宿屋と傭兵とアンズの花
前回回収し損なったヒナの荷物を回収して、宿屋に着いてからの話です
更新亀以上に遅くてすみません…
――――ロスside――――
「や、やっと宿に着いた…」
言いながら、ぐったりした表情で質素なベッドに倒れ込んだ…。
「村人の方達…凄く師匠に感謝してて、我先にと泊めようとしてましたからね…。」
と、同じくぐったりした表情のヒナが答える。
「しかも、僕が魔法士だと知った瞬間の質問攻め…あれはやばかった…。」
(村人だけでなく、観光客までも魔法士について知りたくて囲まれ…いや、これ以上思い出すのはやめておこう…。)
そう、身震いしながら思った。そんな僕の様子を見て、何を思ったのか察したらしく…ヒナも少し青ざめた顔で頷いた。
不意に、部屋にノックの音が響く。僕はすぐさま起き上がり、何かあったらヒナを守れる位置に移動した。
「どうぞ。」
自分で思ったより低い声が出た。扉が開く…。
現れたのは、森の中で出会った傭兵だった。いや、魔力でわかっていたけどさ?違う人だといいなと期待したくなるじゃん?
僕の心情を知ってか知らずか…傭兵は言った。
「休息中すまない…儂の名前は、セルヴァンテス。傭兵をしておる。お主が『ロス』という者か?」
――――ヒナside――――
師匠と共に、村人や観光客から質問攻めに会い…ようやく休めると宿屋でぐったりしていたら、突如やってきた傭兵が、師匠の後ろに隠れている私に向かって言った。
「お主が『ロス』」という者か?」と。
私が違うと否定しようと口を開いた瞬間、師匠が
「俺がロスだが?」
普段より低く…相手を威嚇するような声で答えた。傭兵は少し驚いた顔をしながら、
「そうか、それはすまなかった…。てっきり竜を乗りこなしていたそちらのお嬢さんが、この村で噂になっている『ロス』という魔法士だと思ったのだ…。」
私は、
「いえ、大丈夫ですよ。」
と、声が震えないように気を付けながら言った。凄い気迫?のようなもので圧を感じたからだ…。怖くて思わず師匠の服の裾を掴む。傭兵に怯えている私に気付いた師匠が言った。
「それで?俺に何か用か?セルヴァンテスさんよ。」
声は低いままだった…。
(師匠…この人と以前何かあったのかな?でも、師匠が話してくれるまできっと教えてもらえないよね…。)
この手を離したら、師匠が消えてしまいそうで…私は師匠の左手の小指をそっと握りしめた。
部屋の隅にある机の上でアンズの花が小さく揺れていた。
リアルが少し忙しいので、次回はいつ投稿出来るのかわかりません…
アンズの花言葉は 「疑惑、疑い」です。