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追放された召喚術士、しかたがないので農業をはじめる  作者: ウツロ
二章 ほっといてくれないんなら反撃するしかないよね
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三十三話 銀のバラ

 まさか庭の花を盗んだから!?

 いやいや、ないない。そのていどでギルド動かしてたんじゃ割りにあわんわ。

 じゃあなんで……


 あ! もしかして俺も銀のバラの一味だって思われてんの?

 マジかよ。じょうだんじゃねえよ。

 

「男爵さま。どうもごかいがあるようです。わたしは盗賊ギルドとはなんのかかわりもございません」

「おや? わたしは盗賊とは言ったが、ギルドとは一言たりとも発していないが」


 ん? んん? ……げ! しまった!!


「語るに落ちたとはこのことかね」


 まって、まって、ほんとうにちがうの。

 たまたまこの宿にとまってただけなの。

 商売しようと立ちよっただけなの。

 どう説得するか、あたまをフル回転させる。

 しかし、男爵はそんな時間をあたえてはくれなかった。


「ながいあいだ盗賊ギルドの首領が誰だがわからなかった。まさか精霊召喚士として冒険者をよそおっていたとは」


 ふぁ~!! だれが盗賊ギルドのボスやねん。

 なにを言うとるんじゃ、このヒゲは。


「よく考えたものだ。銀のバラなどという過激派そしきをつくり、裏から支配する。おのれはいっかいの冒険者ズラをしながらだ」


 つくってない。つくってない。

 おれがつくってるのはジャガイモとニンジン。あとタマネギも。


「宿屋のおかみを要職につけつつも、そのじつ信用はしておらず、ひとじちとして娘をパーティーにいれ監視する」


 ワオ!

 おれ、すっげえ極悪人じゃん。


「あぶなくなったらパーティーを捨て逃亡。すべての罪を部下にきせて、おのれはのうのうとちがう職に就く」


 捨ててねえよ。捨てられたの。


「まちがいはあるか? ないであろう! すべて裏はとれておる」


 そんなワケあるか。一から十までまちがいだらけじゃい。

 しかし、男爵はおのれに酔っているのだろう、まくしたてるように質問をかさねる。


「言え! 精霊をこの世界から奪い、なにをしようとしている!! おまえたち銀のバラの目的とはなんだ!!」


 そこ!? そこにつながるの?

 しらねえよ。むしろ俺がききたいわ。


「あの、男爵さ――」

「いいわけ無用!! 罪状をいいわたす。召喚士エム。国家反逆罪で死刑に処す」


 その瞬間、わきのしげみから何者かがとびだした。

 セバスチャンだ。彼はひも状のものを投げるとどうじに飛びあがった。


「クッ」


 風魔法で見えないシールドをはる。

 あぶなかった。上からおそいかかってくるセバスチャンをなんとかおしどどめた。

 しかし、足になにかがからまった。

 セバスチャンがなげたひもだ。それはどうやら麻をたばねたロープのようで、まるで生き物のようにシュルシュルと地をはうと、あっというまに俺のあしにまとわりついたのだ。


 クソッ、おかしな術をつかいやがって。

 風魔法ですばやくひもを切断。シールドを解除し、セバスチャンの胸をちからまかせにけりとばした。


「ほう、どうしてどうして。貧弱な召喚士にしてはするどい蹴りだ」


 しかし、セバスチャンは空中で一回転すると、なんなく地面にちゃくち。

 胸についた靴跡をパンと手ではらうと、キザなセリフを吐き、たたかうかまえを見せた。

 チッ、きいてねえ。しかも本気になったようだ。

 かまえた手には、いつのまにか短剣がにぎられていた。


「だんなさま。なかなか手強てごおうございます。無傷でとらえるのはむずかしいかと」

「よい。生きてさえいれば腕がもげようが足がちぎれようが、かまわん。どうせしばり首じゃ」


 よくねえよ!

 ぶっそうな連中だな。つきあってられるか。

 土魔法でじめんをうねらせると、自分のからだを跳ね上げた。

 そしてさらに風魔法。強風でより高く、とおくへ押し上げる。


「うお! なんだアイツ。飛びやがった」


 冒険者どものおどろく声を置き去りにして、さらに加速。

 はなれた建物の屋根のうえへとおりたった。


「あんなところまで! 追え」


 包囲網は何重にもしかれていたようだ。

 いたるところで、こちらを見上げる衛兵や冒険者のすがたがみえる。


 つかまるかよ!

 ふたたび飛びあがる。

 風魔法で加速、減速でちゃくちをくりかえし街の入口までたどりつく。

 しかし門は弓で武装した衛兵で、しっかりとかためられていた。


 うそでしょ!

 手際よすぎ!!


「気をつけろ! あいてはただの人間じゃない。放て!」


 衛兵がいっせいに矢を放った。

 それはよこなぐりの雨のように押しよせてくる。


 やべえ、トルネード!!


 暴風がふきあれる。飛んでいる矢をすべてまきあげていく。


「くそ、バケモノだ」

「ひるむな、槍をかまえろ」


 いっしゅん動揺をみせた衛兵だったが、すぐにたちなおり、こちらに穂先をむけてくる。

 攻めてこない。時間かせぎか。ふりかえると追手が迫っていた。


 クソッ、敵しかいねえ。

 ふたたびちょうやくすると塀をとびこえ街の外へ。

 森へとむかい、ひた走る。


「なんだよ。ただの人間じゃないって。あのクソ男爵、どんなオオボラ吹き込みやがった?」




――エムの仕返しリスト――


 元パーティーメンバー

  女剣士

  女盗賊ドローナ

 @戦士ジェイク    完了

  女僧侶


 その他

  宿屋の女将(審議中)

 @ピクシー      完了

  執事セバスチャン

  リール・ド・コモン男爵


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― 新着の感想 ―
[一言] 非力なガキなら普通なら後ろ盾を作るんじゃね?好き勝手できるのは経済を牛耳れる力や物理的に国を相手取れる力がある奴だけだよ。
2021/03/19 08:02 退会済み
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