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追放された召喚術士、しかたがないので農業をはじめる  作者: ウツロ
二章 ほっといてくれないんなら反撃するしかないよね
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三十四話 近くて遠い扉

「はあ、はあ、はあ」


 口から心臓がとびだしそうだ。もう走れない。

 なんとかたどりついた森の中、木に背中をあずけて呼吸をととのえる。

 追っ手はだいぶ引きはなした。いずれ追いつかれるだろうが、すこしばかり休むじかんはあるだろう。 

 仕切りなおしだ。

 いったん農地へかえって対策をねる。

 あそこには水もあるし食料もある。さいあく持久戦にもちこめば、勝ち筋もみえてくる。

 

「あぶない!」


 強風がふいた。ザザザと木々が葉をゆらす。

 と、どうじに俺のすぐとなりの木の幹に矢がささった。


「くそ、はずした」


 みれば弓をもった冒険者らしき姿がある。

 それもひとりではない。すくなくとも五人はいそうだ。


「なにやってんだ。おめえは」

「いや、急に風が……」


 冒険者どもがなにやら言い合っている。矢をいったのはひだりはじのヤツか。

 あぶなかった。危険をしらせてくれたのはピクシールディーだ。

 風で矢のきどうをそらしてくれたのも彼女だろう。まともにくらってれば、いまごろオダブツだったかもしれない。


 よくもやってくれたな。

 冒険者たちに圧縮したくうきのかたまりを放つ。


「ゲボッ」

「え? なん――」


 きょりが遠く、いりょくはイマイチだが、彼らはなすすべなく吹きとばされていく。

 這いつくばり、うめきごえをたてる冒険者たち。

 トドメをさしたいところだが時間がない。いまはすこしでもはやく扉までたどりつきたい。


 ピーと笛がなった。近い!


「いたぞ」

「囲め」


 ぞろぞろとすがたをみせる新たな冒険者たち。

 みな驚くほど軽装だ。

 どうみても魔物とのたたかいを想定していない。俺を殺すためだけに、かりあつめられたんだろう。


 しかも、こいつらは街にいたヤツラじゃない。

 あらかじめこのあたりに潜んでいたんだ。

 森のようすがいつもと違うと思ったのはこのためか。


 クソッ、ずっとつけられていたんだ。

 だいぶまえから出入り口をさぐっていたんだ。

 たとえ扉がみえなくても、俺のすがたが消えたとなればさっしがつく。

 街までおびきよせてから、いっせいに動きだしたんだ。

 

「ぜったいに逃がすな!」

「金貨1000まいだぞ」


 ――1000まい!?

 誰かがもらした情報におどろく。

 あの男爵、おれに懸賞金けんしょうきんをかけやがったのか。

 しかも、なんてばかげた金額なんだ。金貨1000まいの賞金首なんて聞いたことがない。

 みんな血眼ちまなこになるハズだ。


「追え! 追え!」


 木のすきまをぬうように逃げていく。

 ときおり風魔法ではった障壁シールドを矢がはげしくうつ。

 まずいぞ、まずいぞ。

 いまはまだ全身をすっぽりと覆うほどのシールドははれない。精霊力がたりないんだ。

 ひだりは俺がはって、みぎはルディーがはる。それでなんとかしのいでいるものの、前後はがらあきだ。これじゃあそのうちあたっちまう。


「まわりこめ!」

「ぐおっ、足が」


 風魔法だけでなく、土魔法のおとしあなも駆使くししてかけていく。

 だが、扉になかなか近づけない。むしろ遠ざかってしまっている。


 クソッ、どうする?

 トルネードでいっきにけちらすか?

 いや、木がジャマでいりょくを発揮できない。

 発動後のスキをつかれるとマズイ。


 イチかバチかちょうやくするか?

 ちゃくち点も見えず、しげった枝葉にぶつかるきけんもあるが、このままマゴついているよりマシだ。

 そうして、きけんな賭けにでようとした瞬間、冒険者たちから悲鳴があがった。


「うわっ!」

「くそ、なんだ?」

「木が!!」


 周囲の木々がうねっていた。

 うまっていたハズの根は隆起りゅうきし、見上げる者の足をからめとる。

 しなった枝ははじけ、たちつくす者をうちすえる。

 たれさがったツタはヘビのようにまきつき、矢をつがえる者の自由をうばう。

 

 ドライアドか!

 意志をもった木々が、冒険者をおいつめていた。


 これがドライアドのちから……

 しげみに手をかざす。

 地表を這うほそいツルは、みるみる伸びてからみつき、一本の太いイバラのムチとなった。


 ハハッ、コイツはすごいぞ。

 植物をあやつるちからか。


 もう負ける気はしない。すくなくとも森のなかでは。

 森におそわれ大混乱の冒険者たちをしり目に、ゆったりと扉まですすみ中へと入っていった。


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