第20話 巨龍の少女の説明
「なるほど。ありがとベヒちゃん」
「えへへ」
ベヒちゃんと呼ばれた巨龍だった少女はラーブに頭を撫でられると嬉しそうに笑った。
あいかわらず巨龍に囲まれた状況であることに変わりはないが、情報を得られただけマシだと思うことにしよう。
俺の予想通り、巨龍は長年の宿敵である黒龍の消滅を確認するため、それに黒龍の領地だった土地を早めに確保するために群れで動いていたようだ。
そのタイミングと重なって、なぜか魔王軍。それも八芒星の八体のうち、残りの二体が軍としてやってきたらしい。
「確かに来て正解だったみたいだが、なぜあんな場所だったんだ?」
「我の力は祈りの強い場所に引きつけられる」
「ってことはあそこが祈りの強い教会やら何やらだったと」
「おそらくそうだろう」
「おそらくって」
ま、跡形もないガレキになってちゃ神でもわからないか。
移動手段が神頼りだから仕方ないのだが、毎度現場から通り場所に出されちゃ対応が遅れるってものだ。
神の相手はこれくらいにして。
「なあ、魔王の部下ってのはどんなやつだ?」
「ベヒちゃん、ゆっくりでいいからね。それとラウルちゃん。ラウルちゃんはもっと女の子の扱いを覚えるべきだと思うな」
「その巨龍は女の子でいいのか?」
「女の子なの! それに巨龍じゃなくてベヒちゃん。ね?」
やはり第一印象がよくなかったのか、ベヒはラーブに隠れながらこくこくと頷いている。
女の子だし、ベヒちゃんがいいってか?
まあ、話を聞かせてもらってる立場だしな。
「どう? 話せそう?」
「うん。ラウルにも慣れてきた」
「なんで俺は呼び捨てなんだよ!」
また隠れてしまう。くっ! そう。俺は話を聞かせてもらってる立場。
「べ、ベヒちゃん? ゆっくりでいいから魔王の部下について知ってること話してくれないかな?」
「わかった」
俺のほほはひきつっている。だが話してくれる気になったようだ。
こんなにうまくいかないと、アルカならもっとうまくできたのだろうかと考えてしまう。
俺はどちらかと言えばガサツな方だった。家事なんかはアルカの方が丁寧でいつも指摘されていた。
今となっては思い出、いや取り戻すんだ。魔王を倒して。
「ラウルの覚悟わかった。ベヒも答える。魔王の部下、多分四天王じゃない方の二体がいる。四天王よりは忠誠心は低いし、力も弱かったと思う。でも、今の二体は行動が早い」
「見た目は?」
「えーと。肌が青いのと黒いのかな? 小さかったからよく見えなかったけど、ツノは生えてると思う」
俺の家族を殺したやつじゃなさそうだな。
だけど、行動が早いと言うだけあって、今まで拠点を動いた魔王の部下はいなかった。
今までのやつとは違うってことか。
「俺が言うまでもないだろうけど、似たやつを見つけたら警戒するように」
「わかった」
「わかってるって」
俺は頷く。
「し、シニーもわかってるから」
いつも行動の読めない死神は俺の腰を揺らして主張してくる。
「わかった。わかったから。そもそも、お前は四天王とか相手でも大丈夫だから静観決め込んでたんだろ?」
「シニーだって今は怖いもん。さっきも巨龍見たら怖くなっちゃって、すぐには動けなかった」
死神は下を向きながらぼそぼそと言った。
死神は服の裾を引っ張るようにしながら体を震わせている。
確か、ラーブの力は性格まで変えてしまうスキルだったはずだ。
どれだけ力が強くても、性格を変えられれば女の子は女の子ってことなのか?
俺はどうしたらいいかわからなかったがラーブが、してるように死神の頭を撫でた。
「ラウル?」
「勘違いするな。まともに動けないやつについて来られるのは困るだけだ。お前を女の子扱いするのは納得できないが、ラーブが言ったように女の子の扱いには慣れてない。少しは落ち着いたか?」
「落ち着いた」
「そうか」
びびっていても死神は死神。戦力にカウントできるはずだ。
そう。これはそのためだ。
「あれだ。一度しか言わない。お前は強い。それでも怖いと言うなら必死になって俺についてこい。すぐ行ける場所にいないなら守れないからな」
「ラウル!」
何を思ったのか死神は俺に抱きついてきた。
本当に何を考えてるのかわからない。マジで足手まといだったのか?
「ラウルちゃん、私も守ってくれる?」
「なんで死神だけ守るんだよ。タマミのが優先だろ」
「ベヒも?」
「お前はラーブがいるだろ。ってか、俺は一人しかいないからな?」
今までのやりとりを見てニヤニヤしているラーブに腹が立ったが、喧嘩している場合じゃない。
せっかく魔王討伐に近づくチャンスなのだ。逃すわけにはいかない。
「話はまとまったか?」
「ん? ああ」
「わかった。この街は救えない。次へ行くぞ」
「うっ」
何度やられても慣れない。
神は突然俺たちを転移させた。
ここは、どこだ?
別の街らしいが、すでにガレキまみれで被害の大きさがうかがえる。
遠くに巨龍が見えることから、先ほどいた街からそう遠くない場所のようだ。
「ああっ!」
「誰かがやられてるのか?」
この神、助からないやつは放置するが、助かる見込みのあるやつは助けようとする。
割り切りすぎな気もするが、神なんてそんなものなのか?
「すぐに行かないと」
「まあ待て」
急に転移させられただけでなく、俺の体の自由までうばれた。
動けない。そう思っていると、目の前を剣が通り過ぎていった。
「あれ? 人間が歩いてくるところに剣を当てるっていうゲームだったんだけどな。なんでわかった?」
珍しく神は俺を助けてくれたらしい。
「うわあああああ!」
だが、大きな悲鳴が聞こえてくる。
「ひょ」
「どけ」
俺は話半分にモンスターを殴り飛ばし声の方に走った。
倒れてる三人、そして尻餅をつく一人。
フードを深く被っているせいで見た目はわからない。
だが、そのフードはどこかで見覚えがある代物だった。
「あれ、あのフード」
「タマミちゃんも知ってるの? 私もどこかで見た気がするんだよね。どこだったかな?」
なんでタマミとラーブがアレを知ってるんだ?
「いや、わからない。同じ素材の別物かもしれない」
「それはあるかも」
「なるほどね」
同じような返事をするタマミとラーブを置いて、俺は全速力でフードの人物に近づくとフードを引き裂いた。
やはり予想通り。しかし、思わず表情が歪む。
「……ベルトレット」
「あ、アルカ!?」
「怪我してるなら下がってろ」
「協力者? いいねぇ。あそぼあそぼ」
ベルトレットたち勇者パーティを追い詰めていたそいつは青い肌にツノの生えた、ベヒの言っていた特徴のやつだった。
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