十二人は進む
スタート後、僕ら参加者は今後について話し合う事になった。
「おし、集まったか?」
あの気の強い男が場を仕切っていく。
こういう時に頼れるというのは嬉しい話だが何故かしっくりこない。
「まずはグループで分けよう。それから一緒に行動するってのはどうだ?」
皆に同意を求める。
「どこまで一緒に?」
カップルの女性が話しかける。
「まずは小屋を探すまで一緒に行く。で、小屋の場所を把握したらグループで別行動・・・夜になる前にまた小屋に集合とか・・・どうだ?」
また皆に同意を求めるように視線を全員に向けている。
「そうやっていつの間にか脱出口前までの小屋を見つけて全員脱出出来るかもしれないだろ?」
「確かに・・・」
頭の良さそうな男性が頷くと、それに皆がつられるように頷く。
勿論僕もだ。
「じゃあ早速グループを作ろう」
そう言うと、思考錯誤するように僕ら十一人はバラバラに組んでみようとする。
しかしグループと言えど、殆ど他人なのでうまくはいかない。
僕は肩が疲れてきていたのでリュックをそっと置き、少女にはまだ出てはいけない事を囁いた。
「・・・まぁカップルは二人で一組だな」
状況を見兼ねた男がまた仕切っていく。
「で、その・・・眼鏡かけたあんたは・・・そこの男と組め」
すると咄嗟に僕に指を指す。
僕の横にいる高身長でいかにも頭の良さそうなこの男性が僕と組む・・・自分が足手まといにならなければいいが。
「よろしくね」
微笑しながら握手を求める男性は、とても優しそうで頼りになりそうだった。
いや、安堵してはいけない。
場所の事はまだ誰にも知られていないのだ。
いつか報告するにしても、少女をずっとリュックに閉じ込めておくわけにもいかない。
「よろしくお願いします」
僕は男性と握手を交わし精一杯の笑顔を見せた。
「で、そこのお前は・・・あいつとあいつだ」
ごつい体格をした男性は、まだ一言も喋っていないフード姿の人間・俯いたままの女性と組ませられたようだ。
「残った三人は俺と組め」
残りである気の弱そうな男性と、どこか気が狂ってるような顔をしている男性・・・いや、女なのか?
化粧でわからない。
あとは小さな背の少女・・・小さいのに参加させられているのか。
「これでいいよな?異論は無いな?」
睨みつける男を前に、全員が一斉に頷いた。
「これから小屋を探していく。そこでまずは一夜を過ごすんだ。」
男が作った四人組(話し合いの末わかりやすく①とした)が一番前だ。
そしてごつい男率いる三人組(②)がその後ろ。
僕らが③でカップルが④と一列に歩いていく。
たぶん後ろになる程使えないのだと判断されているようだが、僕らには頭の良さそうな人がいる。
僕の存在で③になったんだろうが、気にしない事が一番だ。
「なんか、普通の迷路というか・・・ただ地面を掘った溝ですね」
頭の良さそうな男性がそっと話しかけてくれる。
「そうですね、なんか鉱石の作業場みたいです」
「はは、確かに」
男性の頬笑みはまさに恵みのように、この場にいる状況を忘れさせてくれるようだった。
「おい、みんな!小屋に着いたら名前を教えろ!ニックネームでも構わん!」
皆は頷き合図を送る。
それにしても、僕らはこの溝のような広大な道を歩き続け迷路から脱出しなければならない。
本当に馬鹿げたイベントだな・・・僕は少し視線を落としていた。
そんな折にふと少女の事がまた気にかかり、大丈夫かと囁いてみる。
「大丈夫だよ」
そっと返してくれたので、僕はひとまずこの場の中で安心する事ができる事を確信した。
二時間ぐらい歩いただろうか、まだ景色は変わらない。
いや、ずっと土の溝を歩くだけで変わらないかもしれない・・・小屋なんて嘘かもしれない。
「ダメだね、今夜は野宿かな?」
いつも通りと言わんばかりに落ち込む様子をみせない・・・なんで横にいるこの男性は明るいのだろう。
「そうかもしれませんね、暑くないからいいですけど辛いです」
「そうだよね、僕も辛いよ」
と言いながら疲れを顔に見せていない。
この人はある意味で人としてのプロだ。
僕はこの短時間で何かしらの尊敬の眼差しを向けていた。
この人がチームにいたら脱出できるかもしれない、そう思う。
「おい!小さな小屋が見えたぞ!」
咄嗟に発せられた生気がみなぎるような男の大声は、初めての事で疲れきっている僕ら十一人を団結させていくように・・・まとめていくように感じられたのだ。
それぞれグループごとに作ろうと思ってますけど・・・どう章立てすればいいのかわからない~。
あ、十二人は少女を入れてますよ。