前世は女、現世は男
ー「あなた、私を愛してくれてありがとう。来世でもあなたと・・・」ー
木田 蒼、最近また前世での記憶を夢で見る。中学一年の同じくらいの時期にも同じことがあった。物心ついた頃から前世の記憶はあった。「またか」と思いつつも再び眠りにつく蒼。「蒼早く起きなさい! 遅刻するわよ」母親の大きな声で今日で高校生活が始まって一ヶ月という事に気がつく。またいつも通りの日常。退屈な毎日。
(前世みたいな愛が欲しいな)
学校生活は至って普通。普通に喋って、普通に笑って、普通に授業を受けている。楽しくないわけではない。ただ物足りなさを感じる。小学四年生の時、一度だけ同じクラスメイトの男の子に前世の記憶を話した事がある。その男の子は蒼の話を最後まで聞くと「この事は誰にも話しちゃダメだよ。僕と蒼だけの秘密。」どこか嬉しそうに話す彼の姿を見た蒼は、それ以来誰にも喋っていないし、喋ろうとも思わなかった。なぜならその話をした一週間後に彼は転校してしまった。「この話を聞いた人はどこかに行ってしまう」そう責任を感じた蒼だった。
(あいつ、今何やってるんだろう。たしか名前は、か、か、からみ)
「はーい、転入生を紹介します。」「加羅嶺 周と申します。よろしくお願いします。」
(はい?・・・)