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ジャガイモは武器ではありません。

時は流れて、私は七歳になりました。


「セレーネちゃんも素敵なレディーになってね」


と、にこやかに微笑むお母様に言われ、ただ今サイフィスお兄様とダンスの練習中です。

ちなみにお母様は超美人。ウェーブがかった水色の艶やかな髪に、蜂蜜のような金色の瞳。社交界では一部の人(お父様含む)女神と呼ばれてるみたい。お父様談。

ダンスの相手をしてくれてるのは一つ上のお兄様。

お母様と一緒の水色の髪と蜂蜜色の瞳。将来有望そうな可愛い顔。


むにっ

「痛い・・・」

「ごめんなさい」


むぎゅっ

「痛っ!!!」

「ごめっ!」


がつっ!!

「っ!!!!」

「あ・・・」





「なんで、一曲の前半だけで三回も足を踏むんだよ!しかも小指っ!!」


サイフィスお兄様の足を三度踏んだとこで、お兄様がついにキレた。

三回目は思いっきり踏んだらしく、お兄様が足の小指を触りながら涙目になってる。



「ごごごごめんなさいぃぃぃ」


もうね、謝るしかないよね。足の小指は一番の弱点だよね。



「坊っちゃま、たかが小指の一本や二本、我慢なさい!情けない」

「うむ・・・」


ダンスを教えてくれているメイド長のテレサの厳しい言葉に、頷くお兄様。


「お嬢様、焦らずゆっくりとステップを踏みましょう」

「はーい」

「ちょ!テレサ!セレーネに甘くないか?!」

「黙らっしゃい!!」

「う"・・・」


相変わらず、テレサは私に激甘です。


「セレーネに皆は甘すぎる!ずるい!」


と、お兄様はジト目で見てくるけど、もれなくお兄様も私に甘い。


「さて、練習はここまでにしましょう」


「ん?練習しないのか?昼ご飯までまだ時間あるぞ?」

「テレサ、何か用事があるの?」


「旦那様に届けも・・・・」


テレサがハッとした表情になって、慌てて言葉を止めたけど、遅かったよね。


「俺も付いていく!!」


前々から、お父様の職場に行きたがってたお兄様。


「私の一存では分かりかねますので、今回はお留守番をお願いします」


「待て!テレサ!!」


サッと部屋を出て行くテレサと、追いかけるお兄様。

どうせ、テレサにあしらわれて戻って来るだろうけど・・・。戻ってきたお兄様、機嫌悪いだろうなぁ。


今日は、お父様はお仕事でお母様はお茶会。リュリアスお兄様と双子のお姉様達は学校だから、お昼ご飯はおサイフィス兄様と二人きり。

気まずいのは、嫌だなぁ・・・?





ん・・・?





窓の方を見ると、大きい犬の様な白いモコモコした生き物が、窓枠に手を乗せてこちらを見ている。


「誰??」


不思議と恐怖を感じない白いモコモコ。お父様くらいの大きさ。


《良い天気だな》


「良い天気だね」


白いモコモコが喋った!!内心驚きでビビってるけども、お母様から素敵なレディーはいかなるときも平常心って言われてるから、なるべく平常心を心がける。


《ふむ。娘よ、我の言葉がわかるか?》


「うん。普通にわかるよ?」


《そうか。なれば娘は"我が主"の待ち人か?》


「誰のこと?わからないわ」


白いモコモコは、うむ、と何か考えている。


「中にはいる?」


ぴょんと窓枠を越えて、白いモコモコは目の前に来た。

あ・・・なんだか、懐かしい匂いがする。

思わず抱きしめた。とても手触りのいいモコモコ。


「お日様の匂い」


首筋に顔をあて、たらふくクンクン匂いをかいで我に返った。


「あ!いきなりごめんなさい!!」

 

《良い。それよ-「魔物?!セレーネから離れろ!!!」


テレサにあしらわれたお兄様が部屋に戻ってきたと同時に、驚愕な顔をして素早い動きで私を白いモコモコから引き離した。



「魔物なの?」


《我は魔物ではない》


モコモコの尻尾を優雅に振る。


「ルーク!!屋敷に魔物がいるぞ!ルーク!!」


私を抱き締めなから、お兄様が叫ぶ。

すぐさま、ルークにメイドやコックまで駆けつけてきて、私達を守る様に白いモコモコとの間に立ちはだかった。

コックさん、コーンが一粒付いたお玉を持っている。あ、お昼はコーンポタージュですね、コーンと匂いでわかります。


「サイフィス様、セレーネ様、下がってください!」


皆が私達の前に立った。


《貴様ら・・・その手に持っている物で、我に敵うとでも思っておるのか?》


皆の持ってるモノを見た。

お玉のコック他、フライパンとフライ返しを持ったコックはまだマシだ。

お手伝いをしていたであろうメイド。なぜ、両手に皮をむいたジャガイモを握りしめている。皮をむいた包丁どうしたよ。

そしてルーク。掃除してたのか、はたきを持っている。

現在、コックがまだましな武器だ。


「ジャガイモ・・・」

《ジャガイモ・・・》


白いモコモコさんもお兄様も、ジャガイモを見ている。

目立つよね、ジャガイモ。投げるしかできないよ。しかも二回だけ。


《娘よ。我は誰にも危害を加えるつもりはないと伝えてはくれぬか?》


「わかった。皆、白いモコモコさんは、なにもしないよ。武器?をおろして」


皆が振り返り私を見る。


「それにお兄様。魔物ではないと言ってるわ」


皆が固まった。


「セレーネ、あの魔物の言葉が分かるのか?」


「え?お兄様、わからないの?皆は?」


「私共にも、あの者の唸り声は聞こえますが、それ以外は何も」


代表してルークが答えてくれた。他の皆も同じ様に頷いている。


「私にしか聞こえないの?」


《そうであろう。我が主なら人間と話せる様だが、我はまだ話せぬ。我と会話が出来る娘は特別なのだ》


「特別・・・・」


《我らは主から、我らと会話出来る"待ち人"を守るように言われてきた。娘が"待ち人"であるか分かるまで、そなたの側にいてもいいだろうか》


「私が待ち人さんだったら?」


《その場合は、主に会ってもらう。もしそうでなければ、我は去ろう。どうだ?》


「うーん。お父様に聞いてみないとわからないわ」


《なれば、そのお父様とやらに、今すぐ聞きに行こう!我の背中に乗るが良い》


「わかった!」


お兄様の腕から抜けて、白いモコモコさんに近づいて行こうとすると、慌てたお兄様に腕を捕まれた。


「何と言っていたのだ?それに近づいたら危ない!」


「んーと。お父様に、お家で白いモコモコさんと一緒にいていいか聞きに行くの!お兄様もお父様の職場に行く?モコモコさん、お兄様もいい?」


《娘が一緒ならば問題ない。走ったり飛んだりするから、落ちないようにしっかり掴まるのだぞ》


「わかった!ほらお兄様、背中に乗るよ!しっかり掴まってだって」


「え?は??」


お兄様の腕を引っ張って、モコモコさんの、上に乗った。そして、窓枠を飛び越え、庭に出た。

スピードを上げ、屋敷を囲む塀の上に飛び乗り、外の世界へ。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


お兄様の叫び声が響き渡り、その声に屋敷の皆が我に返ったみたい。


「お嬢様?!!!」

「旦那様に連絡を!!」


我が家のパニックに目をそらしつつ、目の前に広がる光景にわくわくする私でした。

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