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七十六話 モヤモヤする

 村のはずれへと連れていかれた。

 先導するリザードマンは生い茂る木々のさらにおく、崖にポッカリあいた洞窟へとすすんでいく。


 ハイドラってのはあのさきにいるのか。

 なんかワクワクするな。

 なまえの響きからいってヤバそうだけど、好奇心のほうが勝っちまう。

 俺もまだまだ若いってことかな。


 洞窟のいりぐちを覗く。

 床はひとの手が加えられているようで、なだらかな階段が下へとつづいている。

 壁をさわるとヌルリとした感触。

 なんとも奇妙なざいしつだ。


「&’$%&$$」


 早くこいとリザードマンがせかす。

 うっせーな、わかってるよ。

 足をすべらせぬよう気をつけてすすむ。やがて、ひろい場所へとでた。

 周囲に立ちならぶのは、白みがかった茶色い岩のはしら。

 そのかたちはツララに似ており、先端をピチャンピチャンと水滴がうっている。


 そして、さらに奥。

 ひときわおおきな岩のむこうに、青くすきとおった泉がひろがっていた。


「わお!」

「神秘的~」


 思わず声がでる。

 ひらいた天井からさしこむのは、ひとすじの光だ。

 それが泉のちゅうおうを照らすと、周囲の水は青白くキラキラと輝きゆれる。


「すっごい、キレイ」

「だな」


 だが、キレイなだけじゃない。

 ふしぎな雰囲気を感じる。


「ねえ、マスター。もしかして……」

「ああ」


 精霊だ。この場所には精霊の息吹いぶきがある。


 泉にちかづくと、リザードマンたちがみな、ひざまずいた。

 そしてこうべれる。


「&%&%$>**!!」


 ふとリザードマンが横目で俺を見た。

 すると、なにやら怒鳴りはじめる。

 うるせえな。なんだよ。


「おまえもひざまずけって」


 ルディーが耳もとでささやく。

 やだよ。

 その土地の文化にあわせるのはやぶさかではないけども、ハイドラってのはたぶん精霊だ。

 精霊召喚士が精霊にひざまずいてちゃ、ほかのものに示しがつかねーよ。

 リザードマンから視線をきると、ツンと横をむいた。


「**%*&*>!!」

「***!!」


 数匹のリザードマンが立ち上がって掴みかかってきた。

 が、ところがどっこい、彼らは見えない壁にはばまれる。


 おどろくリザードマンたち。

 ハハッ! こんなアウェイで無防備にからだをさらすハズないじゃん。

 ちゃんと風魔法でブロックしてますよ。


 よし、ちょっとイタズラしてやるか。

 みえないシールドをグイグイと押しこんだ。

 ベチャリと張りついたリザードマンは、なすすべもなく押しだされていく。


「>?<%&$%**!!!」


 リザードマンたちがわめいている。

 ハッハッハッ。もう泉まで距離がないぞ。

 がんばらないとポチャンだぞ~。


 そのとき、泉の水がゴボゴボと泡立ち始めた。

 それはしだいに人の形をとると、うつくしい女のすがたになる。


 ほ~、コイツはウンディーネだ。

 なまえは広く知られるものの、なかなか出会えないレアな精霊だな。

 俺もいちど見ただけだ。

 うわさによるとかなり強力らしいが……


「およしなさい。そのへんでいいでしょう」


 ウンディーネから声がひびいた。

 それはからだどうよう、やけに透きとおって聞こえた。


 しゃーねえな。まわりを水に囲まれたこの場所じゃ、ウンディーネは怒らせないほうがいい。

 なにせ彼女らのおこした津波は、海の怪物ヒュドラのように街をおそったと逸話がのこされるほどだ。

 シャレで敵対するにはリスクがおおきい。

 みえないシールドをとくと、リザードマンを解放した。


 リザードマンたちはすぐさまウンディーネに平伏へいふくする。

 まさに、ハハ~って感じだ。

 なるほど、この種族は水の精霊を信仰しているんだな。

 それで今回、こいつに俺をどうするかの判断をあおごうと。


「お客人、申しわけありませんでした。彼らの非礼、わたしから詫びます。どうか許してあげてほしい」


 そういってウンディーネはあたまをさげた。

 あら? めずらしい。精霊が人間にあたまをさげるとは。

 それに一個人を気に入ってあれこれしても、きほん特定の集団に肩入れしないハズだがなあ。

 個性かねぇ。

 このむすびつきが、いまだ彼女がこの世界に残っているりゆうだろうか?


「ん~ん、許すもなにも、そもそも怒ってないよ。人とリザードマンはちがう。それぞれ生き方ってもんがあるだろうからね。俺はじぶんと身内の身の安全さえ保障されれば、それでかまわないよ」

「そうですか。彼らにはよく言ってきかせます。’&%&%$>>?&%><>?」


「なんて?」


 ルディーにこっそりたずねた。

 すると彼女もこっそりこたえる。


「この者は使命をせおっています。ジャマすることはまかりなりませんって」


 使命? なんじゃそら。

 そういや管理者のじいさまも、そんなこと言ってたな。

 ヤダよ。俺は自由に生きるんだい。

 責任がともなう英雄とか勇者とかまっぴらゴメンですよ。

 ここはちとクギをさすべきだな。


「ウンディーネさんや。使命とか勝手なことをいわれても困るんやが……」

「わかっています。あくまで彼らを説得するためです。じつは以前から水面みなもをとおしてあなたのことを見ていました。あなたはあなたのしたいことをすべきでしょう。それがあなたにとっても世界にとっても良い結果をうむにちがいありませんから」


 ん~、なんか微妙な言い回しだなあ。

 やっぱ使命ってのがあるんだろね。

 いまんところ望む方向にいってるから手出しはしないって感じにしか聞こえんもん。

 どうも手のひらの上で踊らされているみたいでイヤだなあ。


「不服ですか?」


 俺の表情を見てか、ウンディーネがたずねてくる。

 う~ん、そう聞かれると困るな。

 べつに彼女がなにかしたわけじゃないし。


「不服つーか、気に入らないって感じだ。なんでかよくわからないけど、とにかく気に食わない」

「そうですか。残念です」


 ん~なんだろう? 

 なんすかね、この感情。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] あくまで“敵対するなら”です!相手が矛を納めるなら和解も良い!…です!
[良い点] ウィンディーネさんはこれまでで一番礼儀正しい精霊ですなぁー!…でも主人公の嫌がることをしちゃダメだよ!…主人公は常に相手を伺い契約してるからね!…騙し契約?いやいや主人公は契約相手を身勝手…
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