子連れか・・・
『誰が来たんだろうね?』
『さあな。』
『フラメは見当が付いてるの?』
『うむ。』
『隣国の王宮から来たのかな?』
『かもしれにぬ。』
下では,杖を持った男が一人。神殿跡・・・っていうか,壁を見上げてたたずんでいるね。それから男は壁を乗り越え,掘られている地面を見て,あちこち持っていた杖でつついている・・・。
あたし達の力を感じ取れてない当たり,たいした魔法使いではなさそうだってドラヘが言うけど,すっと壁を乗り越えたり,あちこち探る様子を見てると,結構力がありそうに見えるんだけど。
『あやつは城で見たことがあるぞ。』
フラメが言う。
『宰相?』
『いや・・・宰相と一緒にはいたがな。』
やはり隣国の者らしい。
『ここに黒龍の遺骸が埋まっていることを知って追ったに違いない。』
『だけど,神殿が壊されていたって事は・・・本当はとっくに遺骸が掘り起こされていたって,おかしくないんじゃないの?』
『いや。黒龍の力は死してもなお強大だ。その魔力を封ずるが為に神殿を建てたと見たが。』
ドラヘが言う。なるほど。
『その神殿を壊したって事は,黒龍の遺骸か,もしくはこの子を狙ってたって事だよね?』
『神殿は壊れたが,黒龍の遺骸はその辺の魔法使いの手に負えるものではない。じゃから,骨を取りに行くように妾が召還されたと見ておるのじゃが。』
『そうか。だが,神殿を壊すのにも相当な魔力が必要だろう?そう言う魔力持ちが隣国にいたって事だな。』
・・・
『もしかしたら・・・イシュのお母さんの魔力を利用したんじゃないのかしら?』
・・・
『母さんの?』
『そう。そう考えれば,行方不明,神殿の崩壊が結びつくじゃないの?』
『あの魔法使いの他にも関与していた者が?』
『この前の魔法使いもそうだけど。今,下にいる者と宰相。この二人もじゃないの?』
『そうじゃな。その通りじゃろうて。』
ドラヘが賛成する。
『妾が召還されたのは,神殿が崩壊してからじゃと思う。神殿に黒龍の遺骸の一部を取りに行けと言われてここに来た時にはすでに神殿はなかったからのう。』
『もしかしたら,フラメの召還にも,お母さんの魔力が使われた可能性も否定できないね。』・・・・・
下では魔法使いがあちこち探っている。
『捕まえる?』
『・・・いや。泳がせて様子を見る。』
そのときイシュの胸で黒龍の赤ちゃんが泣き出した。
『なんだ?』
『お腹が空いてるんじゃないの?』
『え???そりゃ困る。こいつは何を食べるんだ?』
『え?赤ちゃんだから・・・ミルク?』
『いや。美優、さっき渡した以外の一部をまだ持っているだろう?』
そうだ。殺気送る時忘れてて送らなかったんだった。
『うん。』
『それをこの子に与えておくれ。』
え?骨を?
『親の魔力がこの子の糧。城に送ったものも,やがては全てこの子の糧としてやってくれ。』
骨は魔力の塊って事?ふうん・・・
あたしはポケットに突っ込んでおいた石・・・・いや。黒龍の魔力の一部を赤ちゃんに持たせた。赤ちゃんは無心にそれに吸い付く・・やがて,吸いながら眠ってしまった。かわいい・・・
『美優。イシュ,あいつが山を下りるぞ。後を付けるか?』
『ああ。』
『そうだね。でもこの子はどうするの?』
『その辺に置いておく訳にも,城に送る訳にもいかぬ。我らで面倒を見ようぞ。』
子連れか・・・
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