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白に染まった世界

作者: 仁志龍成

いつから寝ていたのだろう。

ふと目が覚めると、目の前は真っ白だった。

その光景を不思議に思った俺は、身体を起こすと周りを見渡した。

周りには何一つ無く、真っ白で先の全く見えない世界が広がっていた。


ここはいったいなんなんだ……?


寝ぼけているのかと思って、右腕で目をこすり、見直してみたが、その真っ白い光景に変わりはない。

地面も白く、でこぼこの全くない平地のようだ。


そうか、これは夢の中なのか。


俺はそう思うことで現状を受け入れようとした。

もちろん、こんな状況を簡単にすべて受け入れることなんて出来ない。

だから俺は、とりあえず適当に歩いてみる事にした。


360℃真っ白でどこに壁が有るのかも目視出来ない。


しばらく歩くと、薄茶色っぽい(もや)のようなものがいくつか出てきた。

その靄の様なものは、バスケットボールぐらいの大きさで、俺の胸ぐらいの高さにあった。

近づいてみると、わずかに絵か写真のような、そんな影がうっすらと浮かんでいた。

しかし、それが何なのかは全く判別出来ない。

他の靄も同じような状態だった。


靄の様なものをいくつか見ていくうちに、その靄が少し不規則ではあるが、道を示すように配置されていることに気が付いた。


この先に何かあるのか……?


俺は一つ一つ靄を確認しながら先に進んでみた。

辿っていくうちに靄の大きさがだんだん大きくなっているような気がした。


いくつの靄を確認しただろうか。

靄に有った影が少しづつはっきりとしてきた。

どうやら何処かの景色のようだ。

それは、両側に住宅が立ち並ぶ道路のようだった。


これは……


なんだか見覚えがある気がするが、思い出せない。


次の靄には学校のような大きな建物だった。

これにも見覚えがある気がする。

しかしはっきりとは思い出せない。


いくつの同じように見覚えがあるが思い出せない光景が写し出された靄が続くと、遂に靄が途切れた。


これが最後なのか……


最後の靄には、病室らしき部屋のベッドで寝ている青年が写し出されていた。


これはいったい誰なんだ……


思い出せそうで思い出せない。

改めて靄に写し出された光景に目を凝らしたその時、その靄が急にピカッと強い光を放ち始めた。


うわ、眩しい……!


その強い光は、手で目元をガードしながら目を細める俺を飲み込んでいった。


遂にこの真っ白な世界の夢は終わりを告げたようだ。


________________________


いつから寝ていたのだろう。

ふと目が覚めると、見覚えの無い天井が見えた。


ゆっくりと横に顔を向けると、スーツを着た男性とベッドの前で膝をつき俺の手を握っている涙目の女性がいた。

どうやらここは病室のようだ。


よかった……よかった…!

女性はそう呟きながら涙を流し始めた。

男性もどこか安心したような表情を浮かべている。


そして俺はこの二人にこう語りかけた。


「あなた方は、どなたでしょうか……?」


END

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 朧な夢の雰囲気が文章として具現化され、読んでいる自分もその中を彷徨っている感覚を味わえました。
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