第6話 狂人誕生
目を開ける。
「なにもない?」
「いえ、時計とカレンダーがありますね」
どこからかさっきの金髪美人の声がした。
後ろを見ると確かにあった
「前ほども言いました通りルリさんは死にませんし、疲れることもないので存分に試練に励んでくださいね」
「えっ、あの、試練の内容は?」
「それではあと5秒後に始まります。頑張ってください!」
なにか明るい声だったはずなのに相手を嗤う雰囲気を感じたのは間違いなのだろうか
グシャ!
「カッ、カヒュッ」
な、なにが起きた。なんで血が出てるの。なんで下半身が正面にあるの。痛い、痛い、いたい、えっ、ほんと、なん、で
「アアァァァァァァァァ~~~~~~~~~!?」
ほんの数秒で体の痛みが消え視線がもとの高さに戻る、
「な、なにが、ゴボッ!」
今度は血を吐く。
「あっ、しゃ、しゃひぇへれはひ」
体が動かない。力が入らない。気持ち悪い。体温が失われる感じがする。意識が薄れ、な、に、が………
意識が覚醒する。そしてすぐに今度は体内から激痛が走る。
「グァァァァァーーーー」
私はガンになったことがある。だがこれはそのときの10倍いや100倍は痛い。そしてまた意識を失う。
その後も体がバラバラにされたり、皮がゆっくりと剥がれたり、マグマの中に放り込まれたり、さまざまな死を体験する
そして2日が経った。
(あっ、また切り刻まれるのか、まだこれはマシなんだよね痛みが長く続かないから)
<………スキル「苦痛耐性」を獲得しました>
少し苦しくなくなった
そして2日が過ぎる。
「っっっ!!」
唇を噛み痛みで全身を貫く鉄の棘を耐える。絶賛アイアンメイデン体験中ーーー。とアホなことを考える。そしたら何とか意識は保てるし。
<………スキル「痛覚耐性」を獲得しました>
それから3日後
私は「痛覚大耐性」「苦痛大耐性」「状態異常耐性」を獲得した。
(これはいつまで続くのだろう………)
何回か、最初の見えないハンマーは避けれるようになったアイアンメイデンや毒、細胞崩壊なんかも状態異常耐性のお陰で耐えれる。マグマの中も本来なら一瞬で溶けるのに10分は泳げるようになった。なのに終わらない。スキルを得たのに死ぬ。死に続ける。終わらない。痛くはない。苦しくもない。なのに終わらない。恐い恐い恐い。どうすればいいの?どうすれば終わるの?助けて!誰か、誰か、誰か私をたすけ、て
感情が恐怖で支配される。心がすり減り、感情の起伏が消えていく
(私は何をしたの?そんな悪いことをした記憶はないのに。試練とかまぐれで抜けただけなのにこんなことなら勘のよさなんていらなかった。異世界転生するためにこんなことするなんておかしい。あの人のせいだ。あの人殺したい。でも殺せないんだろうな。もう嫌だ。早く死にたい。でも死にたくない。あっ、私そういえば死ねないのか。アハハ、アハハハハ)
心の中で壊れたように嗤い続ける。どれくらい嗤っていただろうか。
(アハハハハハハハハ、ハハハ、ハハ、ハッ。 あ、あれなんか楽しくなってきた。もう死ねないんだったらどこまであがけるか挑戦してみよう。たぶん、何回も繰り返したらスキルがもらえるんだろう。なら、マグマを飲みまくろう。巨大な鉄の塊に押し潰される前に持ち上げれるか試してみよう。毒から逃げることができるか試してみよう)
<………スキル「恐怖耐性」を獲得しました>
この瞬間、狂人が誕生した。自分の体がどうなろうと全てがどうなろうと気にすることなく自分がしたいことをし続ける狂人が。