王城包囲まで
遼一が収容所に来ると、先に誰か来ていた。
「先客か…誰だろうか。」
遼一が、近くに来ると、話し声が聞こえてきた。
「なんで、来たんだよ。お前も逃げろって言っただろ。」
「我が君。そもそもの原因は、我が君です。配下に何の相談も無く投降するとは!」
「いやね?手紙書いたから、いいかなぁって思ってさ。」
「手紙は、拝見しましたが、国家の緊急事態に王族の貴方が、真っ先に投降しないで下さい。ご婦人方は、ご実家にお返ししましたので。」
「流石だな。しかし、何故軍隊を持っていたんだ?」
「それは、王の追撃軍です。私は、ご婦人方をご実家に護衛した後、我が君を単身追っておりました。その時です。目の前に、追撃軍が居たのです。追撃の指揮していた男は、私の知り合いでしたので、嘘をつき軍の指揮官としてここにやって来ました。」
「なるほどな。まぁ俺は別にいいが、ここの大将がどう言うかねぇ。俺が、投降した時は、受け入れてもらえたけど...」
「どんな人物か見に来たら、主の知り合いやったか。」
「これこれは、大将。厚かましいお願いを聞いてほしいのですが…」
「助け欲しいだろ?無理とは、言えないが…正直な話何だが、この戦争が終わると戦争裁判が、あるんだ。」
「戦争裁判とは?」
「戦争裁判っては、司法裁判なんだよ。両国の法律に精通している判事、弁護士がついて、今回の戦争責任を追及するんだ。だからね。わかるでしょ?」
「助けれないのですか…」
「そいうことなんだ。すまないね、期待に添えれなくて。助かりたいのであれば、ここから逃げるか、裁判で勝つことかな?あと現段階では君はD。それじゃな。」
「わかりました。」
遼一は、そのまま外へと向かった。その夜、収容所が慌ただしく動いていた。
「捕虜1名が脱走しました。」
報告を聞いた遼一は、特に指示は出さなかった。
「捨て置け。いずれ、捕獲するだろう。で、まだ王子達の軍はいつくるって言ってたっけ?」
「報告によれば、明日の昼に到着するようです」
「昼ね。それまで寝るから、2時間前ぐらいに起こして。」
「は。それでは、おやすみなさい。」
「うん。」
報告官が、外に出ていくと遼一は机の引き出しから、紙を出した。そして、シャーペンから芯を出し、紙へと書いていく。
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セシルへ
今回、戦場にて初めてのお手紙をお送りします。最近の報告では、妊娠が分かった事がなりよりも嬉しい報告です。戦場では、親しい友人等が戦死の報告が辛いでは、ありますが、根気よく頑張っていきたいと思います。身体の健康を考えて食事等を取るように、そして不安等が出来たらメイド等に話すこと。もしくは、紙に書き送ってくること。それでは、お腹の子、自分の身体を気にしつつ帰還を待っていてください。
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遼一は、最後に自分のフルネームを書いて3つ折りにして、封筒にいれた。そしてまた眠りに付いた。
翌日、朝の7時後半に目が覚めってしまった遼一は、秘書を呼び別に起こさなくていいのと、手紙を入れた封筒を渡した後、書類の整理に入った。
「なにこの税は却下」
書類の認可の所に不合格の判子を押し不合格ケースに入れた。その後も続々と不合格が出てきたので、これを持ってきた文官は蒼白していた。
「(合格が10だと…)」
合格ケースに10も入っていることは、あまり無い。稀なケースであった。
その後時間は過ぎていき、王子率いる軍が、到着後する時間が近づいてきていた。
「閣下。そろそろお時間です。」
「もうか。では、見張りの兵士達以外の兵士達に整列して置くように言っといてくれ。陣の西だぞ?」
「は。」
遼一は、書類仕事を切り上げて、王子の出迎え準備に取り掛かった。
2時間後に見張り兵士が、西から騎兵を確認。旗印を確認すると、王子率いる軍の伝令であった。
「報告。アベル王子ご到着まで残り1メベシール(1km)」
「報告ご苦労。」
「それでは、失礼いたす。」
30分後にアベル王子率いる軍が、到着した。
「王子。ここまで、お疲れ様でした。やっと合流出来ましたな。」
「あぁ。それより、兵士に怪我とかしているから手当をさせてくれないか?」
「それは、勿論。王子、ここまで来る時に、奇襲を受けたと聞き焦りました。」
「それを受ける前に、遼一の所の軍兵が、来てくれていてな。」
「偵察隊はそちらに、向かっていたのですか。それは良かった。西に送った兵士が、2人しか帰ってこなかったので、どうなった事かと。」
2人は、話に夢中になっていたが、横から咳払いが聞こえたので、正常に戻った。
「では、王子様達はこちらへ」
「みな。今回は、野営だ。」
「は。野営の準備をしろ。」
遼一は、陣に出ていた軍隊を、陣へ戻した後、アベル王子達を連れて自分のテントに入っていった。
「遼一、書類が山積みだな。」
「これぐらい。いつもの量よりかは、遥かに少ない方ですよ。」
「そ、そうなのか。」
「王子も即位すれば、書類なんか沢山きますよ。では、作戦会議しましょう。残りは敵の王城ですから。」
「そこまでの間に、砦やらが有るぞ。それはどうするのだ?」
「空爆します。その後突入します。その後は、道なりに進み王城を包囲し、空挺部隊を降下させた後に、城門が開くのでそのまま一気に王城まで行きます。ですが、城塞などにも事前に降伏勧告などをした方が良い等の要望は、なるべく受け入れる事は出来ます。」
アベル王子側の席に、座っていたアシュ・リベントリー将軍が手を挙げた。ちなみに、このアシュ・リベントリーは軍人の中で唯一の女性軍人である。
「では、要望を1つ言っておきたい。先程、影山将軍が言いました『降伏勧告』をまず最初に、やって貰いたい。先の奇襲戦で、結構な打撃を受けた。これ以上犠牲は抑えたい。」
「分かりました。では、要望通りに事前降伏勧告を行います。待ち時間は、何時間ですか?」
「出来れば1日。早くて12時間です。」
「では、12時間で宜しいでしょうか?」
「俺は、構わんぞ。」
アベル王子が率先して、賛成の意を表明したので、残りも賛成したが、遼一側では、反対3であった。
「殿下、閣下。私は反対です。12時間は、待てません。妥協できるのは、6時間のみです。」
「流石に、6時間と言うのは短すぎる。せめて7時間では、駄目か?」
アベル王子が、対案を出してきた。
「分かりました。7時間だけです。」
「他に何かありませんか?」
特に無しの雰囲気が、出てきたので解散となったが遼一は、最後に言い忘れてたことを言った。
「2日後に、王城に向けて行軍するので、お忘れないようにお願いします。」
「了解した。では、解散するか。」
「は。」
アベル王子の解散の声で、テントから続々と出ていく将校たち。
「遼一。いままで、上手く行き過ぎてないか?」
「でも、奇襲うけましたよね?」
「それそうなのだが、それも含めてなのだ。」
「そうと言われると、なるほど...しかし『勝って兜の緒を締めよ』という言葉がある様に、確実に堅実に来たからですよ。」
「か、かって?なんて言ったのだ?」
「『勝って兜の緒を締めよ』です。」
「それは、なんという意味なのだ?」
「意味は、成功したからと浮かれずに、心を引き締めろ。と言う意味です。」
「ならは意味を踏まえて言うと...『いままで勝ってきているから、ほっと一息を着いていても油断せずに用心せよ。』で、間違いないか?」
「あながち間違ってはいませんね。あえて例を挙げるならば、『2回目は、初回より気を抜かずに頑張ろう。』とかです。」
「なるほどな。遼一出来れば、そのような言葉が乗っている本は持ってないか?」
「現在は、持っていませんが領に帰れば、売ってると思いますよ。」
「では、これが終わりしだい、買いに行くか。それじゃ俺も、テントに戻る。ここのテントは質が良いから寝やすい。」
「ハハハ…では。」
アベル王子は、自分のテントに戻って行った。
「ツール王国...の命運尽きるまで幾ばくの時が、あるか...出撃は2日後...首都到着日は早くて20日、遅くて45日か、そろそろ本番が近づいてきたか。」
遼一は、1人で計画書を読みながら、ブツブツと言っていた。その日の夜は、祝宴を一様開き兵士達を労った。
「あぁ〜酒飲めねぇのに...陣の櫓に登るか。今の時間帯は確か1人しか居なかったはず。」
ふらふらしながら櫓の近くまでやって来て、階段を登っていく。
「よっこらせっと。今日は満月か。満月の夜に、飲めない酒を飲む事もまた一興よ。見張り員お前も少し飲め。」
「す、すみません。自分飲めなので。」
「そうか、俺も飲めないのだ。明日絶対に吐くぞ。じゃそろそろ降りる。」
「気をつけて、降りてください。」
「任せろ。」
ゆっくりと降りていき、地面に足を付けた遼一は、そのまま自分のテントへと戻っていった。翌日、遼一は二日酔いになり、薬のお陰で半日たった時には症状は治っていた。
「閣下、半日経ちましたがどうですか?」
「行ったて快調。滅多に飲まないと後が辛いよねぇ。」
「その通りかと。」
「今日の予定は?」
秘書官が予定を言おうとすると、通信兵が血相を変えて飛び込んできた。
「ほ、報告。空軍所属のF22、F15等の戦闘機ら爆撃を敵城塞、砦に敢行しました。その後、機銃照射を行いました。そして、これは閣下宛です。」
「この辺りの敵基地を攻撃したのか。攻略が楽になっていいな。で、その俺宛か。なになに...こりゃ不味いな。」
手紙を読んだ遼一は、冷や汗を掻いていた。
「君。参謀達を呼んでくれないか?」
「は、はい。」
その数分後、続々と参謀達が入ってきて、部屋の温度が低い事に気が付いた。
「大将閣下。何かございましたか? 」
「これを、大きな声で読め。」
遼一は、手紙を秘書官から参謀へと手渡した。
「は。ごほん。」
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6月22日ツール王国潜入部隊
ツール王国首都で、大規模な反乱が計画されております。計画は、市民が多数を占めていますが、その中にツール王国同盟国の経済都市(連合or国家)と教会の者を一部見かけております。急ぎ首都までお急ぎください。その為、与えられた自分の権限の範囲の中で空軍に命令を出しました。
署名 特殊潜入部隊所属第1特殊部隊指揮官涼宮誠中佐
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「由々しき事態ですな。」
「何故?由々しき事態なのですか?自分は、絶好の機会だと思います。例え敵国の同盟国が裏で居ようと、名分はこちらにあります。」
「西頭参謀少佐、実はこの戦争計画にはツール王国占領は入ってないんだ。オマケに、ワイマール王国の掩護要請で来たから、占領の大義名分はないと思ってくれ。」
「閣下。では、いままで事は何だったのですか?」
「そこは、分からん。俺も、お上の指示の元動いてるからな。王子の戦場の師になってくれって言われてるからなぁ。」
「分かりました。」
西頭参謀少佐は不服そうにしたが、一定の理解を出した。
「しかし、面白い事は出来る。みんなそんなに、不思議そうな顔しないでくれ、簡単だこの俺宛の中にある、反乱をツール王国側にリークしろ。」
「なるほど、その手が有りましたな。」
真っ先に、この案に賛成したのは、先程不服そうにしていた、西頭参謀少佐であった。
「なんだ?みんな思いつかなったのか?まぁ、実質ツール王国半分占領してるからな。このまま王都まで行けば、終わるからな。しかしだ、先程言った通りこの先は、ワイマール王国軍がやるのだが、国内維持で一杯みたいだ。だから口実を作って実質ロマニャー王国が、占領するんだ。その口実が、反乱だ。」
「なるほど、ならば早速実行しますか。」
「では、解散。」
その後、ツール王国軍将校に扮したロマニャー王国将校が、この情報を持って言った。この情報により、ツール王国軍上層部は、情報を隠蔽しようとするが、組織全体に、『国民が反乱を起こす。軍から逃げて国民に加わろう。』と言った事が囁かれていることもあり、ツール王国陸軍は事実上戦意喪失。海軍は、ロマニャー王国付属海軍の潜水艦でほとんどが、爆破もしくは半壊していた。
そして2日経ち、ロマニャー軍は進軍していき、特に、空爆、反乱の噂で戦意喪失している城塞は開城し、進軍していくに連れて、砦、都市は降伏して行った。
「アベル王子。ツール王国首都は、包囲完了です。まずは、降伏勧告を行います。」
「うむ。」
勝って兜の緒を締めよ(かってかぶとのおをしめよ)
意味:勝って兜の緒を締めよとは、成功したからといって気をゆるめず、さらに心を引き締めろという戒め。
次回は、なるべく速く出します。




