第四話 戒めは糧として
第四話でっす!よんでやってください(*´ω`*)
今回はちょっと長めで大分重い話になっています。
突っ込みどころはあるかとお思いますがご容赦ください。
今更気づいたんですけど“桜井”だとあの有名人と字面が一緒でしたね、なので桜井→成瀬に変更しました。
母の教えに従い毎日を生きる。決して他人を傷つけない優しい子に。
それが正しいことだと信じて疑わなかった。子供の頃の俺にはそれが全てだった。
この平和な世の中でそれが何の力も持たないただの綺麗事であると知ることなど不可能だったのだから。
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小学生の頃の話だ。
今この世の中では“いじめ”という問題が増えてきているらしい。テレビでは自分と年の近い子が亡くなったと聞いてとてもショックだったのを覚えている。なんで誰も助けたあげなかったのか「友達はいたはずなのに…信じられない」と思った。
俺には成瀬翔という友達がいた。席が近かったこともありどんどん仲良くなっていった。お互いに“親友だ”と言い合うほどの仲だった。なんてことの無い話や好きな子の話なんかもした。
学年が変わると残念ながら翔違うクラスになってしまった。それでも一緒に帰ったりと関係は変わらなかった。
「今日、ちょっと残らないといけないから先帰ってて」
ある日、突然そんなことを言われた。何か用事でもあるのかと思い。わかった。と返し俺は先に帰った。そんなことが何回か続いた。翔もいつも通りだったし気にせずにいた。いつも通りに、いつもの通りに、お互いにくだらない他愛のない話をしながら笑いあっていた。ただしばらくすると、どうしてそう思ったのかはわからないけど翔の反応や雰囲気に違和感を感じた。
「なにかあったか?」
そう尋ねたが返ってきたのは、
「え? 別になんもないけど急にどうしたんだよ?」
これと言って問題の無いふつうの返事だった。しかし、そこには違和感しかなかった。いつもだったら「そんなに俺のことが心配なのかよ」とにやけながらおどけて見せる翔がふつうの返事をしたのだ。思い当たる理由が翔の居残りくらいだったから、ある日俺は一度こっそり翔の後をついていくことにした。
翔は一人で校舎裏のほうへと向かっていた。少し時間を空けてから追いついて見ると翔のクラスのやつ数人と翔の姿がみえた。よく見えず少しずつ近づいて翔が囲まれているのがわかった。次に瞬間、目の前の光景に衝撃が走った翔が殴られたのだ。何が起こっているのかわからなかった。俺の友達が、親友がいじめられていたのだ。ふざけるな。自分でも信じられないくらいに怒っていることを感じていた。
「なにしてんだよ! やめろ!」
自分でもびっくりするぐらいに叫んでいた。自分の体を盾にいじめっ子と翔との間に立ち相手をにらみつける。しかし、怒りに任せて暴力に訴えることはしなかった。お母さんとの約束があったからだ。
「別に遊んでるだけだからじゃますんなよ」
いじめっ子は俺にそう答える。理解が追いつかなかった。あそんでる?どこがだ。どこをどう見れば遊んでるようにみえるんだ。怒りに震えながらなお立ちはだかった。すると、殴られた。悔しかったらやりかえしてみろ。そう叫びながら、次々と俺に殴りかかってくる。
『やられたからってやり返したら駄目よ? わざわざ相手と同じように暴力に訴えても何の解決にもならないのよ』
お母さんに言われたことを思い出し、ひたすら耐えたいくら殴られようと蹴られようとも耐え続けていた。
「そんなところでなにしてる! 何やってるんだ前川」
そう大人の声が聞こえた。先生が声を聞きつけ駆けつけてくれたみたいだ。前川達を先生が叱り、さらには一応親へと連絡するそうだ。ああよかった、これで大丈夫だ。
「よくやったな赤原、お前のおかげで成瀬は助けられた」
「あ゛り゛か゛と゛う゛雪人」
先生の言葉に俺は安心しきり、泣きながらボロボロの俺に感謝する翔に、きにするな友達だろう?と返した。これで全部解決した元通りだそう思っていた。そう思ってしまったんだ。それから、翔が残ることはなくなりまた一緒に帰り始めた。また二人でなんてことの無いくだらない会話をするのが楽しかった。
そうだ、俺は違う。
あの時、テレビで言ってた亡くなった子の友達や何もしなかった奴らとは違うんだ。
俺は友達を助けた、大事な親友を。
当然お母さんはそんな俺を褒めそやした。それがうれしくて俺はますます増長した。決して他人を傷つけない優しい子に。それが正しいと疑わなかった。しかし、現実はそんなに甘くない。そう知ることになるのにそう時間はかからなかった。
ある日のことだ夏のプールの授業は翔のクラスと合同の授業だった、俺はいつも通り翔と一緒にいた。その日の時間割はプールが最後だったから、いつも通り授業を過ごし後は帰るだけ。教室に戻ろうと翔と廊下を歩いているとなぜか俺のクラスの教室から前川達が歩いてきたなぜかこっちを向いてにやにやしていたが気にも留めなかった。
帰りの時間になっても女子が帰ってこない、しばらくする俺のクラスと翔のクラスの全員が集められた。一人の女子が泣きながら先生と一緒に教室に入ってきた、それを見て何があったのかとクラスは騒然とした。話によるとその子の下着がなくなったらしい。盗むような奴はいないとは思うが念のために持ち物検査をするそうだ。みんなの前で一人一人の荷物がひっくり返された。俺の番になった荷物を渡した、何も起こらない……はずだった。俺の荷物の中にあったのだ、呆然としている俺に。
「どういうことだ! 赤原あああああああああああああ!」
先生の怒号が響く。混乱している俺はまともな返答ができなかった。
「えっ……いやっ……違っ」
何も答えられずにいる俺に対し先生の怒号は続いている。もはやまともに機能していない俺の頭には届いていなかった。そうだ!俺はずっと翔と一緒にいたじゃないか。翔ならきっと助けてくれる。
「あっあの、僕はやっていません。ずっと成瀬君と一緒にいたので証明してくれるはずです」
何とか言葉を紡ぎだし、前川が教室から出てきたことも伝え何とか無実を主張した。
「そうなのか?成瀬」
先生は翔のほうを向き尋ねる。
「いえ、プールの授業中は一緒にいなかったのでわかりませんが、教室に戻るときは一緒にいました。しかし、前川君とは会いませんでした」
…………………………………………は?
もはや何も考えられなかった。目の前の事実を受け止められなかった。
(裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた)
目の前が黒く染まっていく、視界の端に前川達の笑みが見えた。
そこから先は覚えてない、気が付けば変態の烙印を押されていた。
だれも信じてくれない、話も聞いてくれない、誰も助けてくれない、どうしてこうなった、どこで間違えたんだ。
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「このデブがうぜぇんだよ! カッコつけてんじゃねえぞ」
「そうだ! そうだ! 雑魚のくせに出しゃばんなよ」
「学校きてんじゃねえよ! キモいなこっちよんなよ変態」
もうどうしたらいいかわからなかった、俺が何をしたっていうんだ。
「本当に気持ち悪い……毎日毎日これだけ言われてなんでくるのよ」
「こんだけやられたらふつう何かするだろ、情けねえ」
何ができるっていうんだ、誰も信じてくれないじゃないか。
気が付けば、あの時の校舎裏に来ていた。
「おっ、変態さんじゃん。あなたのおかげで中途半端に助かったお友達、仲良くしてたと思ったら裏切られちゃったんだっけ?」
中途半端?大人がしっかりと何とかしてくれたはずだ。
「人に頼ってるからこうなるんだよ、優しい優しい雪人君」
暴力じゃ何も解決しない、お母さんが言ってたことだ。
「ここまで言われて何もしてこない、チキンなんて怖がる必要ないからね。だから友達をなくしたんだよ雪人くん?」
「……………………」
「これでもだんまりかやっぱり雪人君はやさしいなー」
前川の言葉に取り巻きが笑い出す。
ああ五月蠅いな、ペラペラペラペラ。もうわかったよ。
やっぱり俺は何もしてなかった。何もしなかった。そう何にもしなかったんだ。
“他人を傷つけない優しい人”それは理想だ、そんなことができれば苦労しない。
そんなのはもうやめだ、自分を中心に考えよう。
物事に簡単な損得があるように人付き合いにだって視野を広げれば見出せるはずだ
“優しい人”これは使える味方を増やせるし敵を増やしにくい。
“他人を傷つけない”味方は増えるが、敵が増長する。
“暴力”これは敵を消せるが、味方はいなくなる。
“笑顔”雰囲気が柔らかくなるから打ち解けるにはちょうどいい。
でももう、ただの友達はもうこりごりだから人選は大事だ。かといって付き合う人数は多いに越したことはない。
じゃあこれからは
『いつも笑顔で優しいけど怒ると怖い、いい奴』
「雪人君は本当に優しくでつまらないね」
「はあ…うるせぇぞ前川、お前の十八番は暴力だろ。ピーピーピーピーいつまで喋ってるんだよ」
そう言って前川を殴った。
「痛ってぇな! 調子に乗ってんじゃねえz」
最後まで言わせずに殴った。
「ふざけんなてm」
喋らせない、そんな余裕は与えない追いつめて歯向かう意思を折る。
周りの言うように俺はデブだ、だから動けないし逃げられた終わりだ。だから乗る。
馬乗りの状態でただひたすらに殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、殴った。
取り巻きは見ているだけだ唖然としている。集団のトップをやれば少なくともしばらく反抗はしてこないだろう。
前川からの抵抗がなくなった所で一度止める。
「俺が…おれが悪かったです、もっもう勘弁してください」
思ったより音をあげるのが早かった、とりあえず今の状況はまずい。何とかするべきだ。
「今回の件のすべてを全校生徒の前で告白しろ。全校生徒の俺に対する態度が改善されたら、それで許してやる」
「っ!?………………わかりました。本当にすみませんでした」
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しばらくして“結局俺は何もしてなくて冤罪だった”という認識が正しく広まり始めた。
「この間はひどいこと言ってごめんね」
そんな言葉は耳タコだ。
「気にしないで、分かってくれればいいよ。これからもよろしく」
そんな言葉で応対する。余計な敵は作らない。それが一番だからな。
取りあえず痩せるか、せめて隠れぽっちゃりになるぐらいだな…………
目標、動ける隠れぽっちゃり!
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〈告:スキルの統合が終了しました〉
嫌なことを思い出した、いやでもちょうどよかったのか。世界が変わったところで人の本質はそう変わらないだろう。
でもおかげで再認識した『いつも笑顔で優しいけど怒ると怖い、いい奴』これで行く!
お疲れ様です!w
どうだったでしょうか?あらすじが詐欺になりそうで怖かったのでちょっとぶっこんでみました。
本編の方はこれから少しずつ進めていきますのでお楽しみに!
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一部表現を修正しました。