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第3話 集結と終結のヒーロー(前編)

「ギベオン様。地球外周へ残存メテロルの配備、完了いたしました」

「うむ、そうか。では、そろそろ決着の時だな……」


黒い甲冑に全身の血管を模したかのようなデザイン、所々に散りばめられた黒い宝石、黒地に金の装飾をあしらったマント。ゴーストンの首領ギベオンその人である。


ギベオンはドクロを張り付けたかのような見るものを威圧する面から発した。

「ゴーストン兵の士気はどうだ?」

「これまでの雪辱を果たすべく、かつて無いほどに高まっております!」


「これ以上、地球側に復興させては最後の大攻勢も無為に終わってしまう。ここがギリギリのライン、といったところだ。全軍に通信をつなげ!」

「はっ!」


「聞けい! 同胞よ! ついに地球を我が物とする時が来た! 地球の円周に蔓延るゴミ共を始末した暁には! 地球をダクス=メテオと化し、再び栄華と繁栄をこの手に握るのだ!」


「降り注ぎ! 叩き潰し! 一匹残らず殲滅せよ!」

「我ら幽石族! 『重き』は『思い』! 『意志』は『石』なり!!」




――今また地球にとてつもない危機が迫っていることを地球の誰も知らない……

敢えて目を背けている者達とそれを憂う者達以外は――



コンドウが大怪我を負ったメテロル襲来から3ヶ月の時が過ぎていた。C地区にそれなりの被害を出したとは言え、人々はこの程度の襲来はもはや台風・地震といった災害と同列にみなし、諦めている。被害が最小限に食い止められているのはコウイチロウの活躍ありきなのだが、それを当たり前に享受している人々にとっては近くて遠い出来事なのだ。



「コンドウさん、怪我の跡少し残りましたね…」


両手に資材を山ほど抱えたコウイチロウは申し訳なさそうにコンドウに話しかけた。


「そんな顔すんなって! 多少の怪我は男の勲章よ! 命があっただけめっけもんだ!!」


コンドウは顔や腕の傷をペチペチ叩きながら豪快に言い放った。コウイチロウが駆けつけた時こそ血まみれではあったが骨や神経に達する異常はなかったらしい。


「5人とは言えやっぱ仲間がいないと対処しきれませんよ……」

「5人揃ってることで敵側もそこを狙ってきてたような節がありますしね」


「引退した4人とは連絡取ったりしてんのかい?」

「えぇ……まあ……」

「ヒーローって言っても組織も人間も色々あんだなぁ」


コンドウは大げさに肩をすくめる動作をとった。


「みんな、もう今の生活がありますから」

「でも、ホント。なんか胸騒ぎがするんですよ」

「確かにあの後、メテロルはおろかゴーストン戦闘員すら見かけん。何か悪い事でも起きんといいが……」

「はい。俺は何があっても地球、守りますから」

「そうだな、よしっ、俺の快気祝いと決起を兼ねて、いつものとこ、行くか!もちろん、俺の奢りだ!」

「いいっすね!またご馳走になっちゃいます!」


コウイチロウは、もう悪びれる様子もなく快諾した。



――居酒屋『酒喜しゅき』ここは二人の行きつけの小料理居酒屋である。と同時にここの女将、ミチルはコウイチロウの良き理解者であり、支援者でもあった。


……ツケを認めてくれるだけではあるが。


年齢は本人曰く〈トップシークレット〉らしいがコンドウは「気を付けろ、あの薄化粧、朗らかな笑みからは想像できんがそこそこいってる」…と言ったところで顔面にストレートをもらっていた。


セミロングほどの髪をきつめに後ろで結わえる姿からは女将というより若奥様という表現がしっくりきそうだがその辺りの微妙な表現を誤ったコンドウは腹に肘鉄をもらっていた。


「あら、いらっしゃい。久しぶりに顔見せてくれたわね」

「おうよ! 今日は食って飲んでツケも払って気持ち良く帰るぜ!」

「来たばっかりなのに金と帰りの話なんて相変わらずね」


ミチルはコンドウを睨みつけた後、フッと笑みをこぼした。


「ミチルさん! こんばんは!」

「あら、コウイチロウ君も。元気してた?」

「はいっ! 体が資本ですから! いや、ホント」


「そういえばダイスケ君もたまに来てくれるようになったのよ」

「えっ、ダイスケがですか?」


ミチルの言うダイスケとは、スターブルーことウナバラ ダイスケである。

例の一件以降、病と闘う彼の事をコウイチロウはずっと気にかけていた。


「そうですか。良かった…」

「そうそう。ここはあなた達にとって小さな宿り木。みんな利用していってね」

「ホシザキ! 生でいいか!?」


コンドウが待ちきれない様子で促した。


「……はいっ!」

「よしっ、じゃあ生二つと枝豆! あと、ミチルスペシャルね!」

「はいはい……」


ミチルスペシャルはコンドウ達の為の裏メニューでスタミナのつく具材をふんだんに使った肉料理だ。お値段1200円。




「……でよー、ホシザキ、聞いてるか!? 俺はなー! この酒喜がだいしゅきなんだよー!」


1時間半も飲むとコンドウはこうなる。コウイチロウは時計を見ずともこのセリフで時間を察するのである。


「コンドウさん、仕上がってきましたね!」

ミチルはやれやれと首を振っている。


その時突然、ガラガラと店の扉が開いて真面目とさわやかの間を地でいくようなイケメン好青年が現れた。

「こんばんは……ミチルさん」


「ダイスケ!? ダイスケじゃないか!」

「コウイチロウ!! コウイチロウか!? 何やってんだこんなところで」

「こんなところは余計よ」

ミチルはサッとおしぼりを差し出した。


「俺はバイト終わりでこっちの先輩にくっついてきたんだ!……良かったら一緒に飲んで行かないか? いいですよね? コンドウさん」

「おう! 俺もダイスケ君には興味あるぜ!」

「コウイチロウ。俺なんかをまだ誘ってくれるのか」

「当たり前だろ! さっ、座れよ!」


ダイスケは促されるまま着席した。


「ほとんど生存確認レベルの連絡しか取ってなかったけど、その様子じゃいい傾向なのか?」

「ああ。今は原因のほとんどがなくなってしまったようなもんだしな」


コウイチロウの頭にヒーローを続けている自分の姿がよぎったがすぐに消してしまった。


「実際、すまないとは思ってる。だがどうにも顔を合わせづらくてな……」

「気にすんな。俺もこんな性格だし知らず知らず負担掛けちゃいそうで疎遠になってた」

「ほんとにもう大丈夫なんだ、医者にも週1ぐらいの居酒屋は許可されてる。ただ、戦うとなるとな……臆病な俺を許してくれ」


「まあまあ、お前ら! 再会を祝してパッと飲もう!」

「そうだな……。よしっ、乾杯!」

「ああ、乾杯……!」

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