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九十話 秘策その二

「どうすんの?」


 ルディーが問いかけてくる。


 いや、俺が聞きたいわ。

 どうしたらエエねん。歯がたたんうえに空までとぶって。


「こういうときは、とりあえず……」

「とりあえず?」


「逃げる」

「やっぱり!!」


 サッと身をひるがえすと、ヒュ~ンと飛んでいく。

 しゃーない。

 だって、こいつダンダリオンよりツエーんだもん。

 ただの筋肉バカかと思ってたのに。


 ちからとタフさで一点突破をはかってくる。いぜん言ってた負けるパターンじゃん。

 策がなければ戦ったらいけないやつじゃん。


「たっけて~」


 ふりかえるとオロバスは鬼の形相で追ってきていた。

 馬なのに鬼。ちょっとおもしろいけど笑っている場合ではない。

 馬で炎で悪魔で鬼。よくばりセットで追ってくる。

 その速度は俺よりはやいのだ。


 ヤバイ。このままだと俺のシリにささってしまう。

 チ〇コだけに……ってやかましいわ!


「マスター!!」


 ルディーの声にあわせて左におおきく旋回。

 すると炎の柱がよこをぬけていった。


 オロバスが火をふいたのだ。

 飛びながら火をふくって、テメードラゴンかよ。


「マスター、ピンチじゃん。ねえ、あれつかう?」

「あれ? あー、うんあれね」


 あんまつかいたくなかったんだけどしゃーないか。

 ほかに手がないもんなあ。


「またきた!」

「ひゃー」

 

 断続的におそいかかる炎をさけつつ、ある場所へとむかっていった。




――――――




 やってきたのはフォミール砦。

 くしくも追ってくるオロバス君と初めてであった場所だ。

 アイツかんぜんに馬になりきっていて、まんまと騙されたんだよな。


「きた! マスター、はやくはやく」

「わかってるよ。せかすなって」


 ルディーがお空を指さしてワーワー言っている。

 オロバスが接近しているのだろう。わかっちゃいるが、あせって手元がくるったら元も子もない。

 この作業はすこしだけ時間がいる。

 なんとかスキをみてオロバスを引き離し、こうして細工をしているのだ。


 ガリガリ、ゴシゴシ。でもってカキカキ。


「よっしゃ、でけた」


 細工が完了するとオロバスをむかえうつべくスタンバイする。

 とはいってもあんまりすることはない。

 細工したものの前に立ち、フルパワーでシールドをはるぐらいだ。


 空をみれば迫りくるオロバスがいる。

 いい感じ。その姿は、もえさかるペガサスのようで神々しさはあるが、しょせんバカ悪魔。まっすぐつっこんでくる単純さに、内心ほくそ笑む。


 よ~し、姿がかわっても中身はバカのままだな。けっこうけっこう。

 おまえはイノシシみたいにワナにかかって死ぬのだ!!


「撃てい!!」


 とはいえ待ちかまえているだけではワナとばれてしまう可能性がある。

 バカにだって生きるための知恵はあるのだ。


 俺のかけごえとともに巨大な矢が発射される。

 これはバリスタと呼ばれる据え置き式の大型弩砲からのもので、クロスボウとはくらべものにならないほどの威力と射程をほこる。

 なんか砦のなかにあったから拝借はいしゃくした。

 こんなもん効かないだろうが、目くらましにはなる。


 ちなみに撃ったのはリザードマンたちだ。プリッと召喚で呼びよせといた。

 どんなに離れていてもひとっとび。

 まあ、なんて便利なんでしょう。


 対するオロバスはスピードを緩めることもなく突っ込んでくる。

 じぶんの防御力にぜったいの自信があるんだろう。

 まったく。ゴーレムみたいなやつだな……

 

「マスター、外れた!」


 放たれた矢は五本。だが、オロバスはわずかな動きだけですべて回避してしまう。

 こしゃくな。


 しかも、それだけではない。

 矢をかわしたオロバスは、おおきく口をひらいた。


 げ! くる。


「退避!!」


 俺に言われるまでもなくリザードマンは城壁の陰にかくれていた。

 撃ったら逃げろと伝えていたからね。


 オロバスの口より、ゴオオと炎がはきだされた。

 それは砦の大地を焼いていく。


 あっちい!

 やはり狙いは俺。途切れることなく炎が頭上にふりそそぐ。


 シールドはもっている。しかし周囲をつつむ高温が、ようしゃなく俺のからだを焼く。

 ゴボゴボと水があわだつ。

 ウンディーネの水のバリアだ。彼女が俺の周囲に、うすい水の膜をはっているのだ。

 それでも熱い。いま息を吸ったら確実に肺がやける。


 永遠とも思える炎のふりそそぎも終わりがきた。

 視界がはれて空がみえる。

 だが、俺のひとみにうつったのはオロバスのニヤついた顔。

 勝利を確信したムカつく馬ズラ。


 やつはもう目前だ。このまま衝突する気だろう。

 

 ――ふん。

 だが、勝つのは俺だ。おまえはダマされて、みじめに負けるんだ。

 こころのなかで文言もんごんをとなえる。


『オロバス! おまえの通過を許可する!!』


 両足にちからをこめると後方へ飛ぶ。

 銀色にかがやく木枠をくぐったのがわかる。


 その瞬間。

 ドゴンとなにかがぶつかってきた。

 オロバスだ。オロバスが高速で体当たりしてきたのだ。


 シールドが砕け散った。オロバスのニヤけた顔は目と鼻のさきだ。


 だがそれも一瞬のこと。

 俺たちは周囲をみたす大量の液体にもみくちゃにされていった。


もうすぐ四章おわります。

あと三話ぐらいですが、毎日UPできればなと。

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