記憶が混乱しているようだぞ。
あたしとイシュは,ライトと一緒に食堂へ行った。部屋には乱麻と紫電先生が残っている。
食堂は,まだ早い時間らしく,がら空きだった。
定食を3人前頼む・・・少ないと思うけど,怪しまれることはしない方が良いからね。
ぺろりと平らげて,デザートも頼む。
『どうする?もう一件行く?』
あたしはイシュに聞いた。
『ああ。ライトを部屋に送ってからだな。』
ってイシュは応える。
「ライト,部屋に戻る?」
あたしはライトに聞いてみた。そうしたら,
「いや。私は学校へ行きたい。」
って言い出すじゃないの。
「「え」」
あたし達は顔を見合わせた。
「塔の部屋に私の大事なものがあるはず・・・」
「大事なもの?」
何があるというの?
「そう。私の記憶・・・」
・・・・・?????
何を言いたいのか分からないけど,あの部屋に戻らなきゃいけなくなったみたい。やれやれ。一人でやる訳にはいかないし・・・何より,倒れている2人と1匹がいるからね。
紫電先生に通信で断ってから3人で学校に向かう・・・ライトの足取りは全く迷いがないね。
『記憶がよみがえってきているのかな?』
『そういうわけではなさそうじゃ。』
ドラヘがつぶやくけど・・・
学校まではほどよい距離がある。だんだん暗くなってくる・・・お腹もまだまだ空いている。教えて貰った方法でおにぎりを出して食べてたら,イシュも欲しがった。食べれるの?おにぎりを不思議そうに眺めてから,おそるおそる口に入れるていた。
『不思議な味だな。』
これはなんだ?って顔して聞いてくるから,
『お母さんの味だよ。』
ってこたえてやった。
『おまえの?』
『当たり前でしょ。』
『・・・・すまん・・・』
『おや?』
『・・・・』
イシュは自分が召還される立場になることによって,いろんな事を考えたようだったね。うん。相手の立場になってものを考えるって良いことだよね。どっかの国の危ないことしているみなさんにも教えてやりたいね。
『そういえば・・・ばあちゃんから持たされた鏡・・・』
『ライトには何にも反応してないよね。それが気になってるんだ。罠かなって・・』
『おまえもそう思うか?』
『うん。』
そう。髪の毛が入っているという鏡。あたしが持ってるのも,イシュが持ってるのも何の反応もないんだ。おかしいね?ほんとにライトがイシュの両親?
・・・・・・
「ここだ。」
学校の裏・・・扉の前でライトが言った。
『誰かに見つかるとまずいから,姿を隠していくよ。』
『分かった。』
あたし達はたちまち空になり,ライトの姿も隠した。
『ライト,行くよ。』
ライトからはあたし達は見えない上に,どこにいるかも分からないから,そっと服の袖を引っ張って方向を教えることにした。もちろん触ってる訳じゃないよ。
塔の方向にどんどん歩いてく・・・わあ・・・あたし達の方が彼というか彼女に引っ張られてるよね。
塔の階段をえっちらおっちら上りだしたから,そこだけ二人で腕を捕まえて上に運び上げたけど・・・おやおや・・・狐と男はまだ部屋の入り口に転がってる・・・まずいなあ・・・ライトは
「フォックス・・・」
ってつぶやいた。
「この男の名前?」
「そう。ずるがしこい奴。」
そのままライトは寝室の方に行く・・・
「この部屋に奴は隠したはず・・・」
『どんな形をしているの?色は?』
『こやつの記憶は混乱している。』
いきなりフラメが言い出した。
『どういうこと?ここには何もないって事?』
『分からぬ。こやつが何を探しているのか分からぬ故にな。』
『ドラヘは分かるの?』
『いや。自分で何を探すのかも分かっておらぬようじゃぞ。』
それは困った。




