ロスフィルド・リーデロットの決意
今回はエピローグで語った物語の当事者の話です
ちょっと暗めの内容なので苦手だなと感じたら速攻逃げてください
(ここは…どこだろうか…?僕は何をしていたんだっけ…??)
身体を動かそうとしているのに動けない…瞼も重く開くことすら出来ない。
近くから声が聞こえた。
「なんで…なんでお前なんだよ!!ロスフィルド!!」
(この声は、ルフ?ルフの声…??どうして泣いてるの??)
そう、この声の主は…ロスフィルド・リーデロット(以下愛称でロス)の兄であるルフ。
つまり、現在の神竜である…ルフェン・リーデロットの声である。
困惑しているロスを置いてルフは続ける。
「麻痺病だからってお前が……に選ばれるなんてふざけてる!!こんな…こんな世界なんて生きている意味が無い!!ロス…やっぱり人間は自己中心的な酷い生き物じゃないか…願いを叶える為なら他者を犠牲にしてもいいとか思ってる奴らだったろ?」
『違う!!』そう声に出して否定したかったが、口が思うように動かなかった。
(どうして?こんなにも伝えたい事があるのに…?)
手を伸ばして近くにいるであろう兄に触れようとしても触れられず、以前のように楽しく会話をしたいのに話せない…。何故泣いているのかわからないけれど、抱きしめて大丈夫だと伝えたいのにうごけない。悲しいのに涙が出ず、表情筋が固まっている。
「俺は…一体どうしたら…」
兄が辛く悲しんでいるのに何もしてあげられなくて、もどかしい…どうして自分の身体は言う事を聞いてくれないのだろうか…?
ふと、ロスは思い出した…あの身体の末端から感覚が徐々に消えていったあの感覚がなくなっていることに。
(あぁ…そうか、僕は死んだのか)
ロスは理解した、何故ルフが泣いているのか
どうして自分の身体は動けないのか、全く話せないのか…。
理由は簡単だった…そう、ロスが既に死んでいたからだった。
死んだ理由も…もうわかっていた。
村人達から、神竜に願いを叶えてもらう為の生贄として捧げられたのだ。
怖くはなかった…と言えば嘘になってしまうが、それで人間達が幸せになってくれるのなら別に自分がどうなっても構わなかった。
しかし、生贄として捧げられる前に麻痺病で身体が麻痺して死んでしまったらしい…急に視界がフェードアウトしたからきっとそうだ…。
けれど、ルフは違った…人間達が自らの欲望の為にロスを殺したと思っていた。
だからだろう…今人々の泣き叫ぶ声や恐怖の感情などが手に取るように伝わってくる。
(ルフ…もう、もうやめて!!)
やはり想いは言葉にならなかった…。
しばらく経つと物音がしなくなった。静寂が辺りを包み込む…。と、不意にルフが…
「ロス…仇取ったぞ…もう安心して眠れるだろ?これで俺も…」
そう声が聞こえたと思った次の瞬間…ドスッと鈍い音が響いて何かが倒れる音がした。
次話は続きなので…暗めな話になります