61 奇襲
「いやぁ。順調、順調。」
「王子。この快進撃に伴い、敵首都まで目指しましょう。」
「王子。慢心しては、なりません。この見晴らしいのいい所では有りますが、いつ敵が来るか分かりません。よく考えてください。」
「王子。もう上げます。前方より4名の斥候を、発見しました。ただいま尋問しております。」
「貴様らどこの者だ?」
槍を突き刺す近衛兵。
「我々は、影山軍所属の斥候隊です。王子に謁見させてください。」
「ならん。ほんとに影山閣下の軍の者とも、わかっとらん。」
「このワッペンが分からないのですか?」
「ふん。その様な物いくらでも、作れるわ。」
「まぁまぁ落ち着け。」
尋問官が尋問していると、後ろから声がかかった。
「こ、これは王子様。このような所へ。」
「まぁこいつの言っている事は、本当の事だろう。影山領でしかないこの良質の布を肩に貼り付けておる。これは、影山軍特有の印だ。わかったな?」
「は、はは。」
「でだ。俺に言いたい事が、有るのだろう?」
「は。これより20km先に陣を構えて、王子をお待ちしております。」
「ほう、わかった。近衛隊長下がれ、そして全軍進軍させよ。」
「は。」
その頃この付近に、伏していたツール王国軍
「(何をしているんだ。進め。あと少し、あと少しで...)」
近衛隊長の指示のもと各将軍に、前進命令が、下った。
「(来た。全員に命令を、下しているから、先方が、通った後に攻撃する。)」
そしてロマニャー王国軍の先方が、通り過ぎ中腹へと来た時
「今だ!全軍突撃せよ!」
突如として西側の森から、甲高い声と共に、歩兵が抜刀して切り込んできた。
「弓隊!構え!放て!」
そして森林の奥から矢も放たれてロマニャー王国軍は、混乱に気した。
「お、落ち着け!貴様ら、逃げるではない!くそ!残ってる槍兵!戦え!にげるな!」
敵兵との交戦している前方の歩兵達は、前方にゆっくりと出てきていた、弓隊の兵士から次々に矢が放たれて、全滅していた。
「将軍!ダメです。敵の攻撃が激しいです。」
「頑張れ!援軍は、きっと来る。」
「わ、分かりました。」
剣戟の音がなる。
「将軍。先を進む軍が、戻って参りました。」
「シュシュン将軍。助けに来ましたぞ!早く馬に乗りなされ!」
「こ、これは!すまないビスマルク将軍」
奇襲を受けた中腹から後方に居る、王子に伝令がやっと着いた。
「何事か!」
「も、申し上げます。て、敵が中腹に奇襲を、掛けました。」
「な、なに!剣兵、槍兵、弓兵は引き続き進軍し、騎兵は我に続け!」
「お、王子!騎兵続け!」
こうして後方から騎兵5400が砂煙を、上げ急いで戦場へ向かった。
「隊長!我らも行きましょう。」
「ふぅん。」
「隊長。王子様からの手紙を預かって参りました。」
「読め。」
「は。『助力を願う。』以上です。」
「よし。口実は、出来た。ゆくぞ。」
「は。」
斥候隊は、89式小銃を持って馬に乗り追いかけた。
「王子様。助力の願いで、お受けします。」
この斥候隊長は、ある程度の権限を、与えられていた。
「かたじけない。」
「では、先に行かせてもらいます。ゆくぞ」
「手柄を取られるな。行けい!」
その後中腹に着いた時には、味方が押されている時であった。
「隊長。どうしますか?」
「射撃してから攻撃する。撃ち方ようい。」
4名の斥候が89式を肩に持ってきて照準器を覗いき一斉に射撃をし、隊長が抜刀して切り込んでいき、残り3名も抜刀して、隊長の後に続いた。
この隊の隊長以下3名は、再編成で旧陸軍側から来た将校で編成された隊であった。
「しょ、将軍!後方からも援軍です。」
「す、凄い。ほとんど一撃で、敵兵を斬り殺している。」
「そらそら。どうした!奇襲を掛けたのに弱いでは、ないか!」
しかしずんずんと進んで行くが、弓隊の矢が馬の頭の鎧を貫通し、脳天を撃ち抜いき、先頭を走っていた隊長は、馬から落馬し敵に囲まれた。
「そんな安い槍で俺は、突けれないぞ!」
槍の持つ所を、切っていく
「隊長!この手に。」
囲まれていた隊長は、槍の持つ所を切っていくが、やはり数には勝てず死期を悟ったが、後方から追いついてきた部下に助けられた。
「す、済まない。1人で突出し過ぎた。」
「大丈夫です。今から通信手と合流します。」
「わかった。」
その後斥候隊は、東の森に隠れていた通信手と合流し、本部に連絡を入れたのであったが、通信の途中で敵弓兵の矢を受けて通信が途絶えている事に、気づき急いで通信を入れたのであった。
「HQ!HQ!HQ!こちら斥候隊。」
『斥候隊どうした?すこし間が空いたが... 』
「ゆっくりとは話せないので、すみませんが早口で、言います。」
『あ、あぁ』
遼一は返事と共に、慌てて近くにいた人に筆記をさせた。
「ロマニャー王国軍が見晴らしいのいい街道を進軍していると草原の所から、怒号と共にツール王国軍が、攻撃を仕掛けてきました。今矢によって通信手が負傷しております。他2名は今敵の大将を探しております。」
『よし分かった。王子も守ってくれよ。』
「は。」
本部に通信を入れた後、通信手の肩に刺さっていた矢を抜くかどうか迷ったが、基本的に矢を抜く事は奨励されてなかったので、止血をしたのみであった。そして、森の奥の方で隠れていたので、大将を見つけたかどうか訪ねた。
「隊長。先程王子様率いる騎兵が、突撃をしたので、大将らしき人物を見失いました。」
「どんな服装だった。?そいつを、探せ。」
「は。服装は、鉄の鎧、兜などに金の線とが入っており、とても戦場に来る服装では、ございませんでした。」
「中世だからな...」
「隊長!発見しました。馬上しておりますが、周りに戟兵が結構な数います。狙撃は残念ならが...」
「くっ。スナイパーは持ってきてないからな…近くに行けば撃てる距離だが、戦況は五分五分か。全員現状では、89式で狙撃するしかない。距離は届かないが、前進すれば、届く。よって射程内より少し内まで、入れる事とする。よいか!」
「了解!」
「通信手は、ここで養生せよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「喋るな。出血が多いな。止血してもダメなのか。」
「た、隊長。大丈夫です。」
「俺達が、帰ってくるまで気を持たせろよ。」
「了解。」
「全員第4匍匐で前進せよ。」
「了解。」
負傷者の通信手を覗く斥候隊全員は、89式小銃の射程内500m以内に敵大将を狙撃する為に、匍匐前進を始めた。
その頃騎兵を、率いて突撃した王子達は順調に、敵を押していた。
「騎兵共!敵を突きまくれ!下郎が下がれ!」
王子は、騎兵に指示を出しつつ自分を狙ってきた剣兵を斬り捨てた。
「剣兵共め!邪魔だどけ!誰か槍を貸せ!」
「王子様お使い下さい。」
「貴様!どこの小隊の者だ!」
「は。騎兵第3小隊隊長を務めています。」
「ならば、受け取れん。騎兵は、槍が無ければ行き良いよく、殺せん。」
「大丈夫です。影山殿の領内で、このような槍を買ったので、試しに使ってみようと思います。」
第3小隊隊長は背中からポール状の棒を出してくっ付けた。
「であるか。よろしいならばこれは、遠慮なく使わせてもらう。」
「は。」
王子は、槍を使い敵雑兵の首をどんどん取っていった。
「王子!探しましたぞ!」
「爺では、ないか!すまぬがゆっくりとは話せない。」
喋りつつも雑兵を斬っていく。
「いえ特に私も喋ることは有りませんが、王子より先に、死ぬのは儂ですぞ。」
「流石は、爺じゃ」
「王子には、まだ負けませぬぞ!それ!」
暴れまくる王子とその側近達だった。
「あの王子すげぇな。」
「武があってもここが無ければ、意味が無いがな。」
「喋る暇があったら、照準しろ。」
「は、はい。照準しました。」
「良し。ならば撃て。」
隊長の撃ての掛け声の元、89式小銃から5.56mm弾が2発放たれたが、2発の内1発は敵大将の兜を飛ばしたが、殺傷は出来なかった。残りの1発は、空に消えっていった。
「やはり、当たらぬか。よし逃げるぞ。」
「王子の護衛は?」
「護衛は...するしかないか。ならば貴様、通信手を連れて戻れ。機器は置いていけよ?」
「了解。」
斥候兵1名は通信手を、馬に乗せ走り出した。
「大将!大丈夫ですか!」
「な、何が...。て、撤退!退け!退け!」
斥候隊の狙撃により、意気消沈してしまった敵大将は、戦況がやばいのもあり退却命令を出した。退却命令を聞いた敵兵は、散り散りになり戦場から逃げていた。
「皆の者勝どきを挙げよ!えいえいお!」
『えいえいおー!』
勝ちに酔っているロマニャー軍であったが、ロマニャー王国軍はツール王国軍による奇襲で、多くの損害は出たが、兵力は残り6000まで減っていた。
「王子。兵力が約6000まで減りました。」
「敵は、余程の精鋭を率いていたが、敵大将のお陰で助かったのか。ふふふ...ははは!6000になっても生きている兵士達には、良い経験になったであろう!」
「爺は、王子の豪傑さに感服しました。」
「まぁ。良い良い。でだ、影山殿の斥候隊は?」
「申し上げます。影山殿の斥候隊は、2名だけ陣営に残っています。残り2名は、陣営に帰らせたと聞いております。」
「であるか。よし斥候隊2名を呼んで参れ。」
「王子。そ、それが宿営している所に人を向けたら、既に、寝ていたと報告が、ありました。」
「な、なに!も、もうねているのか!影山殿の軍は、場馴れしておる。」
その後、斥候隊2名を除き宿営地のあちこちで、祝宴が行われた。
翌日の朝
「影山軍斥候隊隊長白藤が拝謁致します。」
「同じく、斥候隊副隊長加水が拝謁致します。」
「うむ。面を上げよ。」
「は。王子殿下昨夜は、祝宴のお誘いありがとうございます。しかし昨夜は眠ってしまっていたので、祝宴に来れず申し訳ありません。」
「世もその事に付いては気にしておらんが、何故そんなに寝るのが、早いのだ?」
「は。我々影山軍の軍兵は消灯が夜の6時に、消灯されます。それに、合わせて寝ないと上官に叱られるので、それが染み付いてしまっています。」
「さしずめ軍規であるな?」
「その様に思ってもらって構いません。」
「先程も言ったがそう言うのでは、仕方ない。取り敢えず席に座れ。」
「は。」
「我が君。このまま行けば影山様が、陣を敷いているので、合流しましょう。」
「それしか、無いであろうな。明日の朝に出立するゆえ、皆準備するように。」
「は。」
「申し上げます!」
「何事か!」
「は。先程この辺りを探索していた者達が、敵大将らしき人物を捕縛しました。」
「なに!よし。連れて来い!」
「は。」
その後、縄をかけられ暴れられない様にされていた人物が、連れてこられた。
「こやつか?身なりでいえば、大将らしきだが...誰か顔を見た者がいるか?」
「王子殿下。私達が顔を確認してもよろしいでしょうか?(扱いひでぇなぁ)」
遠くに席を設けられていたので、顔が良く見えないのであった。
「うむ。こっちに来て見るがいい。」
「ありがとうございます。」
隊長の白藤と副隊長の加水が席を立ち顔を確認した。
「王子殿下。この者は、あの時に指揮をしていた敵大将で間違いございません。何故なら、ここをご覧下さい。」
そう言って、顔のある場所をさした。
「この頬にあるこの傷は、我々が放った5.56mm弾と言う種類の弾丸です。実物は、このような物です。」
あの時の2発目が、空を斬ったと思ったら頬を掠っていた。そして隊長の白藤は、実物の弾丸を出した。
「ふぅん。なるほど、確かに形状は酷似しているから、これだろうな。ならばこいつは、敵大将として認める事となるな。おい、お前名はなんと申す。」
「...名はアキツキと申す。」
「アキツキ。武官官職は将軍か?」
アベル王子が聞くとアカツキは首を縦に振った。
「お主何故このような所で、潜伏しておった?」
「ふん。知れたことを貴様の命を狙う為であろう。戦は敗れはしたが、貴様を殺せば戦は敗れようと、指揮官を失った軍はただの烏合の衆となるであろう!」
「下、下郎が!捕虜の分際で、その口の聞き方はなんだ!」
「少しは頭が、ある様だ。シュペルこやつの、紐を解いてやれ。」
「本当によいのですね?」
「よい。」
紐を斬られ解放されたアカツキは、陣の門まで送られた後、馬に跨り去っていった。
「では、解散。また明日の朝に出立するので準備抜かりなく、しておくように!」
「は。」
月は沈み太陽が上がってきた。
「全軍進軍!」
ロマニャー王国軍は、先に陣を張って待っている影山軍との合流を、果たす為に進軍するのであった。
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