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プロローグ

1話から先に読んで、気が向いたタイミングで読むと楽しいかも知れません。

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「テストテスト。うん、いけるな。」

男は少しばかり遠回りな手順で文字を綴る。


「私の名前はネオ・フォー・アンダー -Neo 4 Under-

この文章は2000年代の地球人に宛てている。これは私たち地球人がこの宇宙で永遠になるためのささやかなアドバイスだ。率直に言おう。」


ネオは少し間を空ける。その緊張を感じるかのように代理人はベリーソーダを少しだけ口に含んだ。



「君たちの時代から5億年後、地球人は滅亡する。」



「君たちも知っているように今住んでいる地球は永遠ではない。遠い未来、太陽の膨張によって位置関係を崩した地球は生物が居住できる環境を維持できなくなる。当然、私たちは地球からの旅立ちを余儀なくされた。」


それからネオが話したのは、人類の技術開発の歴史だった。

人類が恒星間航行を目指したこと、その宇宙船の開発に成功したこと、エネルギーや疑似環境の構築も可能になったこと、あらゆる元素を合成できるようになったこと、実際に恒星間航行を行ったこと。



そして現在、資源の枯渇により滅亡を余儀なくされたこと。



「私たちは元素の合成技術によってあらゆる物質を作れるようにはなった。でも、合成するにも元となる元素をどこからか採取しなければならない。宇宙空間のガスや惑星から採取すれば問題ないはずだった。でもある時からガスの濃度が急激に下がり始めた。本来この現象は別の銀河の干渉で起こるはずだが、銀河の接近は観測されていなかった。」


代理人はそろそろ疲れているが、ネオは構わず続ける。


「となると原因はもう一つ。君たちも名前は知っているだろう。そう、ダークマターだ。これは私たちの時代にも存在している。いくつか解明されて名前がつけられたものもあるが、それでも全てが分かったわけではない。現状の物理学を平気で無視してくるこのダークマターによって、我々の銀河系のガス濃度は急激に下がっていった。ガスを燃料とする恒星は核融合ができず、その役目を終える。光は消え、恒星の引力がなくなることで惑星は周回軌道から離脱していく。」


「銀河の終わりだ。」


さらにこうも付け加えた。

「あまりにも早すぎる、な。」


「本来なら銀河系の消滅はまだ30億年ほど先の話だ。私たちはそれまでに銀河間航行の技術を確立する予定だった。それによって我々人類はこの宇宙で永遠の種族となるはずだったが・・・」


「私たちは失敗した。だから生き残ることができなかった。多くの人間は生きることを諦めた。私も半分は諦めている。それでも、最後の悪あがきでこのメッセージを残している。」


ようやく本題に入れるのか、ネオはどこか喜々としているようにも見える。

同じ人類とは言え、4億年以上も前の文明に事の顛末を伝える言葉を考えるのはそれなりに骨の折れる作業だったのだろう。


「実は私たちにはもう一つの生き残る道があった。そもそも今回の失敗の原因は人類がこの物質世界に踏みとどまろうとしたことが原因だと私は思っている。物質があるからそれを維持したり、直したりするのにまた物質が必要になる。物質があるから壊れたり劣化したする。どんなに強固な物質でも、ある程度の期間で替えは必要となる。永遠などありはしない。」


また少し、声が高揚する。


「なら物質を持たなければどうか。私たち人類が物質を持たない、必要としない生命体なら永遠となり得るのではないか。食事は必要ない、病気も怪我もない、外気から身を守る家も衣服もいらない、犯罪の心配もない。領土も資源も必要とせず、自由にそして永遠に生き続けることができるのではないか。

実際、私たちの中でそう考える者は少なくなかった。こちらの時代ではブレインアップロードによって、意識を電子端末に移して電子生命体となっている者が8割を越えているのがその証拠だ。だが、彼らもまた私たちと同じ運命にある。人の身体を捨てた彼らには寿命は存在しない。その代わり、彼らには別のリスクが付きまとう。電子生命体は言わばデータの塊。データである以上、何かしらのハードウェアに保存されている。つまり保存されているハードウェアが機能を停止すれば電子生命体は消滅してしまう。普通の人間よりは多少長く生きるだろうが、エネルギーの補給手段を失った以上タイムリミットはすぐそこまで迫っている。」


ネオは少し落ち着きを取り戻す。それと同時に代理人はカヌレを口に運ぶ。外はカリカリ、中はしっとり。



「前置きが長くなってしまったが、つまりはこうだ。人類が目指すべき生命の在り方はあらゆる環境で生きていける強固な生命体ではなく、端末内のデータとして生きる電子生命体でもない。あらゆる物質を必要としない精神生命体だ。」



「そのための開発が進んだ時期もあったが、相次ぐ失敗とオカルト的な研究題目のせいで周囲からの圧力が強まり、表立って研究することは出来なくなった。それが君たちの時代から少しばかり先の話だ。思えば、その時点で私たちの結末は決まっていたのかもしれない。だから君たちには違う未来に進んで欲しい。ブレインアップロードと電脳化、そしてそのメモリーをハードウェアなど物質以外のもの定着させる技術。君たちにはその開発を推し進め、継続できる社会を作ってほしい。あと、君たちの時代で盛んになっているVR技術。それは電脳化された後の世界を構築するのにほとんどそのまま流用できるから、開発を続けるといい。今の段階なら宇宙開発もまだ続けるべきだが、いつかは我々のように限界を迎えることになる。難しいかも知れないが精神生命体、言い方を変えると高次元生命体へ移行するための研究開発を徐々にメインにしていくべきだ。何度も言うけど、そうしないと我々は生き残れないだろう。」


代理人はカヌレの最後の一欠片を頬張る。ベリーソーダは疾うの昔になくなっていた。


「さて、長々と話を聞いてくれてありがとう。私はそろそろ友人たちとの最後の晩餐に向かうことにする。このメッセージを見て、動き出してくれる人がいることを願う。」



「「人類は永遠と共にあり。」」

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