知ってる事、知らない事
「はーい、みんな困っていたら助けてあげてね」ざわつく女子。
(あいつ、あんなにイケメンだったっけ)
「あ、蒼! 久しぶり、まさか同じクラスになれるなんて」
教卓から大きな声で手を振りながらそう言う周。
「木田くんのお友達だったのね。良かった、先生安心。木田くん、学校の事教えてあげてね」
気持ちの整理が追いつかない蒼。まわりの女子からは
「ちょっと私たちに紹介してよ」「合コンのセッティングしてくれない?」
「ま、また今度するよ」
(現代の女子ってやべぇ、あの時代にはいないタイプばかり)
そうして朝のホームルームは終わった。しかし意外にも学校にいる間、周から喋りかけてくることは無かった。
(僕何か嫌われる事したかな)
そう落胆していた放課後。家に帰ろうと教室を出た瞬間、「蒼」と呼び止める周。迷わず周はこう言った。
「お前、恋したことあるか?」
あまりに突拍子もない質問に戸惑う蒼。一呼吸おいて
「小学生の時にも言ったろ、前世は女だったから今は恋の仕方がよく分からないって。男と女の区別をつける前に、人間という一括りにしてしまうんだよ。全員同じ人間、男女の性がよくわからない」
「ふはは、なんだそれ。昔から全然変わらないね」
「周が変わり過ぎたんだ」
「そんな事ないよ」
「そんな事あるっつーの」
「そんな事ないって、まどか」
(⁉︎ なんで僕の前の名前を。名前は教えてないはずなのに)
「なんで過去の名前を知ってるのって顔をしているね、そりゃ知ってるよ。だってお前の元夫だったからな」
「へ?•••」