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またなんか拾ってきたのか?

宿屋は何て言うかな。純日本風旅館・・・みたいな・・・それを古くして,畳がなくて・・・ロフトみたいに,一段上がった床に布団が何組かおいてあるって感じの部屋だった。半分の低い部分に椅子やテーブルが置いてある。とりあえず,荷物を置いて,食堂に移動した。

「ここではあまり食べないでください。」

部屋を出る前に,紫電先生から釘を刺されちゃった。

「変に思われるといけないですから。その代わり、部屋でまたお召し上がりください。」

・・・・・

 ふう・・・・今日はあまり龍になってないから・・・まあ。大丈夫かな。でも,食べたら龍にならないとね・・・

『空になっていれば,ここでなっても大丈夫じゃぞ。』

分かっていても,壁を抜けちゃうのは・・・ネエ・・・おまけに,狭いからあちこちの部屋の見たくないことまで見えちゃいそうだよ。あたしには,覗き趣味はないからねえ・・


 あたしにとっては簡単な食事が終わった。皆はお腹いっぱいみたいだけど・・・あたしにとっては足りないね。イシュが,一皿こっそりくれたけどさ・・・ありがとう・・・でも足りないよ。


部屋に帰って紫電先生からつつみを貰った。中身は携帯用の食料らしいね。あたしは礼を言って受け取り,

「このままちょっと失礼するね。」

「あ・・・美優さん。」

もうあたしは空になってる・・・龍にはなってないけどね。

「なに?」

「捕らわれないでくださいよ。」

「ははは・・・大丈夫。」


 あたしはそのまま屋根の上に・・・ここの屋根は平らだから,なんとか寝そべることができるかな・・・

あんまり背に高い建物がないから,ゆっくり周りを見回せるよね。包みを思い出したけど,また人に戻るのもめんどくさい。のんびりそんなことを考える。きっと,端から見たら,何もない屋根に包みがあるように見えるんだろうな。そう言えば・・・龍になっても元に戻っても,服がびりびりになってることもないよね。いちいち服が破れちゃうって言う話の展開もあるんだろうけど,あたしの場合はありがたい。でも・・・なんでかな?


 うとうとしてたら,誰かがあたしの上に降り立ったのが分かった・・・包みに手をかけようとしてるね。あたしはそいつを拘束し,空のまま元の姿になって包みを取り上げた。誰だ?上から押さえつけてるから,そいつは,うつぶせでじたばたしてるね。

「は・・放せ!!!」

子ども?

「あんた誰?」

あたしは後ろからわざと低い声を出して話しかける。

「おまえこそ誰だ?何で俺を押さえつけてる?」

「あんたが包みを取ろうとしたからさ。」

「おまえの包みか?」

「そうだ。」


・・・

「上がるところもないこんな屋根の上に何しに登ってきたの?」

「おまえに言う筋合いはない。いいから早く放せ。」

「正直に話したら,放してやる上に,包みの中身も分けてやるんだけどね。」

・・・・・

・・・・・

「ちっ」



あたしはゆっくり包みを開けた。美味しそうな果物。匂いがその子にも分かったらしく,喉をゴクリと鳴らすのが分かった・・・

「あんたお腹空いてんの?」

「うるせえ。」

「何か盗みに来てるの?」

「うるせえ。」

「捜し物?」

「うるせえ。」


そのときイシュから通信が入った。

『そろそろ戻ってこい。』

えらそ~~~に。

『あ・・・今さ・・取り込み中・・・そうだ。イシュもここにきて』

『は?』


うまくイシュを捕らえて転移させる。うんうん。ずいぶん上手になってきてるよね。


「おまえ・・いつも何か捕らえてくるな。」

「たまたまだよ。たまたま。」

イシュは,何もないものにぎゅっと押さえつけられてる子どもを見てため息交じりに言ってくる。

「この子,何言っても,うるせえだけなんだ。」

「うるせえ。」

・・・

「ほらね。」

その子に聞こえないように防音処置をしてからあたしとイシュは相談を・・・しながらあたしは果物をぱくぱく・・・その子のお腹が盛大に「ぎゅるぎゅる・・・」って抗議してるね。

「おまえ,しゃべらせるのは得意だろう?」

「まあ・・・しゃべりなさいって命令すればね。」

「やれよ。」

「魔法が漏れちゃうかも・・・いいの?」

「今だって転移させただろうが。」

「あ・・・転移も魔法か?」

「何だと思ってたんだ?」

「いや~超能力」

「なんだそれ?」


って事で・・・紫電先生に相談を・・

「おい。俺を呼んどいて,何で紫電先生に相談持ちかけるんだ?」

「え?年長者だから?」

「何でそこで疑問形?」

・・・





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