赤い龍
老人が二人を連れて行ったところは何だか薄暗い感じのする部屋だった。老人が入るのと一緒に灯りが付き,真ん中に置かれたテーブルみたいなものがやけに大きいと思えた。何に使うんだろう?って思う間に,小さい方の子どもがテーブルの上に上がった。
大きな子どもは空きの椅子に座ってぼんやりしている。その表情に少し動きが出てきているのを,あたしは見逃さなかった。きっと黒いもやの影響から抜け出しつつあるに違いないよね。何らかの作用をする食べ物も食べてないし・・・もしかしたら覚醒するのかもしれないね。
その後,ノックの音とともに動物の入った檻が大小2つ運ばれてきた。
運んできた人達がいなくなってから,またノックの音がして,昨日の男が入って来た。入って来るなり,男は
「実験は中止だ。」
と言った。老人は驚いたように手を止め,
「なんでまた?」
と聞き返している。黒ずくめの男は,
「大師の具合が悪い。」
と言って脇の椅子にどっかり座り込んだ。
「大師の具合?」
老人は,テーブルの上の少年を下に下ろした。少年も少しずつ覚醒しているようで,おびえている・・・
「おまえ達は部屋に帰れ」
二人ともぎこちなく立ち上がり,部屋から出て行く・・・おそらく逃げ出すだろうな・・・まあいいや。
『乱麻。そろそろ薬の効き目が切れてきそうだから,頃合いを見て皆を学校の外ににがしてやって。それから宿屋に帰りな。できるよね?』
『・・・はい。やってみます。』
『何かあったらすぐあたしの名前を呼ぶんだよ。』
『はい。』
これで心配事が一つ減って,一つ増えた。
大師ってもしかしたらフラメを呼んだ奴かな?
『フラメ。あんたを呼んだ奴って,大師って呼ばれてる?』
・・・・
『フラメ?』
・・・・
ちょっと心配になってきた。意識を半分イシュのいる狭間に向ける事って出来るかな?
半分は会話を聞き続け,半分はイシュの元へ・・・
『なんだ。起きてたの?』
鮮やかな赤い龍が横たわっていた。龍は,あたしを見た。目は赤くないんだね。金色だよ。その龍が,頭を上げて
『おまえひでえ・・・』
って言った。イシュだね。ふふふ
『でも,龍の力は手に入ったでしょ?』
『う・・・元に戻れるのかよ?』
『・・・え・・・いつかは分離できると思うんだけど・・・』
『『それはどうかな・・・』』
・・・・・
『・・まあ・・とりあえず,お腹が減ってるでしょ。生肉じゃないけどさ,食べてね。』
『・・・おまえ根に持ってるな?』
『まあね。それじゃ,食べたら応援に来てね。黒幕の所に行けそうだからね。』
『待て!!』
『大丈夫。ここはあたしが作り出した部屋だから,開ければすぐあたしの脇にでれるから。』
『今は食べて,体力を回復するのじゃ。』
『この偉そうな口調どうにかならねえのか?』
『緊張感が足りないね。いいじゃないの。あんたと一緒だからさ。』
『そう。おそろいじゃ。』
『フラメ,出てくる時は人型にさせてね。』
まだなんか言ってるけど,時間が惜しい。
あたしはまた,意識ごとあの部屋に向いた。その間の会話もちゃんと頭に入っている。凄いな。この能力。受験の時に役立ちそうじゃない?いやいや・・・カンニングになっちゃうよね。自分で自分に突っ込みを入れながら,二人の会話を聞く・・・
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