扉が開くまで
これから不定期で連載させていこうと思います。プロットも何もなくて、主人公が勝手に動き出すのを待って書いていくので、気長に待ってください。
気づいたらそこにいた。
「あれ、ここ何処だよ。」
何が何だかわからないまま、俺は、東九条藤十郎は目を覚ます。
どうやらうつぶせになって体を投げ出していたらしい、肺だったり膝だったりが痛む。
頭を小突いて意識を覚醒させながらゆっくりと体を動かす。
だんだんと寝起きのような霞がかる頭が覚めていき、周りが目に情報として飛び込んできた。
大理石の部屋だった。
何もない、ただ一つ豪奢な扉を除けば。そこそこの大きさがある部屋だったが、いかんせん俺には目算で何畳あるかを測ることなんてできない。まあ一辺が手を広げた俺が3人くらいの正方形の部屋だということは分かった。床も壁も天井も、すべてが大理石でできていて、さすがに圧迫感がありすぎる。それになんだかわからないが、黒と白の模様がやけに主張していて怖く感じる。
3回ほどその場で回り、本当に何もないことを確認する。体重がかかっていたであろう膝がまだ痛むが、扉を開けねばならない気がした。
ほんの数歩歩いて扉に手を当てるが、そこで気づく。
「取っ手がない?」
明らかに取っ手で開ける両開きのドアなのだが、どこにも取っ手が見当たらない。施された金細工は繊細で細く、掴んで引っ張ったり押したりするのには向かないことがわかる。
とりあえず片方の扉に体重をかけて押してみる。が、びくともしない。
さらに指をひっかけられそうな装飾に指をかけ、慎重に引っ張ってみるが、途中で金がほんの少しゆがんだ気がしたのでそれもやめた。
「おかしい、絶対に」
そこでようやく頭が冴えてくる。そもそも何故こんなところにいるのか、誰が、どうして何のために、どうやってこのような場所を用意して俺を連れてきたのか。
すでに頭は起きている。だから直前のことはしっかりと思いだせるし、自身の記憶をなくしているなんてこともない。
俺は東九条藤十郎。さすがに名前で分かるが、名家の生まれ、そこそこの財閥の家の次男。オタク趣味を一度は拗らせ、反抗期もそれなりに過ごし、勉強もそこそこ頑張った。大学にこれから入学ってところまで記憶ははっきりとしている。そしてそこから先に隠された記憶なんてものはないというのも直観だがわかる。入学式前の学生証をもらうのが明日に控えていた。そこで俺も大学生かーなんて思いつつ日がな一日テレビを見て家で過ごしていた。
そして意識がフッと途切れて今この場にいる。
自分のことはここまででいい。大事なのは何故こんなところにいるかだ。
意識が途絶えるその瞬間まで何も聞こえなかった。聞こえていたのはリビングに一人いた俺の呼吸音とテレビから流れてくる下らない時事ネタだけ、それ以外は何もなかった。
いや、でもなんでこの扉が開かないのか?そのことのほうが大事だ。きっとこれは何かのゲームだ、何かに巻き込まれた。それは確かだ。古今東西こんなシチュエーションは誘拐からの脱出ゲームだったりよくある異世界転生ものの最初のシーンだ。間違いない。恐らく後者だろう、さっきから気になって周りを幾度となく見ているが、不思議と部屋に継ぎ目が見えない。それぐらい綺麗に建てられているとかではない。模様に途切れた跡がないのだ。これはおかしい。人の技術でこんなもの綺麗に作ることは可能だろうが絶対にどこかで何かの綻びが出るはずだ。大きな大理石の塊をくりぬいて、扉型の穴を掘り、扉を埋め込むようにつける。可能ではあるだろうが、こんなものすごすぎて話題にならないはずがない。脱出ゲームだとしたら俺の他にも何人かいるはず。それらすべてに生身の人間がこの部屋を用意するとは考えられない。出費がかさみすぎている。つまりこれは何かしら人ではない存在が俺を含めた何人もの人間を呼び出したと考えるほうが筋が通っている。さすがに平時だったらすぐにバカバカしいと思考の隅に追いやるような考えだが、今はこっちのほうが信ぴょう性が高い。何しろテレビを見ていたら突然意識を失ってここにいるんだ。攫われたなんてこともないだろう。そしたらそうと仮定して考えを進める。俺以外にも何人かいるはずだが、こういうのは大抵全員が一か所に集められてそこに神様やらなんやらが登場し、超常のチカラを授かってそこから何処かの国に転移されるのがテンプレというやつだ。しかし俺はいま一人。恐らく向こうとしても本来ならば一か所に集めたほうが効率がいいだろう。しかし一人。一人なのだ、これには絶対に意味がある。一人にしなければない意味が、この際俺一人が特別扱いされていることも考えから外そう。恐らくこの場所に俺を連れてきた者は一か所に人を集めたくない。そのことに不都合があるのだろう。人が集まることによって生まれるメリットが恐らくそいつらにとってはデメリット。それはきっと会話だろう。複数人の人間が集まればそこに会話が必ず生まれる。そこでの個々の意見の情報交換などがデメリットになると仮定すると、なぜ不利益になるのか。気づいてほしくない。何かに気づいてほしくない。違和感に気が付いてほしくないんだ。仮定の話だけれどここまで考えてることが仮に正解だとしたら。部屋にも何か仕掛けがあるはず。早くそれらを調べないtッ!!
ここまで考えて膝に痛みが走って考えが中断される。どうやら熱くなりすぎたらしい。気づいたら壁に手をついてずるずると下がっていたのか、右膝をついていた。うつぶせの姿勢で痛んでたところが押されるとまだ痛むらしい。一瞬で頭の中がクリアになり、ここまで考えていたことはただの仮定であって、何の根拠もないのだということに気が付く。
「ハハッ、何熱くなってんだ」
扉はまだ、開かない。