第六話 新たな力と通過儀礼
第六話です。読んでやってください(´▽`*)
今回は雪人の初戦闘です。戦闘シーンは読者側だと心躍るシーンですが、
執筆側だとうまく伝わるかわからなくてちょっと不安です。楽しんでいただければ幸いです。
【獣霊】を【霊獣】へと表記を変更しました。
気づけばもう夕方だ。異世界生活最初の一日目は早くも終わろうとしていた。
「今夜は野営するとしてどこかよさそうな所をさがさないとな」
とは言え焚き火をするにしても薪を集める時間がほしいから急がないと、でも魔物の蔓延るこの森の中を今の装備で不用意に歩くのは危険だろう。何か手はないか……せめて大体でもいいから魔物の気配を何とか探れないかな。漁船のソナーみたいな感じでできないかなー。
ん?まてよ、ソナーっていうのは音波を発信してその反響を利用して周囲を把握するものだったはずだ。音波いや音は空気の振動だ、だったら風魔法でなんとかできないか?幸いなことに俺には慧智者さんの演算能力があるそれを活用すれば疑似的なマップ作製も夢じゃないはずだ。そうとわかればイメージだ魔法はイメージで何とかなる……適正は低めだけど明確な目標の形は分かってる、だからできるはずだ。
『風よ、我は汝らに乞い願う。汝らは万象すべてを抱擁する存在なり、時に優しく時に無慈悲であるが常に我らと歩んできた存在である。汝らの奏でる旋律をもって我に脅威を示し給え』
練り上げられた魔力を声に乗せ詠唱する。
『風精探訪』
俺を中心として微弱な風が吹き抜けていく、俺の魔力が込められた音波を模した人工的な風だ。これだけだとまだ何の意味もないここでスキルを起動する。
「並列演算、思考補助、頼むよ慧智者」
〈応:お任せください、主〉
そう間もあけず即答され、ほおが緩むのを感じた。本当に頼りになる相棒だ、そして相変わらず仕事が早いな。頭に簡易的ではあるが周囲の情報が流れ込んでくる、しかし無理なく必要最低限が表示されているのがわかる。
〈告:索敵範囲は2kmほどで範囲内の人間や亜人など意思の疎通が可能な種族は青い点、魔物は赤い点で示しております。現在、模倣および最適化に努めておりますのでもうしばらくお待ちください〉
お、ほんとに居たんだ。いくつかの赤い点があった。集団で固まっているのもあれば、単独で動き回っている個体もいる。あ、ほんとに小川あるな、覚えておこう。
「野営にちょうどいいところはっと」
川の近くって動物がよってきそうだし今の装備じゃまだちょっと避けた方がいいかもな。そしたら今いるところよりもうちょっと奥に入っていくことになるけどそこそこ見晴らしがよくてほどほどの岩が転がってる場所があるな、そこにしよう。
「見晴らしがいい分ちょっと危険な気もするけどまあ多少は何とかなるだろ」
そう思い森の奥へと入っていく。
「いやー改めて思うけどほんとファンタジーだわ、なんかそこら辺の木とか全然見たことないし生ってる果実も見たことないわすっげーうまそうだし」
こぶし大の大きさのその実を一つ手に取ってよく見てみる。
____________________________
【ポンぺの実】
酸味が強くさわやかでほのかに甘みのある果物。
食用として親しまれている。
____________________________
一口かじってみる。
「うっまああ!」
確かに酸っぱいすっげー酸っぱいんだどけどちょうどいい甘さがあってすごい美味しい!グレープフルーツの上位互換みたいな、そんな感じ。
「取れるだけとっておこう」
そう思って、片っ端からポンぺの実をもいでいると、視界の端にレーダーの様なものが表示された。
〈告:魔法【風精探訪】の解析、最適化が完了しました。今後、魔法名のみでの発動が可能です。解析の副次結果としてスキル【探査】を構築しました。〉
____________________________________
【探査】
周囲500mほどに魔力で発生させた音波を発し周囲の状況を把握することができる。
パッシブスキルであり、慧智者のバックアップによって管理される
____________________________________
「また便利なものを作ったなー。っていうかスキルって作れるのな」
〈応:私は主のスキルですから、当然です。そこらのスキルには不可能でしょうが私は主のスキルですからね。スキルの多くは偉人の武技だったりと元となる魔法などが存在しております〉
本当に人間ぽくなったな慧智者さん。というか俺のスキルだからってなんじゃそら……俺を立ててくれてるんだろうけど、慧智者がすごいだけなんだよな。引き続き目的地へと進む。手ごろな枝も拾っておこうかな。道すがら、果実やキノコに薬草など。慧智者さんのピックアップしたものを採集しながら進んでいく。
しばらく歩いているとようやくたどり着いた。野営の準備を始める。アイテムボックスから冒険用具セットを取り出す。火打石の使い方など慧智者の指示に従い準備を進めていく。一通りこなして携帯食料を頬張りながらくつろいでいると。頭に警戒音が響く、何事かっ!と思い周りを見ていると微かだが何かがこっちに走って来ているであろう音が聞こえる。魔力の扱い方を覚えてからずっと魔力制御の一環として体の隅々まで行き渡らせて常に循環させている。その甲斐あってか身体能力が少しずつ上がっている。
<告:魔物が一体こちらへ接近しています戦闘準備を>
ついにこの時がきたか、平和な世界で暮らしていた俺への通過儀礼の一つだ。この世界で生きていく上で生き物を殺す、これは必須条件だ。まだ人のいる場所へ行ってないから法整備がどれだけ行き届いているかはわからないけど、この弱肉強食の世界なら当然人を殺める機会だってあるはずだ。正直自分がどれだけドライなのかは分からない。実際にその時になってみれば何も感じないかもしれない。そんな先のことは考えても仕方ない、今は目の前のことだけ考えろ。今死んだらそこでゲームオーバーだ。
「バキッバキッバキバキバキッ」
木々の倒れる音が聞こえる、もうすぐそこだ。来るぞっ!
「GUGAAAAAA!!」
猪……か?いやそうとしか思えないんだけど。なんだこのサイズは5mはあるんじゃないか?
_________________________
エノルムボア(巨大猪)
巨大な体躯と鋭い牙を生かした突進を仕掛けてくる。
気性が荒く群れることがない為、初級冒険者の通過儀礼として知られる。
その肉は引き締まっているが柔らかく、とても美味。
_________________________
ますます、俺の通過儀礼にちょうどいい。
というか前半の説明はともかく後半の説明はなんだ、絶対に慧智者が手を加えただろ。
〈解:携帯食料では心もとないので夕飯にちょうどいいかと〉
いやいやなんで倒せる前提なんだよ、初戦闘だぞ。まあいいか今はこいつだ。
「GUGAGAGUGUA」
こっちに来るっ!?どうする?高速思考を使い考える。攻撃は基本的に突進の一択だ、だから横によければっ―――気が付けば俺の体は宙を舞い、吹き飛ばされていた。
「GUAAAAAAAAAAAAAA」
奴が落下地点に突進をかけてくる。まずいっ!
「ぐはっ!?」
幸い牙は突き刺さらなかったものの思いっきり吹き飛ばされ木に体を打ち付ける。さらに迫りくる巨体を全力で横に飛び何とか避ける。あの牙は警戒するべきだった。振り回されりしたら厄介だとなぜ考えなかった、あの体躯からすれば言わずもがな、力は強い。奴の突進をかろうじて避けながらなおも考え続けるが答えは出ない。
あいつの弱点はどこだ?そこを攻めれば何とかなるだろう。しかし、そんなあからさまな弱点があるなんてとても思えない、どうすればいいんだ。このままじゃ…………死ぬ。なにもできないまま死ぬのか?こんな無様に……何もできなかった、何もしなかったあの時の様に……。せっかく転生したんだ初日に死ぬのなんて嫌だ。そうか、俺はまた間違えたのか。あれだけ後悔しない様にって思ったのにな。甘かった、そう覚悟が足りなかったんだ。この世界では一つのミスが死に直結するって事なんて分かってたことじゃないかゲームオーバーだって。俺は絶対に諦めないぞ、何が何でも生き残ってやる!
落ち着け、焦るな、視野が狭くなる。何のための高速思考だ、補助してくれる慧智者の人格が優秀だってのもあるけど、俺が引き出せていないだけでこのスキルはこんなものじゃないはずだ、もっとだもっと考えろ。どんな頑丈な鎧にも関節や重量という弱点があるように、弱点の無いものなんてないはずだ。
「――――――っ!!」
そうか逆だ!何も弱点を攻めるばかりが戦いじゃない。相手の持ち味をつぶすのも一つの手段だろうしそこも一つの弱点だ。あいつの持ち味は何だ?当然のことだけど、それは“突進”だろう。牙を切断するか?いや、それだけじゃまだ足りない。攻撃力は下がるだろうけど、あの体躯を使った突進が脅威なのは依然として変わらない。
「GUGUGUGU」
エノルムボアが地面を蹴り、いまにもこっちに突進しようとしている。
「これだっ!」
魔力を練り上げ、太刀を抜こうと構える、すると太刀とローブが輝きだす。
「なんだっ!?」
「GUGAGAっ!?」
突然の発光に両者の動きが止まる。
『ふふふ、面白い子ね。いいわ、私がちからを貸しましょう』
『一度、視野狭窄に陥った時はどうなるかと思ったが、面白い我も力を貸してやろう』
光の中で声がする、目を開けると左腰の太刀の近くに白銀の狼が、ローブを纏った右肩に赤銅色の鷹が乗っていた。
『力の使い方はこの子が教えてくれるはずよ、これで負けたら許さないわ。思うままに駆け抜けなさい』
そう言い、狼が自分の爪を引き抜き太刀へと押し込む。するとなんの抵抗もなく太刀へと吸収される。
『これでそう簡単にダメージを負うことはないだろう。我を失望させるなよ小僧、己が道を突き進め』
今度は鷹がそうつぶやき、自分の翼から一枚羽を引き抜きローブへ置いた。先ほどと同様にローブへと吸収されていく。またしても、太刀とローブが輝きだす。光が収まると姿を変えたローブと太刀があった。太刀は、鞘と鐔に狼のレリーフが刻まれ、狼の毛並みのように滑らかな白銀の鞘に、全てを切り裂かんとする狼の爪のように鋭く研ぎ澄まされた水色の刀身へと。
ローブには、左胸に鷹のレリーフが、外側はすべてを跳ね除け力強く羽ばたく翼のような赤銅色の生地に、内側は何者からも守護するように優しく包み込むような羽毛であしらわれていた。
「ありがとう」
そう呟き、武器を構え奴を睨めつける。突然のことに呆然としていたのか奴もまた態勢を整える。
数秒の間互いに睨み合うが、痺れを切らしたのか奴が突っ込んでくるが俺は笑って呟く。
「悪いけどもう相手にならねえよ」
そう言って正面から奴の牙を根元から切断して、横に回り込み足を切りつける。すごいな、ここまで変わるのか。魔力を込めて移動すれば身体能力が強化されて素早く移動できるとは思ってたけどそれだけとは思えない速度だった。そうか、このローブの力なのか。それに、この太刀だ。なんて切れ味なんだ、刃を当てた時にはもう切れてるのが分かった。
切られた足で体重を支えられなくなり崩れ落ちるも、闘志を絶やさずこちらを睨めつけてくる。
「お前に敬意を払い、今持てる全力を持ってとどめを刺そう」
「霊獣憑依:氷狼」
そう呟き力を開放していく、髪が白銀に変わり周囲が凍っていく。
「それじゃあ行くぞ、氷狼刀術:壱ノ太刀』
『凍爪一閃』
エノルムボアは理解した。
「自分の命はこの一撃でなんの痛みもなく刈り取られるだろう」と。
これは自分を苦しめるための攻撃ではなく、情けの介錯だと。
水色の閃光が走り、エノルムボアの頚がズレ落ちる。切断面は凍りついており、紅い氷で覆われていた。
「ふぅーー」
憑依の効果が切れたらもう動けなくなる。本来使えない能力を無理やり使ったんだ、そう直感した。
エノルムボアの死体をアイテムボックスに収納する。焚き火の近くに行き、焚き火を中心に氷が融けないであろう距離にドーム状の結界を氷で作った。冒険者セットから毛布を取り出し倒れこむ。
「これで、安心して眠れる……」
憑依が解け、もはや少しの余力もなかった。重くなる瞼に抗うこともなく眠りに落ちていった。
〈お疲れさまでした主、今はゆっくりお休みください〉
累計 201PV 74ユニーク 突破!ありがとうございます(*´▽`*)
よろしければブックマーク・感想・評価の方よろしくお願いします。
次話にステータスの再確認を予定しています。
活動報告にて、ステータス概念の変更について記事を書きました。
私の技量不足による変更なので本当に申し訳ありません。<m(_ _)m>
今後は無いよう気を付けますのでどうか今後ともよろしくお願いいたします。