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八十一話 グロブス領へ

 よくあさ日の出とともに砦をでた。

 けっきょく一夜すごしてみてもなにもなく、ここにいても仕方がないと判断したのだ。

 馬をひきつれてゾロゾロすすむ。

 いきさきはグロブス領のオーデルン。けっこう栄えた街ときく。

 とうしょの予定ではフォミール砦までだった。だが、商品もろくすっぽ売ってない、情報も得ていないでは帰れないのだ。

 

 灼熱の太陽がじりじりと肌を焼く。

 乾いた大地が照り返すひかりに目をほそめる。

 砂漠地帯にとつにゅうした。ごつごつとした岩肌をみせる丘がたちならび、砂利まじりの土の街道が砂ぼこりをまきあげている。


「あついね。マスター」

「まったくだ」


 照り返しの太陽が、とにかくやっかいだ。

 肌も焼けるし、目も焼ける。


「馬もつらそう」


 んだな。暑さはともかく日差しはなんとかしないと。

 羊皮紙を布で包み、馬の頭に巻いた。これで羊皮紙のでっぱりが日陰となり馬の目を直射日光から守ってくれるだろう。

 俺とルディーはフードをふかくかぶった。

 これであるていどはしのげるハズ。

 

 あとはクイックシルバーか……

 彼らは張ったほろのなかか、荷台のしたにもぐりこんでしまった。

 やっぱ幽霊なんだな。

 太陽光のもとでも活動できる彼らだけれども、さすがに日差しが強すぎたらしい。


 そういや、オットー子爵もたいてい荷台のなかにひっこんでたわ。

 いや、すまんすまん。

 偵察させるのは夜だけにしとこう。


「あ、マスター、あれ村じゃない?」

 

 ルディーがゆびさす先になにかがある。

 ん~、あれは木の柵と……とうもろこしの畑か?

 たしかに村っぽいな。

 おくのほうにわらぶき屋根の家らしきものもみえる。


 こんなところに村があったのか。

 オットー子爵の情報にはなかったが。


 まあ、彼が生きていたのはけっこう前だ。

 あたらしく村ができていても不思議ではない。

 すこし進路をかえ、村へむけて馬車をすすめていった。




――――――




 カラカラカラと水車がまわる。

 どうやらこの村のちかくに水源があるらしく、用水路をながれる水が水車を動かしていた。


 水車小屋をのぞく。

 ふるい木造のへやはガランとしており、奥におおきな石ウスがポツンとおかれていた。

 ガガガガ、ガガガガ。ウスはひとりでに動く。そして、なにやら白い粉を吐いていく。

 あの粉はとうもろこしか?

 水車を動力として、製粉しているのだろう。

 しかし……


「だれもいないね~」


 そうなのだ。

 水車小屋の中はもちろん、道や畑も人のすがたがみえない。

 ただ、ウスと水車のきしむ音がさびしくひびいているだけだ。


「どうするの~」

「う~ん……」


 ルディーの言葉に腕をくんでしばし考える。


「なんかヤバそうな感じだよねー」

「だよなあ」


 砦とまったくおんなじだ。

 あらそった形跡はない。にもかかわらずだれもいない。

 不自然きわまりない。

 みんなどこいった?

 もともといないなんてことはありえない。それならウスがとうもろこしの粉を吐くわけがないからだ。


 どうすんべか。


 とはいってもどうしようもないんだけどな。

 ただごとじゃないのはわかるんだが、とりあえず手の打ちようがない。


 だれかに知らせる? いや、ムダだろ。

 しりあいの権力者といえばフィリップだが、あいつに知らせたところで、どうにもならん。

 ぎゃくにどうしたらいいですか? って聞かれるのがオチだ。


 じゃあ領主か? パラライカの領主。

 うん、ないない。


『たいへんです! 砦にだれもいません!!』

『ほんとうか! それはいつのことじゃ!?』


『ついさきほどです!』

『ついさきほど? 馬で何日もかかる砦の?』


 ってなことになるのは目に見えとるしな。

 こちとらトビラで一瞬だが、ふつうはそうはいかねえし。


 問題はこの現象がグロブス領だけにとどまってるかってことだが……


 とりあえずセラシア村は問題ないだろう。リザードマンの里も。

 あそこにゃ契約した精霊たちがいる。

 なにかあればすぐわかる。


 やっぱ、これって精霊がいなくなったことと関係してんのかな?

 精霊のつぎはひとか。こりゃ、のんびり商売してるヒマなんてないのかもな。


 ったく。めんどうごとばかりおきやがる。

 ――とりあえず先にすすむしかあんめえ。

 情報がなきゃ対策もクソもねえからな。


 

 ……ん?

 村をすすんでいくと、前方に人影が見えた。

 

 おそらく老人だろう、ほぼ直角に曲がった腰でゆっくりと移動している。

 どうやら家の中にむかっているようだ。


「なんだ。ひといるじゃん」


 ルディーのことばにうなずく。

 うん、いたね。

 無人じゃなくて、超過疎村だったのかも。

 とりあえず話を聞くべ。

 老人にむかってすすむ。


 あともうちょい。


「すみませ~ん」


 バタン!

 しかし、聞こえていなのだろうか、呼びかけるも老人は家の中にはいってしまった。

 チッ、しゃあねえな。


 老人が入っていった家の外観をながめる。

 さびれた村にしては、すこしつくりの良い木造の家だ。

 右手に納屋があり、そのすぐよこに井戸もある。

 また、軒下には看板がつるされており、ベッドと酒樽の絵が描かれている。


 こいつは宿屋か。

 ちょうどいい。話を聞くにはもってこいだ。




宿屋です。

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