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第九話 束の間の平穏

第九話でっす。読んでやってください。

雪人が慧智者以外の誰かと会話している…だと?(猫被ってるけどw)

 雪人はキレていた。

「自分のやさしさは打算的なもので本心ではない」そう自分に言い聞かせてきた。

幼いながらに、優しいだけの自分を忌避し自分の利益になることを増やすための手段として優しさを振る舞っていた。しかし、子を奪われたラッビアベアの親に同情し自分から子を自然に帰すと誓ってしまった。それはあの日、翔を無性で庇った自分の行為と同じだ。つまりはこれまで忌避していた優しかった自分は何も変わっておらず、自分の根本は優しいままだったことを自覚させられた、見つめ直させられた。


「くそっ」


子を攫ったであろう奴らが集まっている場所へと向かう。怒りに震え握った拳を血で滲ませながら。

奴らのいる場所へと残り数分といったところで足を止める。心に仮面をかぶる、この心火を悟らせないように。そして一人として逃がすことのないように、ゆっくりと偶然を装って近づいて行く。すると木の杭を連ねて柵のように囲った拠点のような場所が見えてきた。好都合だ、わざわざ一から囲うものを作る必要がなくなった。慧智者にこの柵の面積や形を把握しておくように指示を出しておき、エノルムボアの死体を引きずりながら近づいていく。


「止まれ!ここは俺たちが拠点にしている」


櫓のような場所から見張りに声を掛けられる。


「私は森の奥にずっと住んでいた者です。死んだ両親の遺言に従って森を出ようとおもったのですが如何せん住んでいたところから離れたことがないため迷っていしまいまして、歩き回っていたところこちらに見えた篝火を頼ってきたところです。こちらの猪をと引き換えにどうか一晩ここに止めてはくれないでしょうか?」


「ちょっと待ってろ」


見張りは少し考えた後、そういって奥へと消えていった。俺が考えている通りの集団ならまさにカモがネギしょってきた、そんなふうに思ってるんだろうな。身元のばれる心配もなく、エノルムボアを倒し引きずって歩くような力のある者それでいてまだ若い、労働力として最高の素材だろう。そんなことを考えているうちに見張りが帰ってきたようだ。


「入ってもいいそうだ、歓迎しよう。親方が直接お会いになるそうだ、よかったな」


「ありがとうございます」


門が開き、男についてくるように言われた。親方とやらの場所まで案内してくれるしい。案内されるがままについて行っていると遠くの方に檻のようなものが見えそこにはこの森で捕まえたであろう魔物が収容されていた。それを見て驚いた()()をしていると男が足を止め得意げに口を開く。


「驚いたか? 俺らは商人の仲介で貴族様の依頼をこなしているのさ。なんでも貴族様の中には子供の頃の魔物を飼育したいとかっていう物好きな連中もいるらしくてな、ああやって捕獲してオークションで売りに出すそうだ」


「ええ、正直驚きました。隔離してるとは言えあんな魔物を拠点の内側に入れるなんて危険じゃないんですか?」


やっぱりこの世界の国は貴族社会っぽいな。商人か、目をつけられたら面倒だけどこういった連中は使い捨ての便利な手駒として扱われているだろうし、殺してしまって問題ないだろう。


「そりゃあお前、こんな仕事やってるといやでも実力はつくもんだ。あの程度の魔物の子供なんて分けないさ」


「それは、すごいですね。」


「にーちゃんだって、あのエノルムボアを簡単にのしちまう程度の腕はしてるんだろ?あの程度危険のうちになんて入らないだろ」


「いえ、私は()()()()弱っていたエノルムボアにとどめを刺しただけですから」


「謙虚なにーちゃんだな。ほら、親方様が待ってるだろうから早くいくぞ」


そう言ってまた歩き出す。檻の方から目を離さずついて行くと、ふと奥の方に人影が見えた。


(あれは……一つだけあった人間の反応か?)


そう思い身体強化を使い目を凝らしてみる。すると次の瞬間、俺は目を奪われていた。そこには見つめられれた者すべてが魅了されるような金眼に儚げでありながら一点の曇りもない高級な白磁のように上品な白い髪を持つ艶やかな女の子が捕らわれていたのだ。その女性らしい体つきからも歳は俺とそう変わらない様に見える。しかし、ただ普通の女の子では無いようだった、なぜなら頭に耳があり、大きな尻尾が生えていた。


(獣人……か?)


すると向こうもこちらに気付いたようで目が合ったような気がしたが、あまり長く注目していても警戒される恐れがあったので目をそらして男について行く。しばらくして、親方と呼ばれている奴がいるという大きなテントの前まで案内された。男が中に入っていくと、テントの外にいる奴にここにいるように言われた。しばらくすると中に入るように声が聞こえたので、外にいる奴に目線で入っていいのか聞くと、うなずかれたのでテントの中に入っていく。


「よく来たな坊主! 俺はライルってんだ、よろしくな。話によるとお前さん、森で迷っちまったらしいじゃねえか。まあここに来たのも何かの縁だ、後でここから町までの地図をやるからを明日までここでゆっくりと休んでいくといい。坊主にもらったエノルムボアもあるし今夜はごちそうだ!楽しんでいってくれ」


いきなりデカい声でそう言われた。顔にいくつか傷があり髪は短くいかにもって感じな見た目だ。


「ありがとうございます、私は雪人と申します。快く迎えていただいたこと本当に感謝いたします。一晩泊めていただけるだけでなく地図までいただけるなんて、なんとお礼を申し上げればいいのか。」


「気にすんなよ坊主、さっきも言っただろう?ここで会ったのも()()()()だって。それにおめぇ、えらく丁寧なしゃべり方するな、両親は商人か何かだったのか?」


「いえ、死んだ両親の身の上については聞いたことがなかったのでわかりませんが、丁寧な言葉遣いを心がけていれば少なくとも相手を怒らせるようなことにはならないだろうと教えられましたので」


「そうか……そいつは悪いこと聞いちまったな、すまねえ。許してくれ」


「そっそんな、気にしないでください。もう大分前のことですから気持ちの整理はついてます」


当たり障りのない会話を進めていく。


「そうかなら今晩は遠慮なく楽しんで言ってくれ、お前ら今夜は宴だ!どんどん食い物もってこい!」


ライルのそんな掛け声で宴は始まる。俺は慧智者に薬や毒を感知したら、状態異常を回復させる【リカバリー】を使うように指示する。こいつらが本当に俺を泊めるだけのつもりであろうが何だろうが今夜決行だ。そう決めて改めて気を引き締めた。


ヒロインがちょびっと登場しました!あからさまな演出ですかね。

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