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巨大奇迷路~脱出の鍵は少女?~  作者: 心叶音
プロローグ
3/7

状況の把握

「岡島様、二時間後に集会が開かれますのでそれまでこの個室でごくつろぎ下さい」


「はい---」


そう言うと役員は真顔のまま去ってしまった。



とにかく二時間は暇だなと思ったので鞄から何か暇潰しになる物を探してみるが、急いで来たので何も娯楽用の物はなかった。


「はぁ、これからどうなるんだろうか。罰を与えるっていうのは命にかかわる事なのか?」


そんなどうしようもない独り言をぶつぶつ部屋に響かせる。


「それに支配人の雰囲気がどうも落ち着かない。金の匂いがする」


---金、その一文字が空間に響いた時改めて嫌な言葉だと感じた。




時計を確認すると既に30分は過ぎており、私は更にソファに深く座り込みただただ白い天井を見つめている。


「---あぁ、あと一時間半もある」


時刻はまだ10時半を指していた。


こんな朝からの説明で変に緊張するというのもあり、なんだか就職面接のような気が引けてくる気だるさがあった。


「会社休んで大丈夫だったのか?」


ふいに就職面接というワードで会社での存亡を気になり出していた。


素早く携帯(所謂ガラケー)を開く。


このご時世でスマホではなく携帯を持つのには仕事上シンプルで私情がバレにくく便利だからという理屈を同僚に話しているが、どう考えてもただの屁理屈である。


「---あれ、待てよ。一ヶ月だと?仕事はどうなる?」


一気にしでかしたと言わんばかりに後悔の念が押し寄せてくる。


どうしてこんなわけわからないイベントに好奇心で応募してしまったのか・・・我ながら呆れる。


「もうどうでもいい、寝よう」


そう自分に言い聞かせながら、ソファに横になり一時間昼寝をする事にした。







「岡島様、説明の時間がもうすぐで始まります」


「---ん」


ゆっくりと瞼を開けるとそこには終始真顔な役員が前に立っていた。


仕事柄叩いたり揺すったりして起こす事は出来ないようで、既に何回も声をかけていたようだ。


「あ、すいません」


即座に立ち上がる。


一時間よりも長く寝てしまっていたのだろうか。


「ではついて来て下さい」


「はい」


役員はすっと後ろを向いたかと思うと素早い動作で歩き出す。


さながら動作の情報をインプットされたロボットのようだった。


「今どこに向かっているんです?」


ロボットはロボットなりに質問にしっかり答えてくれるだろうと話しかける。


「大きな会場、要するにホールです」


「ホールに皆が?」


「そうです。ところで、今危険物やルール上違反な所持物などがある場合はホールで渡してくだされば私達が保管しますので」


「わかりました」


保管という言葉が妙に信用ならなかったが気にしないようにした、もう頭が考えるだけで痛くなるような気がする。


「ではこちらの扉を開けてホールの真ん中でお待ちください」


そう言われ扉を開けて促される。


そのまま言われるがままに入っていくと、そこは外観からは想像出来ない程高級な雰囲気が醸し出されているドーム型のホールだった。


見ると真ん中には既に十人は立っており、私を入れてあと一人らしい。


皆は二時間の休憩で既に待ちくたびれているようで、私の顔を見てやっとかというように舌打ちをする男もいた。


舌打ちする事はないだろうよ。


「お前さんで、十一人か・・・あと一人はまだか?」


賢そうな一人が状況確認するように皆に問いかける。


「早くしてくれよ、俺は待つのが好きじゃないんだ」


皆が誰も好きではないという視線を男に送る。


「随分長らくお待ちしました、これから迷路でのルールの再確認しかり説明をさせて頂く管理人の安沢です」


深くお辞儀をする安沢は、やはりあの狐目の男だった。


「おい、もう一人はいないままだぞ」


気の強そうな男が皆の気持ちを代弁する。


「はい、その件はもう一人の参加者が棄権されたという事で片付けております」


棄権された?棄権なんて出来たのか?


「棄権なんてしたらダメなイベントだった気がするんだが」


相変わらず代弁してくれるその男は、こういう時に気の強さが役に立つのだと改めて感じた。


「その件につきましても、参加者のお気持ちは私達が重々承知しております。しかし今回は何かしらの理由がありお一人棄権されたのです」


「理由って・・・」


「おいおい・・・」


皆が不安の声を口にしている、勿論僕も口にはしないが不安が心に広がっていた。


「もう一度言いますが、私達は参加者の気持ちを重々承知しております。ですが人数一人減ってもルールは変わりませんからご安心を。では説明を始めます」


「はぁ、まぁいいや」


場の雰囲気はもう一人の人間については忘れようという意図らしい、僕も忘れる事にした。


「まず、資料をお渡しするのでそこに載ってある地図をご覧ください」


すると役人達が手際よく一人一人に資料を手渡す。


資料は一枚の紙であり、表は一面迷路の地図だった。


一目で広いとわかる大きさだ。


某巨大遊園地よりも断然広い。


「資料の表を見てくださるとわかると思いますが、表はわかりやすい地図が載ってあります。これを見て大体把握して頂きます」


「把握って、持っていけないのか?」


「はい、違反になります」


地図を持っていけない迷路なんて鬼畜の何者でもない。


僕は更に不安が広がっていくのをじわじわと感じていた。


生きて帰る・・・それが課題になりつつあるのだ。


「次に裏を見てくださると、注意事項やルールが細かく書かれております」


「あの、資料を持っていけないなら注意事項やルールも覚えないといけないんですか?」


弱々しい雰囲気を見せる女が質問する。


「いえ、その心配は無用です。注意事項やルールは転々と存在する小屋に貼ってあります」


「小屋から出ている時はわからないと?」


「はい、それだけです」


どう考えても理不尽だった。


これは実験という名前の裏に暗い思惑があるのではないかと予感がしてならなかった。



「こんなの迷路というより拷問じゃないか」


「拷問とは人聞き悪いですね、これは偉大なる実験なのです。あのような巨大迷路を作れたのも国からの補助の上成り立っているのです」


「国?政府が関係しているのですか?」


賢そうな男が確認するように訪ねる。


その額には汗をかいており皆に緊張感が走る。


「確かに政府が関与しております。そう、これは一大イベント。ですが募集したのはこの市内のみ。あなた方は疑問に思いますか?」


「当たり前だろうが」


「そう思うでしょう、何故市内のみでのイベントに国からの補助があるのか。それはある人物が関係しているのです」


「人物?」


「それは今お答えする事は出来ません。ですがイベント終了後にお答えするとの政府側からの情報が入ってきております」


「俺達は政府の駒かよ・・・」


「その通りとは言い切れませんが、応募した時点でそれ相応の覚悟は必要ではあったと思います」


「そんな馬鹿な」


僕の場合変な好奇心という名の興味にのせられて応募しただけ・・・なんて馬鹿な男なんだ。



いや、馬鹿は承知でいたはずだ。


「怖いよ・・・」


彼氏らしき男に絡み付く女はうっすら涙目になっている。


「別にそこまで怖がる必要はありません。皆様が平和に迷路から脱出すればいいだけです」


「---そうだ、脱出すればいいんだよ!それだけだ!」


少しの希望があったと言わんばかりにはしゃぐ男。


相変わらず役人達は真顔で参加者達を見つめる。


「はしゃぐのは自由ですが、くれぐれも出口以外から脱出しないようにお願いします。違反となります」


「その違反なんですけど、罰って何なんですか?」


今まで喋らなかった大人しそうな男が話しかける。


「罰に関しては後で政府が決定するとの事です」


「はい・・・」


政府が下す罰とは一体何なのか・・・想像するだけで身震いする。


「また、ルールの説明は省略させて頂きます。始まる前に今一度資料をご覧ください。開催は一時間後です」


「・・・・・」


はぁ、未だにこのイベントの目的がわからない。


それに重要な人物って誰なんだ・・・今回棄権した人物と関係しているのか?


頭が痛くなる。


ただのサラリーマンがこんなイベントに応募するから天罰が起きたんだな。


これからどうなるか、それはきっと神様しかわからない事だ。


今は平和に脱出する事を目標にするべきだ。


「では皆様はまた個室へお戻り下さい。時間になれば役員が迎えに行きます」


そう言うと役人はそれぞれの担当する参加者を案内していく。


私も個室へと戻っていく。


参加者は皆個性があるみたいだし、僕が接したくない人間もいた。


人間関係が鍵となるのはわかるが、今は混沌としたモヤモヤしかなかった。




個室までの廊下は、これから起きる運命をあざ笑うかのように見つめている。


僕はそっとその目線を避けるように目を閉じていた。

もうフラグが立(ry

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