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九十五話 ガレキの山

たくさんのブックマーク、評価ありがとうございます。

感謝です。

「ひどいな」


 街は破壊しつくされており、うずたかくもれたガレキの山が凄惨せいさんさをものがたっていた。


「生き残りはいないの?」


 ひとの気配が感じられない。

 さきほどから生存者をさがしてまわっているが、だれひとりみつけられていないのだ。

 どこかへ逃げたか、連れ去られたか、あるいはみな殺されたか。


 しかし、気になることがある。

 死体がないのだ。

 血のついた衣類や、武器、防具などはころがっていても、肝心のなかみがみあたらない。

 食べられた?

 だがそれにしても、こんなキレイサッパリなくなるものなのか。


「なあ、ウンディーネ。悪魔って人間を食うのか?」


 フォミール砦にはだれもいなかった。

 食べたとしたらかなり食欲おうせいだな。骨まで残さずたべつくすとは。


「ええ食べます。にんげんだけじゃなく精霊や妖精も」


 精霊もかよ。

 ってことは鬼火なんかも食っちまうってことか。

 おそろしいな。そらみんな逃げだすわ。

 ただ……


「悪魔ってのはにんげんの恐怖が大好物なんじゃないのか?」


 どちらも食べるってことなんだろうか?

 それとも悪魔の種類によって食性がかわるのか。


「ええ、悪魔は恐怖をもっとも好みます。古来こらいより悪魔は恐怖や怒り、妬みなどといった負のエネルギーをかてとしてきました。ですが、いまは肉体そのものを積極的に摂取しています。なぜなら封印がいきているからです。こちらの世界にながくとどまると、からだが崩壊するのです。それを維持するために食べるのです」


 なるほど。崩壊をくいとめるためにか。

 悪魔のかずが多けりゃ多いほど、骨も残さないほどの奪い合いになるんだろう。

 こりゃ共存はムリだな。


「崩壊したらどうなるんだ?」


 それで死ぬというなら戦い方もかわってくる。

 とにかく逃げればいい。にげてにげて相手の崩壊をまつ。

 そんなやり方もありじゃないか。


「すがたを消します。――いったんは」

「いったんは?」


「悪魔とは概念のそんざいです。この世界でにくたいを失おうとも消滅したわけではありません。やがて魔界で似たような個体がうまれるでしょう」


 マジかよ……

 むてきやん。


「じゃあ、もしかしてさっき倒した悪魔たちも?」

「そうですね。いずれ何食わぬ顔をしてもどってくるでしょう」


 ふぁ~!!

 うそでしょ。

 あんなにがんばったのに。



 生まれて、死んで、だれかの糧になって。

 生きとし生けるものはそんな輪のなかにいる。

 しかし、悪魔はそこから完全にいつだつしてるってことか。

 死にもせず、だれかの糧にもならず。いっぽうてきに奪うだけ。

 邪悪すぎるな。そりゃあ封印されるわ。


 おなじく概念のそんざいである精霊ともまたちがう。

 彼らは自然とともにあり、自然とともに消える。

 木の妖精なら、木が枯れるとともにその生涯を終えるのだ。


 ふ~む。

 この世界にはふようのものだな。

 とっとと退場してもらうのがいいか。



「あ! マスターたいへん。誰かいる!」


 ルディーがとつぜん大きな声をあげた。

 彼女が指さすのは二本の足だ。

 上半身はガレキに埋もれて足だけがみえている。

 生存者……か?


 どうも子供の足のようだが。


 とりあえずガレキをどかす。

 ――念動力で。

 

「キシャアア!!」


 グロテスクないきものが牙をむいた。

 ギョロ目でやけに鼻がでかい。にんげんに似てるけどにんげんじゃない。悪魔か。


「だろうね」


 ズンと、どかしたガレキを頭の上におとす。

 ふたたび埋もれるにんげんもどき。

 ついでにガレキの数もふやしておく。


 ずっと埋まっとけ。また復活するってんならまともに相手すんのもバカらしい。

 みるからにヨワそうだし、とりあえず埋めときゃいいだろ。


「ウゴバクですね。下級悪魔の」


 ウンディーネがおしえてくれた。

 そういやさっき話にでてきてたな。

 ウゴバクってたしか地獄の釜の炎が絶えないように油を注ぎつづけるんだっけ?


 だったらちょうどいいな。おなじことするのには慣れてるだろう。

 ずっとそこにいればいいよ。

 油がガレキにかわるだけだ。たいしたちがいじゃあない。


「じゃあ、いくか。こんどはもっとデカイ街にいってみよう」

「え? アイツはあのままでいいの?」


 ルディーが心配そうにいう。


「いいんじゃね? いちいちハエをあいてにするのもメンドクサイし」

「でも、だれか通りかかったら?」


 それもそうか。

 ふたたびガレキをどけると、ウゴバクの首をボキンとへし折った。


「いちおう足も折っておくか」


 ベキン、ベキン、ベキン、ベキン。

 ついでに腕も折る。とくべつサービスだ。感謝してくれていいぞ。

 で、ガレキをもとどおりにして――


「よし、しゅっぱつ」


 ふたたび馬車をはしらせる。

 さらに北をめざして。


 ――それにしてもウンディーネのやつ。

 情報をだしおしみするから二度手間じゃねえか。復活するならするでやりようもあったかもしれないのに。


 そうだな。こんどビンでも買っておくか。

 つぎにダンダリオンやオロバスに会ったらバラバラにして詰めてやるんだ。

 死ななきゃ復活もせんだろ。

 いかさずころさず。ちょうどいい塩梅あんばいがむずかしいかもだが。




※ちなみにダンダリオンの復活は100年後、オロバスは120年後です。

 主人公がであうことはもうなさそうですね。

 精霊は長寿のためか時間の感覚がおかしいみたいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 返信感謝! …悪魔がウザいって話なだけです!…あいつら無駄に強いし…主人公達の方が味方の数が多いし決して弱く無いのに、悪魔の野郎ども戦いが長引くほどの強いクズ野郎でウザいです!…主人公の立…
[良い点] あとがき…はっはーん!じゃああの馬鹿阿呆どもが主人公を害することはない訳か!…まぁ裏設定ならウンディーネも復活する時間は詳しくは知らんのでしょうね…知ってたら詳しく言わなきゃ不義理ってもん…
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