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六十九話 こい~の

 アケパロスにしごとを割りふった。

 祠の警備だ。農場から運びこんだ作物を盗まれないように見張ってもらう。

 とはいえ、そのままの姿では具合が悪い。

 たちよるたびに、いちいち不幸に見舞われては俺も冒険者たちもやってられない。


 アケパロスには服をきてもらうことにした。

 フードつきのシャツだ。

 フードの部分にはダミーのあたまを入れる。とりあえずカボチャでも入れておけばあたまっぽくみえるだろう。

 そして、おなか部分には視界をかくほするための穴をあける。

 これで誰も不幸にあわずにすむ。

 じゃっかん変質者っぽい恰好かっこうだが、とうめんはこれでいく。

 のちのち全身ヨロイなどにバージョンアップしていくのもありだろうか。



「ちわ~。農具や日用品たりてますかー?」


 セラシア村の農家をまわる。

 タネを手にいれるためだ。こちらは物品を提供し、めぼしい作物のタネがあれば譲り受けるのだ。

 タネを持ってなくとも、住民がのぞめば物品は無料で提供した。フィリップ卿のはからいですとつけ加えて。

 これでフィリップの評判はさらにあがるだろう。

 また、まわりまわってこの話をフィリップが聞いたなら、俺の好感度も爆あがりにちがいない。

 そんなまわりくどいのフィリップの耳には入らなかったらムダにならね? とか思ってはいけない。

 いくつも仕込んどけば、いつか必ずヒットする。

 植物の育成とおなじだ。

 発芽しないタネもあるし、生長がわるい芽から間引かれる。

 おおきく育った一本は、さまざまなムダのうえに成り立っているのだ。




――――――




 いくつかタネを手にいれると、精霊の世界へと戻ってきた。

 これから農地を拡張して作物を植えようと思う。

 とはいえ、せんぶ植えてしまうと収穫がおいつかないし、行商でもさばききれない。

 さしあたり必要なものだけ栽培しよう。


 まずは大豆。

 てきとうな場所を耕して、テキトーに植える。

 いちおう豆は植えるまえ水にひたしておいた。あと収穫しやすいようにウネをつくって直線にまいた。

 テキトーと言いつつも収穫するひとのことを考える。やっぱ俺ってできる男だな。


 つぎは小麦。

 これまたウネをつくって直線にまく。

 すじまきってやつだ。畑といえどもキレイに整頓されてると気持ちいい。

 芽吹き生長していけば、まっすぐならんだ小麦の並木道なみきみちになるだろう。

 整頓されてるってのはとにかく気持ちいいものだ。


 働いたら腹がへる。食事の前に水分補給もかねてブドウをつまみたいと思う。

 川の水でほどよく冷えたブドウさんを果樹園でモチャっとたべる。

 皮ごとムシャムシャ。すっぱ! タネ多!!

 プップップとそのタネを地面に吐き捨てると、うす~く土をかぶせる。

 これで何日かしたらブドウが食べられる……ハズ。

 甘いといいな~。酸っぱいの俺あんま好きじゃないんだよね~。


 これでうちの作物は何種類になっただろ?

 出荷可能なのがトマト、にんじん、たまねぎ、きゅうり、じゃがいも。

 ラズベリー、グランベリー、ブルーベリー、パパイヤ、マンゴー……10種類か。


 これにいま植えた大豆と小麦、ブドウ。そして、これから植える予定のトウモロコシをくわえて14種類。

 なかなかのラインナップじゃないだろうか。



「マスタ~」


 畑をみてウットリしていると、なにかがピロロと飛んできた。

 害虫ではない。ルディーだ。ピクシーのルディー。

 なんだか久しぶりのような気がする。しょっちゅう会ってたんだけどな。


「どうした? なんかあったか?」

「それがね~、そろそろ出そうなんだよ~。ネバ~っとしてて濃い~のが」


「ほう! ついにか!」

「うん、そう。マスターきて」


 そうしてやってきたのは、色とりどりの花が咲き乱れ、パーゴラ(木材などで組んだ棚)に絡んだツルから各種ベリーもとれるルディー自慢の庭だ。


 そのなかにかわいらしい木箱が四個設置されている。

 こいつだ。これがルディーの言ってたやつだ。


 箱をそっと持ちあげると、背板をはずす。

 モゾモゾとうごめく黄色のじゅうたんがみえた。


 キンモ~。

 じゅうたんの正体はハチだ。ミツバチ。

 この木箱は彼らの巣なのだ。

 

 パチパチと火をたくと葉っぱつきの生木をくべる。

 ケムリがモワーとでてきた。

 これをミツバチにあてると、おとなしくなるハズ。


 しばし待つ。

 ……もういいか。

 こわごわ巣に手をいれ、巣枠とよばれる針金を張った木枠をいちまいとりだした。

 ぶおおおんと風切り音。

 みっちりとミツバチがこびりついてる。

 ヒイ~。

 一匹ならかわいいのに集団でウゾウゾと身をよせあう姿をみると、くびすじがかゆくなってくるのはなんでなんだろうな。


 ごめんね~。刺さないでね~。

 ブラシでミツバチをそっとこそぎ落とすと、黄金色にかがやく液体が目にとびこんできた。


 いえ~い! ハチミツだ~。

 巣枠を樽のなかにいれる。ここで俺の念力の出番だ。

 巣枠をグルグルっと回転さすと……

 飛ばされたハチミツが樽の底にたまるのだ。

 ひゅ~、こいつはごきげんだぜ!!


 すくってひとくちナメる。

 ふぉおおおお。あま~い!!

 たまらん!! もうひとくち。


「あ~、ずる~い。わたしも~」


 ペロペロ。レロレロ。

 ルディーと一心不乱にむしゃぶりつくのであった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] アケパロス良いですね!かぼちゃヘッド! 仲間が増えて来て、姿形が異様だから行商のために列をなしているのが百鬼夜行と間違われそう!妖怪大集合!
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