白いポピーと真っ赤な…(中編)
今回は長めです(´>ω∂`)☆
――――ロスside――――
毛布にくるまったまま起きる気配の無いヒナを部屋に置き去りにして、僕は宿屋の外でセルヴァンテスの見送りをしていた。
「明日の早朝にこの村の広場でよろしかったかな?」
「あぁ、装備をしっかり整えてくるのを忘れるなよ?」
「わかっておる。…ロス殿の言う危険な方法がどんなものか見当もつかないが孫の為だ、きちんと整えるさ。」
僕のちょっと複雑そうな顔に気付かなかったのだろう…。嬉しそうな顔をしてセルヴァンテスは立ち去っていった。
「絵を描くのはもう少し先になりそうだよ…ルフ。」
一人、ぽつりと呟いた…。
――――ヒナside――――
「お…ろ……!」
(なんだろう?知らない声がする…。)
「…き…ヒナ!!」
(あれ?もしかして私の名前呼んでる??でも、一体誰が…??)
「お…ろ、ヒナ!!」
(え?誰??一体誰が私を呼んでるの??)
私は恐る恐る目を開けた…。
「起きろ、ヒナ!!」
(男の…人?はっ…?!襲われる!?)
気付いた瞬間、布団をガバッと蹴りあげ…その勢いを使って懐に忍ばせておいたナイフを取り出し、目の前の男の人に突き付ける。相手は驚いた様子で言った。
「寝起きでその条件反射とか…男は皆危ないんだってきちんと親から教えて貰ってたんだな。」
と、苦笑いで言ってきた…。
(ん?赤髪で、灰色の帽子で黄色の目??もしかして…?)
「し…しょう…?」
ナイフを突き付けたまま私は呟く。
「寝起きでもそこは変わらないのな」
そのままの状態で頭をポンポンしてくる。子供扱いされてる気がするけれど…とムスッとしている私を見て、困った顔で降参とでも言うかのように両手をあげた。
「あー…。ついさっきもな?セルヴァンテスさんが帰るから起こそうとしたんだけどな?ヒナが起きなかったから…とりあえずそれだけ報告しようと思ってな…?」
聞いてもいないのに目を逸らしつつ言い訳を言う師匠。何故なのか??
「まぁ、出会ってすぐのやつと宿屋の同室に泊まるぐらいだから本当に大丈夫なのか心配してたけど…危機意識はきちんと働いてるっぽくて良かったよ。でもな?とりあえずそれどうにかしてくれないか?」
言われて気付く。多分、師匠が1度起こそうとしてくれた後だろうと思われる。寝惚けて服を脱いだのだろう…。水色の下着が見えている…。
「あ…あぁ…。」
恥ずかしさで何も言えない私…。きっと、私がナイフ突き付けた瞬間から見えていたのだろう…。そして、師匠はそれを見ないようにしてくれていたのだろう…が、それでもこう言わずには居られなかった。
「し、師匠の変態!!!」
私の渾身の右ストレートが師匠の顔面に当たった…。
――――ロスside――――
「…まぁ、そういうわけで…早朝街の広場に集合して出発するから、きちんと準備して寝ろよ?」
未だに痛む鼻の頭を擦りながら僕は言った。
(これなら、魔力の使い方とか教えなくても良くね?)そう思うほどの右ストレートだった…。
「は、はい…。あの、師匠…先程はすみませんでした…。」
僕を殴った罪悪感からだろうか?ヒナはベッドの上で正座してしょげていた。
「そんなにしょげるなよ…。誰だって寝起きで目の前に人が居て、下着姿見られたらそうなるからさ?あー…拳をこちらに向けるのやめて??」
顔を真っ赤にしながら拳をこちらに向け、睨み付けているヒナに言った。そう言っても、無言で睨み付け続けるヒナに僕は、
「わかった。わかったからさ?もうこの件触れないから…機嫌直してくれるかな??」
言いつつ、右掌からハシバミの花を咲かせる。困惑した様子のヒナが、
「なんですか…?この、花??なのかよくわからないもの…。」
「ハシバミって言うんだけどさ、花言葉がね?『仲直り』『和解』『調和』『一致』『正義』『賢明』『平和』『知恵』…まぁ、仲直りって意味で使われてるんだ。だからその…意図的に見たつもりは無いんだけどさ?ごめんね??」
そう言うと、何故か頬が赤くなっているヒナは、
「師匠がそう言うなら…まぁ…今回は…。」
よくわからないが、小声で何か言っていた。
「も、もう寝ます!!おやすみなさい!!師匠!!」
突然大声出されてびっくりした僕を置いて、ヒナはそのまま布団に潜り込んでしまった…。
「う、うん…おやすみヒナ。また明日な?」
とりあえず、僕はそう言うしかなかった。
〜〜早朝〜〜
僕らはアネモーヌ村の広場に集まっていた。
「ロス殿、ワシらは一体どこに行くんですかな?」
「あぁ、麻痺病を治すには彼女の力を借りるしかないからな…エルフの王国へ行く。」
二人とも、へぇ〜…そうかと言う風に頷いていたが、僕の言った事をようやく理解したのか…。
「え?!師匠??もしかしてあのエルフの王国ですか?!」
「いやいや、いくらなんでも…人間が立ち入ることは出来ないはずだが??」
「二人ともシーッ!!他の人に聞かれたらめんどくさいでしょうが!!」
「いや…だって、あのエルフの王国なんですよね??美しいエルフの女王がいるっていう…??」
「まぁ…そうだね。エルメッタの事美しいって思うかどうかはその人次第だけどな…。」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!!ロス殿はエルフの女王を呼び捨てする程の仲なのか?!」
「あーもう!!良いからさっさと出発するぞ!!」
僕は二人を強引に引っ張って村の外にあるとある森へ向けて歩き出した…。
三人が村の外へ向かって行くのを見ていた者が居た事を知るのはもう少し後の事である。
本当はもう少しギュッと詰め込んだり、酒場での会話とか入れたりとかしてみたかったんですけど…まぁ、いつか出しますw
皆さん、良い年を!!(遅い)