで剣を振った。
一撃をもってセブディはその場に倒れた。
「そんな、なんで」
「相手の手の内もわからない状況で突っ込むもんじゃねぇよ」
「ふっ、最後の最後に人間に説教されるとはな」
「エイトーンとやらの場所を話す気はないか?」
「俺様はエイトーンを好きじゃない。だが、お前らに話すことによるメリットはない」
「そうかよ」
「ああ、魔王様」
セブディは灰となって消えた。
どうやらエイトーンは自分で探さないといけないらしい。
「ああ! 敵だ! 人類の敵だ! とうとう勇者の手柄を奪った!」
足元では瀕死のベルトレットがうめいている。
ベルトレットをここまで追い込んだ相手だから、多少は強いかと思ったがそんなことなかった。
「この男を痛めつけているのは先ほどのやつではないぞ」
「そうなのか? まあ、そうか。さすがに弱すぎだもんな」
なら、誰にやられたのかわからないが、とりあえず近くにまだ八芒星がいるならそいつの場所へ行こう。
「ベルトレット。お前につき合ってる暇はない」
「そうだアルカ! 俺のパーティに戻る気はないか? 遅かったが、今なら戻してやる。さっきの手柄を俺のにするならな!」
ベルトレットはしつこく俺の足を掴んでくる。
いや、俺の妹であるアルカの足か。その足を掴み膝まで掴もうとしている。
これ以上這い上がってくるようなら決して容赦はしないが、そんな力もないようだ。足首より腕が上がってこない。
ひとまず俺は足を掴むベルトレットの手を引き剥がした。
「誰がお前のパーティに戻るか。だが、戦う意志は尊重してやる。残って戦え。助かりたいならペクターを起こした方がいいんじゃないか?」
俺はベルトレットに背を向け、仲間たちの元へと駆けた。
「おい! 待て! 悪かった! 手柄はアルカのものでいい! だから戻ってこい。俺を一人にするなぁ!」
まずは一体目。ここにいるはずの八芒星は残り一体。
次はどんなやつか。
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