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当選
寒い冬の夜
雨はしんしんと降り注いでいる
僕は鞄から鳴り出した携帯を取り出し応じた。
「はい、岡島ですが」
かけてきた電話主は低く重々しい声だ。
「おめでとうございます。あなたは抽選で迷路への挑戦権を手にしました、後日ご自宅に資料をお届けしますのでご確認ください」
「はぁ」
その後すぐに電話は切れた。
唐突に告げられた僕の耳には、雨の音だけが響いている。
「抽選---あ、もしかして---」
咄嗟にポケットからくしゃくしゃになっていたチラシを取り出す。
巨大奇迷路(選ばれし挑戦者は君だ!!)
赤一色で作られたいかにもホラー丸出しのこのチラシ---。
これか、これなのか。
僕はしばらくチラシを眺めていた。
案外挑戦権を手にしてから見てみると、ショボいイベントだな。
あれ、何で雨宿りしてたんだっけ。
そうか傘が壊れたからか。
なんかどうでもいいや。
このまま朝まで待とう。
朝になればチラシの事なんて忘れる。