目覚めたら・・
朝方・・あたしは寒さで目が覚めた・・・あら・・外で寝てたのか・・・う~~~んと伸びをして元の姿に戻り,姿を現してテントに入った。おや・・紫電先生がこっちを見てるね。何だろう?夕べのドラヘとの話を聞いてたのかな?聞こえないようにするのを忘れてたもんな・・・
あたしは,気付かないふりをして,狭い布団に潜り込んだ。冷たい。当たり前か・・・寝袋みたいなその布団は,柏餅みたいに,寝る人を包むんだ。・・テントの壁の方は寒いから,イシュの方を開けてあるんだけど・・・ちょいとイシュに近づく・・・イシュはちょうどあたしの側を開けている。ちょうどいいや・・・・・・もぞもぞと足を押しつける。おお。温かい・・湯たんぽみたい・・いいねえ・・・ぐう・・・
「起きろ!」
耳元で怒鳴らないでよ。鼓膜が破れる!!
ほえ?顔を上げたら,イシュの顔が近い。
「わっ」
あたしはびっくりして叫んじゃったよ。
「何でこんなに近いのさ!!」
「おまえが俺を抱き込んでるんだ。この馬鹿力!!放せ!!」
あらまあ・・・朝方の寒さで,暖を取ろうとして近づいたのは覚えてるけど・・・あたしはしっかりイシュを抱き込んで寝ていたんだ。うっわ~~~乙女としては恥ずかしいわ!!
「寒かったんだよ。」
あたしの一言で,イシュは,ますます怒り始めたんだけど・・・何で?
あたしが起き出すと,紫電先生が,布団やそのほかの物を収納し始めた。外からいい匂いもする。
伸びをしながら外へ出たら,ちょうど,ライトと乱麻の二人が仲良く朝ご飯を作ってた。イシュの方をそっと見ると・・・複雑な顔をしてるよ。まあ・・・そうだろうねえ。
「一緒に手伝ってこようよ。」
そう誘ったら・・・
「手は足りてるみてえだ・・」
そう言って,どっかりたき火の脇に座り込んじゃった。素直じゃないな。
朝ご飯の後片付けは皆でやった。火の始末を紫電先生が。鍋をあらうのは乱麻が。食器はライトが・・・あれ・・・あたし?あたしは白龍になって寝転んでるよ。イシュ?たき火の始末の手伝いを,うろうろして手伝ってた。あれって邪魔してたっていった方が良いのかな?炎を操る力はまだまだ未熟?
・・・
『そうじゃな。今は・・・まだな・・・』
『これから行くところでは,どうなんだろうね?』
『わしはちょっと期待しとるのじゃ。』
『何を?』
『フラメじゃよ。フラメ。』
・・・・・
それっきり黙っちゃった。
闘って?力を付けるって事?
それとも・・・?
「おい。仕度が出来たから,行くぞ。」
テントも綺麗にたたまれて,紫電先生が回収済みだ。皆で周りの復元作業をしてたみたい。
「さっさと出てこい。」
「はいはい・・・」
あたしは,いつものように姿を現した。
「今日は,夕方には町に着きます。車移動が簡単ですが,この国には,一般車としての車は,あまりないという報告でしたからね・・・」
「で・・徒歩ね。分かってるって。ちゃんと説明は聞いてたよ。」
そう。この文明の世に徒歩だよ徒歩。あっちの国には,ちゃんと車が走っているのにさ。
「そういえば,人っ子一人見えないね。」
「村を避けて歩いてます。いくら見えないようにしてあると言っても,獣は,おそらく何らかの気配を感じてしまうでしょうからね。」
道というか・・・野原だよね。草をかき分けて進んでるんだけど・・・ちょっと・・あたし私のすぐ前を行く紫電先生がきつそう。
『良い魔法はないの?』
『願えば良い。』
『何に?』
『草に・・』
・・・は?草に?
・・・通りやすく・・・通った後は元通りに・・・
程なく紫電先生が後ろを向いて,乱麻の後ろを確認してる・・・大丈夫だよ。元通りだって。
「美優様ですか?ありがとうございます。」
「いや・・・なんのなんの・・・で・・あたし,またちょいと抜けるけどいい?」
「抜けると申しますと?」
「上空からチェックしてくるわ。」




