嘘つきな悪魔
嘘つきな悪魔
あら、こんな薄暗い森に何の御用かしら?
もしかしてあなたも目が見えないの?あ、見えてるのね。
へぇ、昔話を聞きに来たのね?
でも、こんなところまで来るなんて変わり者な子なのね。
まぁいいわ、話してあげる。
嘘つきで中途半端な悪魔のお話。あなたに話してあげる。
………
……
…
ある日、とある森にまだ幼い王子様が訪れました。
その、王子様は盲目の呪いを掛けられていました。
そして、その盲目の呪いはとある森で採れる花でしか治すことはできません。
でもね、その森にはそれはそれは優しい嘘つきの悪魔がいるのよ。
自分が悪魔であることを嫌った中途半端な悪魔。自らを人間だと騙る嘘つきな悪魔。
でも、夜になると正気を失いすべてを壊して回る。おぞましい悪魔。
そして、悪魔はたまたま森に入ろうとする王子を見つけてしまいます。
しかし、王子は自分の方を向いても自分に気づく素振りすらありません。
悪魔が王子の目が見えないということに気づくまで、さほど時間はかかりませんでした
悪魔は王子の目が見えないことをとても喜びました。
自分の姿が見えないから。彼女の本当の姿を見られることがないから。
悪魔は王子に忠告します。この森は危険だと。
ですが、王子は森の奥が危険だと悪魔に言われても先に進もうとします。
それでも、目が見えないからあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
悪魔は見かねて王子を森の奥まで案内しようとします。
見た目を王子と同じくらいの年の少女のようにして、声をかわいらしくして。
王子様が転ばないよう、手をつないで。
森が夜の帳に包まれる前に。自分が正気である内に
途中、途中、途中、森を進む間、いろいろなことがありました。
木は行く手を遮り、獣は二人を襲い、霧が二人を惑わしました。
そのすべてを悪魔は時には元の姿に戻り、壊し、殺して、かき乱し、王子様に気づかれないように、騙りながら、進みました。
そして、二人は目を治す花のもとにたどり着きました。
この花の蜜を垂らすと王子の目はたちまち見えるようになりました。
王子は歓喜の声を上げます。それと同時に悪魔にお礼を言います。
ありがとう、ありがとう。本当にありがとう。
ですが、その時には森はすっかり夜に包まれようとしていました。
焦って悪魔は言います。逃げて、私はもう、私じゃなくなってしまうから。
夜が近づくにつれ、悪魔は苦しみ、抵抗します。
目を治した王子はもうほとんど元の姿に戻っている悪魔を見て言います。
「あなたは悪魔なのですね。少し、驚きました。」
とただ、その一言しか言いませんでした
王子の言葉に悪魔は一瞬苦しさを忘れました
「なんで…?私を見ても怖がらないの?」
王子は笑いながら
「怖い?だって君は僕を助けてくれたよね?」
そういって王子は腰のポーチから小瓶を取り出します。
「森の中には悪魔を嫌う悪魔が花を守っている。なんて話を聞いて持ってきたんだけど…」
「これは、自分から一つの要素を消し去る薬。」
「君が自分の中途半端な『悪魔』を捨てたいと思うのならば、君の中の『人間』はきっと本物になれる」
―君は、『悪魔』を捨てられる?―
悪魔は恐る恐る薬を飲みます。激痛が悪魔を襲います。
自分が消えていく感覚に、悪魔は悶え苦しみます。
それから、三日三晩にわたって森からは苦しげな声が聞こえてきたそうよ。
王子は悪魔の結末を見届けたあと、見えるようになった目で森を出たんですって。
それからしばらくして大きくなった王子は王様へとなりましたとさ。
それが、今のこの国の王様の話。
悪魔がどうなったかって?それはほとんどの人が知らないのよ。
悪魔の最期を知っているのは悪魔の最後を見届けた王様だけなのよ。あとは悪魔本人かしら?
だから、王様に会いに行けるぐらい偉い人になるといいわ
きっと王様は教えてくれるはずよ。
嘘つきな悪魔について
〟元〝悪魔は語り言う




