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〜第8話〜パルス様の勇者としての戦いはこれからです(第1部完)

「やーーーーー!!」


 タバサはナイフでの攻撃を連続して見舞う。

 エンヴィードはそれを剣の背で受ける。その顔は涼しげだ。


「やりますわね。私の【ナイフ闘舞】を受け続けるなんて」


「【ナイフ闘舞】?」


「わたくしの使っている殺法の名前です」


「へぇー、君、そんな流派に属していたんだ?」


「いえ、自分で考えましたわ」


「え?」


「わたくしはパルス様をお守りするために独学でナイフ殺法を学び、ひとり夜な夜な訓練を続けて参りました。もちろんパルス様には秘密です。パルス様がこのことを知ったら『危ないからやめたほうがいいよ』と言うに決まっています。そんなわけでできたのが【ナイフ闘舞】なのです」


「君、結構努力家なんだねえ」


「ふふ、褒めても私はパルス様以外は好きになりませんわよ」


「いや、別にいいけど」


「ふふ、というわけで【ナイフ闘舞】ビート2」


「え?」


 タバサの脚はステップを踏み出す。そして両手に持ったナイフを連続してくり出していく。そのスピードは先ほどよりも数倍速い。

 さっきは余裕そうな顔だったエンヴィードも、今度は額に汗が浮かぶ。


「【ナイフ闘舞】ビート3」


 さらにタバサのナイフのスピードが上がる。エンヴィードの剣がその速さに対応できなくなる。

 とうとうその刃が、エンヴィードの首すじに刺さろうとしていた。


「【ボルム】」


 エンヴィードは叫び、そして彼の身体が白い光に包まれる。

 構わず振り下ろされたタバサのナイフ。

 しかし、ガキンという金属音とともに返された。


「なっ!!」


 エンヴィードの全身は白銀の鎧に包まれており、首筋もふくめて、素肌がすべてコーティングされていた。


「装甲魔法。そんなものが使えたのですね」


「まさか、選考会で使うとは思ってもみなかった」


 エンヴィードは静かに言った。



◇◇◇



 タバサが再びナイフを持って斬りかかる。

 エンヴィードの鋼の装甲がそれをはね返した。


「……何て硬さ……」


 タバサは身をよじる。


「本当に、選考会で、しかも勇者候補でもない女の子相手に使うとは思ってもみなかったけど」


「ええいっ」


 タバサは構わずひたすらエンヴィードの装甲にナイフを浴びせる。そしてしばらく浴びせたあとに離れて息をついた。


「……どうやら、このままではらちがあきませんわね」


「あのさぁ、さっきからひっそりと撒いている毒も僕には通用しないよ」


「……ふふ、気づいてましたの」


 タバサは笑いながら懐の毒の袋をきゅっと縛る。


「そろそろ観念して外に出ない?このままやり続けるなら、僕は君を殺すよ」


 エンヴィードは言う。


「ふふ、そのまま、そのセリフ返しますわ」


「ほんとバカだね君」


 エンヴィードは剣を振り上げた。


「ふふ……【ナイフ闘舞】ビート4」


「え?」


 タバサが竜巻のようなステップを踏む。そして黄金色に輝くナイフの斬撃を繰り出す。

 片方のナイフが、エンヴィードの装甲にめり込む。


「何?」


 無敵の装甲がタバサのナイフによって切り取られた。

 もう一方のナイフがエンヴィードの首筋に迫った。


「タバサっ!!」


「……っ!?」


 タバサはさっとナイフをしまい、すました顔をした。

 彼女の目線の先にはパルスがいた。


「パルス様、気がつかれたのですね」


 タバサは先ほどまでの戦いがなかったかのように、にっこりと微笑みかける。


「えーっと、僕はあの三兄弟の人と戦うことになって……、で、突然殴られて……、で……、あっ、タバサ、無事だった?」


「ふふ、大丈夫ですわ。パルス様が心配してくださるなんて、幸せですわ」


「で、あの、そこにいるカッコイイ鎧は?」


 さっきからエンヴィードはあきれて立ちつくしている。


「ああ、エンヴィード様ですわ。彼は装甲魔法を使い、戦っていたのですわ」


「……誰と?」


「ふふ、誰ですかね」


 タバサはとぼけた。


「あのおタバサ」


「パルス様、まだ何か?」


「あの、砂時計……」


「砂時計がどうかしましたか?」


「砂、落ちかけている」


「え?」


「砂が、もうすぐ全部落ちてしまう」


「……ああっ!!」


 タバサはその顔色が真っ青になった。パルスの言う通りいつのまにか【爆黄砂】がすべて下に落ちかけている。

 このままでは皆爆死してしまう。

 タバサはすぐにエンヴィードを殺して外に出そうと考えたが、パルスの見ている前ではそんなことはできない。

 観念して言った。


「パルス様、わたくしは外に出ます」


「……タバサ」


「パルス様、ぜひ勇者としてこの世界をお救いくださいませ」


「……タバサ、ありがとう。これもすべて君のおかげだよ」


「そんなことはありません。すべてパルス様の実力です」


 そう言ってタバサは扉を出た。

 ぐるんと回転する砂時計。

 しばらくしてフリードが手を叩きながら部屋に入ってきた。


「おめでとう。君たちは新たなるヤオル王国の勇者だ」


 そうフリードはパルスとエンヴィードに告げた。



◇◇◇



 王から勇者のマントを受け取り、パルスとエンヴィードは旅に出た。

 そこは、魔王の城がある暗黒の大陸。

 ふたりは上陸してすぐにモンスターたちに囲まれた。

 モンスターたちは牙を剥き、パルスとエンヴィードに襲いかかろうとする。

 が、程なくして、すぐに彼らは倒れた。


「ふふ、パルス様に手を出す者は容赦しませんわ」


 そこには、にっこりと笑い、魔物だけに効く神経毒を散布していたタバサがいた。


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