これからどうなるの?
開いた扉から,子ども達は次々に出ていく・・・あたし達も何食わぬ顔で子ども達に続いていく・・・子ども達の顔には表情がない・・・これでは・・・あたし達の表情で,ばれてしまう・・・あたしはあたし達の顔に無表情の仮面を張り付けた・・・
不気味だ・・・全く表情が動かない子ども達・・・夕べの黒いもやもやしたもやの仕業だろう・・・
扉を抜けて廊下を歩いて行くと,食堂のような所に出た。ような所ってのは,食堂とは言いがたいような薄汚さがあったからなんだけど・・・学校にこんな薄汚いところがあっても良いの?
そこのテーブルになにやら乗っている。座って黙って食べ始める子ども達・・・あたし達も座って椀の中身を見る・・・うえ~~~お世辞にも美味しそうとは言えない上に,何や薬くさい・・・
『食べちゃ駄目だよ。薬の匂いがする・・・』
『でも・・・食べないと怪しまれるのでは?』
確かに言われる通りだ。どうしようか・・・
『作った奴の腹の中に入れちゃおう。』
『そんなことが出来るんですか?』
『もちろん。』
多分ね・・・
・・・・
あたしは,椀の中身を,作った奴らの所に飛ばした。
作った奴らも,ちょうど食事の時間のようで,テーブルの上に所狭しと並べられている美味しそうな食事を今にも食べようとしていた。ふふふ・・・これと,あたし達に出されたものと・・・ちゃっかり入れ替えて・・多分見た目は同じに見えるように念じたから,気付かず食べるだろうな。他の子どもの分もちゃんと交換したよ。変なものは,空気だけで沢山さ。
『これは豪勢ですね。』
『他の奴には見えないようにしてあるからね。早く食べちゃおう。』
あたしはもうお腹がぺこぺこな上に,そろそろ龍体になりたい時間になってきている。
『他の子ども達・・・黙って食べてますね。』
『文句を言わずに食えと命令されてるみたいだね。』
凄い豪華だなんて騒ぎ出さないから,かえってありがたいよね。
あたしは綺麗に自分の分を平らげ,もう一度本当の食堂へ意識を伸ばした。
あたし達に出された食事を食べた奴等,目が据わってるね。ふん。自業自得だよ。
・・・まだ食べるものがないかな。イシュが目覚めたら,きっと沢山食べるよね。
厨房に意識を飛ばすと,ちょうど別の料理が出来上がっていた。これもいただき・・まだ作っていないと錯覚させて,さらに料理をさせちゃう。ゴメンね。コックさん達にはきっと罪はないんだよね。でもだんだん出来ることが増えていくよね。
『出来ることが増えていくと言うより,使い方がだんだん分かってきたという方が良いじゃろうな。』
そう言えばそうかもしれないね。だんだん魔法って言うか,超能力って言うか・・・こんな事も出来そうって思えるようになってきたもんね。
『まだまだ前の世界に縛られておるから・・・』
『え?何?』
『いや。乱麻の方から何か言ってきているぞ。』
あたしは,出来てきた料理を急いで空間の狭間にしまい込み,それからようやく食べ物から意識を放した・・・
『美優様,美優様。あの老人が入って来ました。どうしますか?美優様?』
・・・・
『へえ・・・あの老人は,あたし達のご飯を食べてないんだ。』
ちらりと食堂を見ると,皆夫にゃんとしてテーブルに突っ伏している。おそらく誰かが命令するまでこのままなんだろうな。・・・・あたしは直ちに部屋に戻った。
老人は,体の大きい少年と,小さい少年を連れて部屋を出て行く・・・他の子ども達はぞろぞろともとの方向へ戻っていく。
『乱麻。一人で大丈夫だよね?何かあったら呼んで』
『美優様,どこへ?』
『あの2人をどうする気か見てくるのさ。』
『私も連れて行ってください。』
『足手まといだよ。』
ここはきっぱり言わなくちゃね。
『それに,イシュもいるから,見ていてね。』
『イシュ様はどこに?』
それには応えないであたしは空になり,老人達の後を追った。




