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追放された召喚術士、しかたがないので農業をはじめる  作者: ウツロ
二章 ほっといてくれないんなら反撃するしかないよね
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三十六話 いざ、新天地へ

 はじかれたように後方にとんでいくセバスチャン。

 そのまま船のしたのほうへと消えていく。


 ふ~、あぶなかった。なんとかうまくいったな。


「マスター、マスター!」

「大丈夫だ」


 かけつけてきたルディーの目にはうっすらと涙がうかんでいた。


「首から血が……」

「ああ。セバスチャンのヤロウ、本気で俺を殺そうとしやがった。一歩まちがえてたらあの世いきだったよ」


 首筋を手でおさえて止血する。

 そんなに深くは切っていないと思うが。


「いそいで治療しないと」

「ああ、たのむ」


 ルディーはすぐさま傷口に妖精のこなをかけてくれた。

 おかげで血はすぐに止まり、ひといきつくことができた。


「わたし、もうだめかと思った」

「俺もだ。まさかあそこまで追いつめられるなんて予想外だった」


 まったく。元気なオッサンだよ。街から走ってきたワケだろ?

 まちぶせの冒険者に多少てまどったとはいえ、こちとら魔法をつかってちょうやくしてきたんだ。そこまで時間はたってなかったハズだ。

 とんだ身体能力だ。


「ねえ、マスター。最後なんでアイツうしろに飛んでいったの?」

「ん? ああ、ドライアドだよ。ドライアドの植物をあやつるちからだ」


 そうだ。あのちからは想像いじょうに強かった。

 

「え~っと……」

「麻ってのは植物の繊維でできてる。ドライアドのちからであやつれるのさ」


 ロープだけじゃない。着ている服もそうだ。


「足にまとわりついたロープをのばし、セバスチャンの服と絡みつかせる。で、さらにのばして船尾にあるロープにもつなげるってワケだ」


 セバスチャンがどうやってロープをあやつっていたかはわからない。だが、ドライアドのちからのほうがはるかに上だった。拘束をとくのだってかんたんだった。


「あー、なるほど。だからマスター、高度を下げるように言ったんだ」

「そういうこと。セバスチャンがよじのぼってきたロープ。あのたれさがったぶぶんを輪っか状にする。それが木に引っかかった瞬間、いっきに引っぱられたってことだな」

 

 もちろん、それだけじゃ不十分だ。引かれる瞬間、すばやく首を刈ってくるかもしれない。まあ、じっさい刈ってきたんだが。

 だからセバスチャンの服にはもうひとつ細工をしといた。

 肩やヒジがのびないように繊維どうしをからめといたんだ。

 つっぱってすばやく動けないようにするためにな。



 さて、じゃあ改めて旅のはじまりを宣言するか。


「ルディー、あらたな船出だ。新天地へむけて面舵おもかじいっぱい!」

「あいあいあさー。キャプテン」


「目的地は西、たいようのしずむ方角へまっすぐだ。ヨーソロー」

「ヨーソロー!」




※ 中世では麻、あるいは綿で服をつくっていたようです。

 ただ、現代では綿は木綿ですが、そのとうじ木綿はあまり流通しておらず、綿といえば絹――蚕のまゆ(シルク)を指すんだとか。




――――――




「キャプテンエム。しずむ夕日がまぶしいです」


 うん、たしかに。目的地を北か南にすればよかった。

 それなら、朝も夕もまぶしくない。


「ちょうど腹もへってきたし、いったん帰るか」

「さんせー」


 船のうえでトマトやパパイヤをかじってはいたものの、それだけじゃ物足りないのだ。

 肉やパンがほしいところだが、そんなもんはまだない。

 せめて調理したものを食べたい。

 そうだ、かまどだ。火入れをしていたかまどをさっそく使ってみよう。


 地面に降りたつと扉をせっち。

 なかへと入ると、目の前にひろがっているのは、だだっぴろい草原だ。

 背後にある扉はふたつ。

 いまつうかした扉と、さいしょからあった森へとつうじる扉だ。


「……」

「……」


 ――しまった!

 シンボルツリー横の扉を船にくくったんだった。

 なら、でてくるのはとうぜんこの場所。農地ははるか先だ。


 農地へとつながる扉はない。だって持っていったんだもの。


「とびら、もっとつくんなきゃね」

「そうだね。つくんなきゃね」


「船もっかい通す?」

「そうだね。歩いて帰るのはイヤだしね」


 どうやら明日は船長ではなく、木こりにならんといけないようだ。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 終わってたのは町と国でしたね!
[一言] 気持ち悪い推理のピー男爵と気持ち悪いサバ執事を金的激痛攻撃を加えて報いを与えてやってくだせぇ主人公!頑張れ!…あと口の悪い糞おばさんと元パーティーへの報いを忘れずに!
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