解説君・取捨選択とカクテルパーティー効果
小野田亜紅は、大学で学ぶ時に、いかに将来横田正太郎と解説君と関わっていけるか?に重きを置いていました。
もちろん、教養部での講義もためになり、面白かったけれど、電子脳と人間の脳を比較した講義などを率先して採りました。
「……このように、人間の脳には、自分に必要な情報だけを沢山の情報の中から取捨選択する機能があります」
助教授は、パーティー会場で雑多な音の中、自分の名前を聞き取る効果を「カクテルパーティー効果」といって黒板に板書しました。
電子機器の普及がめざましいのに、この助教授はチョークで板書するのが常でした。
亜紅は大学ノートにシャープペンシルで書き写しました。自前のノートパソコンに入力する学生とか、あとで板書を写真に撮ったり、講義を録音したりして友だちと話してる学生も混じっています。
ちょっと学生の声がうるさかったけれど、講義する助教授の声を聞き分けて亜紅は受講していました。
「今から或る図を書きます。1分与えますので、記憶してください。電子機器はこれの使用を禁じます」
ええー!?
「今度の試験でこの図を何も見ないで解答用紙に書いて提出してください」
がやがや。そんなことできるの?がやがや…。
板書していく助教授。亜紅はしっかり目で見て記憶しました。
一応その記憶をもとに、あとでノートに書いて何回か記憶できるように対処しました。
「ああ。記憶力のテストだね。ある程度勉強していると記憶するコツがつかめて、そういうのに対処できる人が出てくるんだ」
正太郎が亜紅に言った。
「大学生程度のレベルかな?亜紅ちゃんは自信ある?」
「多分」
「そういえばー、『風邪で寝てました。牛がモウと鳴いてチョウがひらひら飛びました。さて、病気は何でしょう?』」
「何それ?」
「注意力テストのなぞなぞ」
「モウチョウ?!www」
「違うよ」
「わかってる!」
亜紅は楽しかったので、他の人にもこのなぞなぞを試してみました。
さて、答え は何でしょう?
「風邪」です。
「解説君は情報の取捨選択どうやってしているの?」
「ヒ・ミ・ツ」
「もう!」
「いつか教えるよ」
正太郎はそう言ったので、その時が来るまで待っていようと亜紅は思いました。