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どこへ?


 あたし達は空になり,静かに男の後を付ける・・・・


男は山を滑るように降りながら時々立ち止まってはその当たりの土に杖を刺し,目を瞑って詠唱しているように見える。何度目かの後,男は懐から石を出し,地面に埋め,詠唱を始めた・・

『今埋めたのは・・・』

『光る石・・黒龍の骨だよね。』

『妾が以前取っていった物であろうや。』


それから男はその位置からぐるりと山を巡るようにして,いくつかの石を埋めていった。

『この山に何人も入れぬようにしておるらしいのう。』

まあ・・・あたし達には効かないけどね。男が立ち去った後に掘り出せばいいか。


『何とも言えぬ,黒い力よのう・・・』

『ほんに。まさしく・・』

まさしく何?

当たりに黒いもやが立ちこめ始めた。不愉快だわあ・・一刻も早く払っちゃいたいな。


・・・・・・


男は今度こそ山を下りていく。

あたしは

「kuroitikarakietesimae kokoha seizyounati atasinomeinakuba nanibitomo haireneeze」


石に重ねて掛けてやった。


男は後ろを振り向いた。おや。分かったのかな?かなり険しい顔をしているね。

「だれだ?」

もちろんあたし達は答えないよ。

「omaeno sigotoha owatta kannpekidato omotte sassato keeruze」


男は首をかしげながらまた山を下っていく・・・

『面白い魔法を使うのう?』

『魔法と言うより願いといった方が良いのかもしれぬのう。』

『そう?』


男の行く先に見えるのは・・・

『馬?』

『馬じゃのう。』

『今時?』

『隣国は車を捨て,昔に返ろうとしておるのじゃ。』

『昔に返る?』

イシュが不思議そうに聞き返してる。そうだよね。便利なのに何でわざわざ?

『分からぬな。何らかの思惑はあるのじゃろうがな。』


 そう言えば,どっかの国にも,昔ながらの生活を固守している町があるって聞いたことがあるな。良いのか悪いのかその当たりは分からないけどさ。車だと空気が汚染されちゃうからねえ・・

『美優。この世界は魔力で動いておる。環境汚染は考えられぬぞ。』

あたしの考えに入り込まないでよ。プライバシーの侵害だぞ。でもそうだった。この世界では車による汚染はないよね。


あたし達は今,空を飛んで男の後を付けている。

『この人,転移はしないんだね。』

『空間魔法はあまり得意じゃないのだろう。青(空・飛翔)の気配は感じられぬな。』

『でも・・・黒(攻撃)という訳でもなさそうだよ。』

『うむ・・・』

は・・・あたしって白じゃなかったっけ・・・?

『そういやあたし、氷魔法ってまだまともに使ったことがないねえ・・・』

『美優の魔法ってなんて言うか・・・白じゃねえなって思ってきたぜ。』

イシュが言う。そうなんだよね。あたしもそう思うんだけど・・・

『うむ。イシュからは,広大な紅・・・炎の力を感じるが・・・美優からは,ドラヘの力じゃろうな。白い力も感じるが,白だけとは言いがたいものがあるのう。』


・・・


『イシュの力って?』

『妾の力と相まってかなりのものになっておるはずじゃ。この辺りで試すでないぞ。全て燃え尽きてしまうじゃろうからな。』

そんなに?すごい。

『あんまり炎だけの力が強くなってもなあ・・・』

『勉強すれば,別のものも使えるんでしょ?』

『ああ。俺には黒や無色の力もあるからな。』

『そちらもかなりの力になっておるはずじゃ。』

『フラメは一人で,何倍もお得なお買い物だったって事だね?』

『???』


・・・


のんびり後を追いながらそんな話をしていた・・・

『そういやおまえ,こんなにのんびり後を付いていかなくても,先回りも出来るんじゃねえ?』

『知らない先には行けないよ。』

ってあたしが言ったら,イシュが驚いていた。

『へえ?』

『知らない先に転移することは,危ないのじゃよ。』

ドラヘが口を添える。

『何でだ?』

イシュの疑問に答えたのはフラメだった。

『知らない先に転移して,そこが安全な空間とは限るまい。と言うことじゃな。』

自分で言った質問の答えを自分の口が言うってなんか慣れないよねえ・・・

『空になっていけば大概大丈夫だろ?』

そう言われればそうだけど。

『知っている場所以外の招かれぬところには,我らは入られぬ。知っておれば転移は可能じゃがな。この前,城に転移した時みたいにな。』



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