黄色いサンタクロースとぶらんこうさぎ
黄色い帽子、黄色いマント、黄色いズボン、黄色いブーツ、これはサンタクロースの見習いの黄色いサンタクロースの姿です。まだトナカイのソリには乗せてもらえないので黄色い自転車に乗っています。世界中に黄色いサンタクロースは、194人います。12月のクリスマスだけでなく1年中働いています。つまり本物のサンタクロースになるために『よいこと』をするのが、黄色いサンタクロースのお仕事です。
たとえば誰かが贈り物をもらったときに「ありがとう」という感謝の言葉と気持ちが自然とわいてくるように…。
または誰かにめいわくをかけたときに「ごめんなさい」とすなおに言えるように…。みんなが、やさしくてあたたかい心をなくさないように…。
そのために『よいこと』をします。
............ぶらんこ村へ向かう....................
..................................................
............いろとりどりのぶらんこが..............
............風もないのに揺れている................
............くさりが音を立て......................
............その音が..ひろがって..................
............たがいに共鳴したり....................
............響きあっている........................
..................................................
............ぶらんこの描く軌跡が..................
............いくすじもの弧をつくる................
............遠くに見える地平線も..................
............大きな弧をつくっていた................
..................................................
(詩集『ぶらんこ症候群』より)
ぶらんこ村がありました。そこには、地平線まで、ぶらんこがならんでいます。どこまでも、どこまでも、ぶらんこが、つづいています。つよい風がふくと、ぜんぶのぶらんこが、ゆらゆらとゆれます。くさりの音が、ぎーこ、ぎーこ、ひびきわたります。
ある日、黄色いサンタクロースが、ぶらんこ村にやってきました。村長さんによばれたからです。村のうさぎが、病気になったということでした。ぶらんこのなかを黄色い自転車で走りぬけると、村の広場に出ました。木でできた椅子に村長さんは、すわっていました。
「こんにちは、ぶらんこ村の村長さん」
村長さんは、おおきなこげ茶色のぼうしをかぶっていました。
「これは、これは、黄色いサンタクロースさん、わざわざありがとうございます」
ぼうしをとると、ふかぶかとおじぎをしました。
「うさぎさんが、病気になったのですか」
「そうなんです。ぶらんこ症候群といって、一日中ぶらんこにのっていないといけない病気です」
「ぶらんこに、のりっぱなしですか。ねるときや、しょくじをするときは、どうするのですか」
「ぶらんこのうえで、ねたり、たべたりしています。じつは、もうすぐ台風が、やってきます。なんとかして、うさぎさんをぶらんこからおろして、いえのなかにいれたいのです」
「わかりました。ところで、うさぎさんは、どこにいますか」
「地平線のはしのぶらんこにのっています」
はしまでやってくると、緑色のぶらんこに、うさぎがのっているのがわかりました。
「うさぎさん、いつからぶらんこにのっているのですか」
「おつきさまが、まんまるのときでした。それから、ほそくなっていって、またまるくなりました」
うさぎは、しゃべりながらも、ぶらんこをこいでいました。
「ぶらんこからおりることはできませんか」
「こわいんです。こうして、ゆられていると、あんしんです。ゆれが、とまりそうになると、こわいので、いつもゆれています」
「もうすぐ台風が、やってきます。ぶらんこにのっていると、あぶないですよ」
「でも……」
ずっと、うさぎは、ぶらんこをこいでいました。
やがて、とおくのそらが、まっくろになりました。むくむくとくろいくもはひろがって、いつしか風もぴゅーぴゅーとふいています。ぶらんこは、くさりが、がちゃがちゃなっています。うさぎののっているぶらんこも、はげしくゆれています。黄色いサンタクロースも、たっているのがやっとでした。ぽつり、ぽつりと雨もふってきました。
「うさぎさん、ぶらんこからおりてください」
「いいえ、それはできません」
そのとき、もっとつよい風がふいて、黄色いサンタクロースが、ふきとばされてしまいました。
それでも、うさぎは、ぶらんこにしがみついていました。ざあざあ、雨もどしゃぶりになってきました。
黄色いサンタクロースは、ふきとばされて、おおきな木のしたにやってきました。そこでは風と雨からのがれられました。
うさぎのぶらんこのところまで、いこうとおもってもとてもいけませんでした。
一晩中、風と雨は、つづきました。
つぎの朝になると、村は、すっかりはれました。
さっそく黄色いサンタクロースは、うさぎのぶらんこへむかいました。
ところが、うさぎののっていたぶらんこのあたりは、つちがえぐれ、あとかたもなくなっていました。あちらこちらで、たくさんのぶらんこが、こわれていました。
村中をさがしましたが、うさぎはいませんでした。村長さんや村のひともいっしょにさがしましたが、みつかりませんでした。
村長さんと村のひとと黄色いサンタクロースは、こわれたぶらんこをなおしはじめました。ゆうがたになると、だいたいのぶらんこは、なおりました。黄色いサンタクロースは、村長さんのいえで、ゆうごはんをたべました。
そして黄色い自転車にのってかえろうとしました。
すると、地平線のはしの緑色のぶらんこに、うさぎがのっているのがみえました。おおいそぎで、ぶらんこにむかいました。
「うさぎさん、だいじょうぶだったのですか」
「はい、ぶらんこにのったまま、空にとばされてしまい、とおくの国までいってきました」
「もとにもどれてよかったですね。そうだ、村長さんにもらったくだものがあります」
そういって黄色いサンタクロースは、黄色い自転車の荷台からくだものをとりだしました。それをうさぎにわたしました。
「ありがとう。おなかが、ぺこぺこでした」
うさぎは、ぶらんこにのったまま、くだものをたべました。
「それでは、うさぎさん、もうかえらなくてはいけません。さようなら」
「黄色いサンタクロースさん、ありがとう。さようなら」
黄色い自転車のペダルをこいではしりだしました。うさぎも、ぶらんこをつよくこぎました。くらくなったそらに、おつきさまがでていました。ペダルの音とぶらんこの音が、いっしょになっていました。
いまでも、ぶらんこ村へいくと、うさぎが、ぶらんこにのっているそうです。
おしまい
「それでは、うさぎさん、もうかえらなくてはいけません。さようなら」
「黄色いサンタクロースさん、ありがとう。さようなら」
黄色い自転車のペダルをこいではしりだしました。うさぎも、ぶらんこをつよくこぎました。くらくなったそらに、おつきさまがでていました。ペダルの音とぶらんこの音が、いっしょになっていました。
いまでも、ぶらんこ村へいくと、うさぎが、ぶらんこにのっているそうです。
おしまい